香港の世界競争力が5位に後退

スイスの有力ビジネススクール、国際経営開発研究所(International Institute for Management Development、IMD)が2020年版の「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook、WCY)」を発表しました。中国の統制強化に揺れる香港は昨年の2位から5位に後退したことが分りました。

同年鑑は世界主要国63ヶ国・地域を対象に、各国政府や世界銀行の統計データと、経営者へのアンケート調査で「経済状況」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」、「インフラ」の4項目とこれに基づく小分類をそれぞれ評価し、まとめたもので、1989年から毎年実施され、今年で32回目となっています。

IMDは香港の格下げの理由として、経済パフォーマンスの低下、逃亡犯条例の改正反対デモによる社会の混乱、中国経済の低迷の影響を挙げました。香港は反体制活動を禁じる国家安全法の制定方針など「一国二制度」の形骸化に直面します。トランプ米政権は香港に提供してきた関税や渡航面の優遇措置を見直す構えで、世界から多くの富裕層や投資家をひきつけてきたアジアの金融センターとしての地位が危うくなっています。

2020版WCYにおける4つの競争力要素のうち、「経済状況」における香港の順位は10位から28位に低下し、「国内経済」の下位要素は18位から49位に低下しましたが、「国際貿易」や「国際投資」といった他の経済的な下位要素は影響を受けませんでした。「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」はそれぞれ1位、2位と変わらず、「インフラ」は14位に上昇しており、香港のコアな競争力は損なわれていません。

1位は2年連続でシンガポールで、以下、デンマーク、スイス、オランダとなっています。米国は2018年に1位、19年に3位でしたが、今年は10位にまで後退しました。中国も20位へと6つ順位を落としました。米国と中国の順位が前年に比べ下がったのには米中貿易摩擦による国際貿易の悪化が影響しているものとみられます。日本は34位と過去最低を更新しました。

国ごとの競争力を測るランキングでは、他に世界経済フォーラムが発表している「世界競争力レポート(Global Competitiveness Report)」があります。これら2つが世界的に非常に有名です。

IMD「世界競争力年鑑」(2020年)総合順位

順位国名
1シンガポール (0)
2デンマーク (↑6)
3スイス (↑1)
4オランダ (↑2)
5香港 (↓3)
6スウェーデン (↑3)
7ノルウェー (↑4)
8カナダ (↑5)
9UAE (↓4)
10米国 (↓7)
11台湾 (↑5)
20中国 (↓6)
34日本 (↓4)

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