コロナで世帯収入減、スーパーは好調など

香港では、新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かっているものの、それでも長期に渡る感染対策の影響で経済的ダメージが今も続いている。現在の経済状況をまとめた。

71%が世帯収入減

米信用調査会社トランスユニオンは7~8月に香港市民1,006人を対象に家計調査を実施したところ、新型コロナ感染拡大の影響で世帯収入が減少している人が71%に上ることが判明した。6月末の前回調査から3ポイント拡大。18~25歳のいわゆる「Z世代」では前回調査から9ポイント高い70%に上り、最も影響が深刻だった。失業率も24%に達している。全体の79%がクレジットカードや借金などの支払いが心配だとし、45%が4週間以内に支払期限があるものについては支払いができないだろうと答えている。

外食苦戦もスーパーが好調

新型コロナ対策で大きな影響を受けた業界の一つが外食産業だ。現在は24時まで飲食店内での食事が認められているが、それまでは18時や22時までと厳しい制限が加えられ、閉鎖や経営危機に瀕する店が続出した。一方で、香港日清の2020年6月期の中間決算では自宅での滞在時間が増えたことで売り上げが前年同期比で15.9%増の17億3,539億香港ドルを計上。香港で日本産品を中心としたスーパー「一田(YATA)」は日本のコンビニの要素を混ぜたコンセプトの新業態「KONBINI便利ストアby YATA」をコロナ禍の最中にオープン。その一田の2020年の上半期の売り上げは2前年同期比で16%増、スーパーだけで見ると39%増だったことが明らかになるなど、「外食天国」の香港が家での食事にシフトしていることが鮮明になった。

小売業低迷で閉店が続く

化粧品小売大手の卓悦(ボンジュール)の2020年6月期の中間決算で売上高は前年同期比59.7%減の3億3,300万香港ドルと厳しい結果となった。香港政府統計処は9月30日、8月の小売りの売上高を発表し、前年同月比13.1%減の256億香港ドルと政府統計からも厳しい状況が鮮明になっている。香港金融管理局によると、2020年第1四半期の香港発行分のクレジットカードの決済総額は前年同期比11.8%減の1,704億香港ドルと低調だった。

米スポーツ用品大手「ナイキ」は、中環の旗艦店を賃貸契約を打ち切った。「VICTORIA'S SECRET」「TOPSHOP」は旗艦店を閉店し、香港撤退。「GAP」は銅鑼湾、九龍塘、尖沙咀2店舗を閉店し、残り3店舗のみで営業する。「ZARA」は世界中の実店舗1,200店を閉鎖する計画の中、香港は全店舗を閉め、ネット販売に移行。「ESPRIT」「FOLLI FOLLIE」も全店閉店した。

中環では多くの大型店舗が撤退しているため、賃貸料が月100万香港ドル以上の物件は次々と消滅している。大手不動産会社中原地産の関連会社、中原(工商舗)よると、中環、湾仔、銅鑼湾、尖沙咀、旺角の5大商業地区の2020年7月の空室率は20.39%で、新型コロナが本格的に拡大する前の同年1月と比べると8.05%上昇したことが明らかにった。

コロナ対策で財政赤字拡大

香港政府の財政も、現金給付、給与50%の助成金など大規模な財政出動を行ったため悪化している。香港政府が9月30日に発表した財政状況によると、2020年4月1日時点の財政備蓄は1兆1,603億780万香港ドルだったが、8月31日の時点で9,277億香港ドルで、2,326億香港ドルの赤字を記録した。今年度予算は3,000億香港ドルの赤字となる可能性があると予想している。

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