2022年度の雇用支援計画の概要
香港政府による2022年度の雇用支援計画(ESS)の申請受付期間が終了しましたが、今回の記事では今後の助成金申請の参考のため、「ESS2022」の適用対象、計算方法、支給期間、注意点などについてご紹介します。
適用対象
「ESS2022」の補助金を申請する法人は以下の条件を満たさなければなりません:
1.会社・法人・機構・個人雇用主として申請すること
2.除外リスト」に含まれていないこと
(除外対象は香港政府や法定機構、在香港の各領事館が含まれています。詳細はこちらのURLの第一部をご参照ください:https://www.ess.gov.hk/doc/Exclusion_List_eng_2022_04_18.pdf)
3.2021年12月31日までにMPFかORSOの退職積立金スキームに参加していること
4.法人が解散、清算、登記抹消、休眠になっていないこと
5.2022年5月10日までに「ESS2020」の返還金額・罰金を納付完了すること(対象の場合)
支給金額の計算方法
雇用主は2022年5~7月の毎月、「雇用予定の従業員数(フルタイム、パートタイム、65歳以上の方を含む)」を申告します。従業員数は「ESS2020で申請した従業員数」または「2021年第4半期(10~12月)のうち最も助成金額が多くなる月の従業員数」のどちらかを自分で選択できます。
MPFに加入している場合、政府の代理人が申請者のMPF記録で自動的に助成金額が最も多くなる月を参照として選択しますが、ORSOに参加している場合、申請者が参照月を自分で記入しなければなりません。
MPFもORSOも、2022年2月28日までに作成し、2021年第4半期の積立金を納付したアカウントのみが対象となります。
補助対象の従業員とその支給金額は以下の3種類になります:
1.参照月での月給が8,000HKD以上の従業員:一人当たり毎月8,000HKD
2.参照月での月給が3,000HKD以上8,000HKD未満の従業員:一人当たり毎月4,000HKD
3.参照月での月給が3,000HKD未満で65歳以上の従業員:一人当たり毎月4,000HKD
以上3種類の従業員の合計人数が補助対象の人数上限になります。また、申請者の業務が「制限リスト(※)」に含まれている場合、補助対象の人数上限が最大100人に制限され、その他の業務の場合、補助対象の人数上限が最大1,000人になります。
※制限リストにはスーパーマーケット、コンビニ、薬局、薬販売会社、消費者向けEコマース、不動産管理、清掃、警備、保険、銀行、証券、MPF、資産管理、信託、ローカル宅配、公共事業、テーマパーク、私立病院と医療機関、建設、不動産デベロッパー、不動産業者、人材アウトソーシングなどが含まれています。詳細はこちらのURLにご参照ください:https://www.ess.gov.hk/doc/2022ESS_RestrictedList.pdf
申請受付期間
2022年4月29日~5月12日23時59分
助成金支給期間
助成金は4回分けで支給されます:
1回目:申請後の2~3週間後
2回目:6月
3回目:7月、支給分の70%
4回目:7月、支給分の30%(ただし、返還金額や罰金が発生する場合はこの30%から引かれます)
申請時の誓約事項と罰則
1.補助金の受給期間中に、該当対象グループの人員整理を行わないこと
例)申請時月給8,000HKDの従業員を5名、月給3,000~8,000HKDの従業員を2名、65歳以上の従業員を1名申告した場合、会社都合・自己都合に関わらず、各グループの申告人数より減らしてはいけません。例えば月給8,000HKDの従業員が1名辞めた場合、月給8,000HKDの従業員を新規採用して数を維持しなければなりません。
2.受給した補助金を全て賃金支払いに充当すること
注意すべき点として、賃金の支払い額が補助金支給額を下回ってはいけません。
上記の誓約を破った場合は罰金が発生します。
人員を減らした場合、その減少した分にペナルティ率10%を掛けて計算されます。
例)月給8,000HKDの従業員が6人辞めた場合、助成金総額の144,000HKD政府への返還金額の上、罰金14,400HKDが発生します。
政府より委託を受けたESS制度代理人が全申請企業の代理人としてMPF記録を受領し、ESSの実行モニタリングを行います。
MPFやORSOの信託会社はESS制度代理人へMPF記録を提供しESS実行のための関連情報の確認を行います。
申請方法
https://application.ess.gov.hk/en/apply
2020ESSの申請受付番号(2020ESSを申請したことがある場合)、Business Registration Certificate、住所証明、法人口座情報と最新のステートメントのコピー、MPF・ORSO信託会社や計画名称と登録番号、及びそれらの情報が載っている書類を準備し、上記の申請ウェブサイトにて各種情報の入力に進んでください。
MAYプランニングでは、政府の助成金申請のサポート、香港法人を運営していく上で必要な労務管理に関わるコンサルティングなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
最新!香港フードサービス市場の5つのトレンド
コロナ禍が始まって2年以上経ち、香港のフードサービス市場には大きな変化がありました。全体的な景気はまだまだ回復中ですが、香港消費者の食習慣に合わせることができる場合、これは敢えて香港の飲食業に参入する機会になるかもしれません。
この記事では、香港投資推進署(InvestHK)が発表した香港フードサービス市場の最新トレンドについてご紹介します。
トレンド1:グリーンイーティング
以前の記事でもご紹介したように、植物由来の原料で作られた人工肉は今世界的に人気になっています。その中でもアジアでは特に人気で、代替肉の肉まんや餃子などアジア人の味覚に合わせて作られたものも続々と登場しています。
香港では、東洋と西洋の様々なレストランが軒を連ね、活気に溢れています。人気チェーン店や高級レストランではアジア人の嗜好に合うようにメニューがアレンジされ、グリーンメニューや総菜を提供するファストフード店も増加しています。
イギリスの市場調査会社Euromonitorの予測によると、2025年、全世界の代替肉市場と代用乳市場の規模がそれぞれ約275億米ドルと225億米ドルに成長し、特にアジア太平洋(APAC)の代替肉市場は全世界の74.5%を占めており、代用乳市場も全世界の48%を占めています。中でも、香港と台湾を含む大中華圏の規模がAPACの大半を占めています。
InvestHKの調査によると、香港では約40%の市民が準菜食主義者で、「植物性代替食品を積極的に摂取すべき」に「同意」と「強く同意」と思う回答者が52%もいます。香港の植物性代替肉販売サイト「Green Common」での食料品売上高の伸び率が77%で、フードデリバリーサービスDeliverooでコロナ禍の植物性代替食品の注文増加率が160%になり、香港でのグリーンイーティングに関する市場規模の大きさがわかります。
トレンド2:Grab And Go(手に取ってすぐ食べられる)
ご存知の通り、香港の生活ペースは早いです。それ故、「Grab And Go」というスタイルがせっかちな香港人に非常に適しています。
日本食といえば、「華御結」というおにぎりのチェーン店は2011年に香港の一号店をオープンし、現時点で102店舗にまで拡大しています。董事長の西田宗生氏が「国際都市香港の人々の間では日本食が大人気です。気軽に食べられ、そして何よりも品質を重んじます。」と華御結の成功について語りました。
特にコロナ禍で店内飲食が規制されている今、テイクアウト専門の軽食店や飲料店が以前より数多く見られます。このトレンドに乗るために、従来の飲食店は一部のメニューを「持ち帰り」用にアレンジし、料理の質を落とさず、より簡単なメニューに変更しています。
トレンド3:賃料が手頃になり、小型店やポップアップショップが急増
2019年を始め、昔から小売店が立ち並ぶ地域(尖沙咀(Tsim Sha Tsui)、旺角(Mongkok)、銅鑼湾(Causeway Bay)等)の賃料が急激に下落しました。その後は市場回復を見越し下落傾向が鈍化していますが、2019年同期と比べて、2021年ショッピングセンターでの賃料が37.1%下落し、路面店の賃料は50.2%も下落しました。
テイクアウト注文が増加している今、約18-27平方メートルの小規模店舗でも、地元の人々にサービス提供が可能になっています。そのため、フランチャイズモデルでの展開がしやすく、起業家やシェフが新しいコンセプトを試すのに最適です。
トレンド4:大湾区(GBA)における食品貿易・製造の商機
食品・飲料メーカーは、サプライチェーンの課題解決に向けアジアに生産ラインを設置し、より市場の近くで製品提供を行うことを検討しています。各メーカーは、香港の先端製造能力により香港をパイロットセンターとして活用し、GBAでの商業展開へと繋げることができます。
昨年、日清食品有限公司(香港日清)は、香港で即席麺を製造するための新しいスマート生産ラインを導入するため、再工業化助成スキームに申請し、1500万香港ドルの補助金を獲得しました。
世界の食品・飲料貿易企業は、消費者の自由裁量所得の増加や健康志向の高まりを受け、巨大な中国市場から利益を得ることができる一方、香港を国内・国際の双循環戦略に則ったビジネスにおいて重要な促進役として活用できます。
フードサービス企業は香港を活用することで、金融、物流、運営の戦略的な現地パートナーを獲得し、レシピ・コンセプトのテストを実施、流行を香港から発信した上で、次のステップとして8,600万人のGBA市場へ参入できます。
香港では、食事宅配、オンライン食料品店、クラウドキッチン、バリューチェーン全体のイノベーションなど、飲食関連ビジネスのデジタルエコシステムが成熟しています。製品、サービス、習慣を最初に香港の消費者で試すことで、次にターゲットとするGBAや中国本土市場に参入し、デジタルに精通した消費者にアクセスする道を切り拓くことができます。
トレンド5:フードデリバリーと食料品のオンラインショッピング
コロナ禍で店内飲食規制の影響を受け、フードデリバリーとのコラボレーションに注力する飲食企業が増加しています。フードデリバリーはレストランにとって重要な収入源になり、香港のフードサービス市場におけるフードデリバリーの売上シェアは2016年の4.4%から2020年に急増し、2021年には22.3%に達しました。
フードサービス業界でのデジタル化は食事の注文と配送以外にも、オンラインのワンストップ・ショップを生かした消費者エコシステムも拡大しています。香港ではスーパーやウェットマーケットがすぐ住宅の近くにあり、香港の消費者は従来では直接買いに行くのが当然のことですが、コロナ禍で外出を控えるため、香港の消費者の多くは食料品をオンラインで購入するようになっています。
現在の香港でのフードデリバリー業界の実態と運用についての詳しい情報は、次の記事でご紹介したいと思います。
香港財政予算案2022――中小企業への支援措置
香港の財政長官、陳茂波(Paul Chan Mo-po)は2月23日、2022年度の予算案を発表しました。コロナ禍が世界各地に広まってから3年目を迎え、香港はこの一ヶ月で第5波襲来により、多くの市民の生活・仕事・企業の経営も大きく打撃を受けています。
この記事では、今回の予算案における中小企業への支援に関する発表を中心にご紹介します。
政府は中小企業に対して、いくつかの支援措置を発表しました:
企業に対する税金の減免
(1)10,000香港ドルを上限として、2021〜2022年度の「法人税(Profits Tax)」を100%減免。151,000社の企業が享受できると推定。
(2)第1・2期各5,000香港ドル、第3・4期各2,000香港ドルを上限として、2022~2023年度合計4期の「非住宅物業差餉(Non-domestic Rateable Tenement)」を減免。43万戸の非住宅不動産が享受できると推定。
(3)2022〜2023年度の「商業登記費(Business Registration Fee)」を減免。150万の企業経営者が享受できると推定。
(4)毎月20,000香港ドルの水道料金と12,500香港ドルの下水道料金を上限として、非住宅物件使用者の75%の水道料金と下水道料金を今年11月まで引き続き減免。25万名の非住宅物件使用者が享受できると推定。
(5)今年10月より、34種類の政府費用を12ヶ月分減免。航空業界、海事業界、物流業界、小売業界、飲食業界、建築業界、観光業界など多くの業界が享受できる。
(6)現在減免が適用されている政府用地のテナント、及び地政總署(Lands Department)の短期賃貸契約と免除許可は、今年の9月末まで75%の賃料と費用を免除する。同時期内、政府の強制営業停止命令対象者は営業停止期間の賃料を全額免除する。
香港でのコロナウィルス感染者数は厳しい状況が続いておりますが、同時に、中小企業の支援も香港政府は積極的に行っております。これらの情報をキャッチし対処する事で、貴社の香港法人運営の一助となります。弊社でお手続きのサポートも可能ですのでお気軽にお問い合わせください。
香港雇用条例のグレーゾーン?Uber Eats香港撤退の賠償不足疑惑からみる曖昧な雇用形態
フードデリバリーサービス「Uber Eats」が昨年末を以って香港でのサービスを停止しました。しかし、それで幕が下りたわけではなく、今年1月24日、工聯会服務業総工会(Service Industry General Union, HKFTU)の自由工作者分会(HKFSU)労働組合が40名以上のUber Eats元牛業員と、Uber Eatsの撤退につき解雇への賠償不足で、労資審裁処(Labour Tribunal)へ訴えを提起しました。
訴えを提起した元従業員の中で、仕事中にケガしたのに半年以上経っても傷病手当金が受け取れていない人もいれば、有給休暇や法定休日をもらっていない人もいますが、すべての賠償不足の原因はただ一つ――「個人事業主」であるかどうかです。
今回の記事では、Uber Eatsの件を踏まえて、香港の《雇用条例》における「従業員」と「個人事業主」についてご紹介します。
香港の《雇用条例》では雇用形態は2種類のみ
《雇用条例》というのは、すべての従業員(個人事業主、公務員や政府が雇用主である従業員、《商船条例》や《徒弟条例》に適用される者などを除く)に適用される法律です。
多くの人は雇用形態を「フルタイム」や「パートタイム」などで分けていますが、雇用主それぞれが「フルタイム」や「パートタイム」への解釈が違ため、《雇用条例》における分け方は以下の2種類のみです:
1.「継続的契約」
従業員が同一の雇用主に4週間(*)以上連続して雇用され、かつ1週間の労働時間が最低18時間以上である場合、その雇用契約は「継続的契約」となります。
*「継続的契約」における「週間」は「土曜日を最終日とする週間」を指しています。つまり「継続的契約」の条件を満たすのに、雇用期間は土曜日を最低4回含めなければなりません。
2.「継続的契約」でない雇用契約
上記の条件に満たしていない雇用契約となります。雇用契約が「継続的契約」か否かは雇用主に挙証責任があり、雇用主は雇用契約が「継続的契約」ではないことを証明する必要があります。
《雇用条例》が適用されるすべての従業員は労働時間の長さに関わらず、賃金の支払いや賃金控除制限、法定休日の付与など条例で規定されている基本的な保障を享受します。
「継続的契約」に基づき雇用される従業員は、休息日、年次有給休暇、傷病手当、解雇補償金や長期服務金など、より多くの法定権利を享受できます。
「従業員」と「個人事業主」の境目がグレーゾーン
気になる「個人事業主」というのは、「雇用される」より「パートナーシップ」という関係で、《雇用条例》での保障は適用されませんが、現在では「雇用関係」と「パートナーシップ」を区別できる特定の要素がありません。
一般的には主に下記の3つの観点から判断します:
1. 支配権
雇用関係の場合、仕事内容や指示、勤務時間などは雇用主によって制定される傾向があります。
2. 生産要素の保有と提供
雇用関係の場合、仕事道具は主に雇用主が提供し、パートナーシップの場合、仕事道具が自前であることが多いです。例えば、ヘアサロンの美容師が個人事業主である場合、自前のハサミで仕事することが多く見られます。
3. 経済面
雇用関係の場合、従業員が経済的損失リスクを負担しなくていいですが、パートナーシップの場合は個人事業主も一部負担する場合があります。
また、税務と強制退職積立金(MPF)に関しては、雇用関係の場合は雇用主が申告しますが、パートナーシップの場合は個人事業主が自分で申告する必要があります。
しかし、それでもはっきり区別できない場合が多く、最終的に判断を下せるのは裁判所のみです。
Uber Eatsの件の場合、HKFSUの王師樂主席によると、今回のバイク配達員は職歴2~5年で、固定した勤務時間と勤務地が制定され、一週間に6~7日毎日9~12時間勤務していました。休む場合は事前Uber Eatsへの申請が必要で、病気休暇でも最低1時間前に申請しなければなりませんでした。「その上、注文の完成率などで配達員に制限がかかるため、Uber Eatsは配達員の仕事の大部分の支配権を持っていると思われ、パートナーシップではなく雇用関係であると考えられる」と王主席がコメントしました。
企業側としての対応方法
雇用関係でのグレーゾーンの争議を避けるために、従業員側は契約にサインする前にきちんと確認しておくべきですが、企業側としてどう対応すればいいでしょうか。
1. 雇用契約かパートナーシップ契約かをはっきり書いておく
相手への口頭説明はもちろん、細かくなりますが、企業側の保証のために相手が「従業員」か「個人事業主」かを契約内容にはっきり書いておくべきです。
しかし、注意すべきなのは、契約内容が全てではなく、もしUber Eatsの件と同じく、実際仕事のスケージュールや内容が企業側に仕切られたり雇用関係になる傾向が見られる場合、例え契約内容に「パートナーシップ」と書いてあっても争議を招いてしまう可能性があります。
2. とりあえず従業員として扱う
一番無難なのは相手を従業員として扱うことですが、労災保険、仕事道具やMPFなどの支出が発生するため、コストのバランスを考慮しておくべきです。
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突然!Uber Eatsが香港から撤退・香港のフードデリバリー業界実態
有名な自動車配車サービス会社Uber Technologies, Inc.のフードデリバリーサービス「Uber Eats」が、香港での5年間のビジネスを終え、去年の12月31日を以ってサービスを終止することを発表しました。Uber Eatsの代表は、Uber Eatsの香港での業務成長は予測に達していないので、Uberは今後香港では配車サービスに専念するとコメントしました。
コロナ禍で人々が外食を控えているため盛況になっていると思われるフードデリバリー業界の、香港での実態についてご紹介します。
香港での注文配達プラットフォームトップ3
香港のMeasurable AIとアメリカのApp Annieのデータによると、香港でのフードデリバリーサービスでのトップ3はfoodpanda、deliverooとUber Eatsです。去年4月のアクティブユーザー数はそれぞれ127.33万人、62.53万人と28.94万人、市場占有率はfoodpanda37%、deliveroo17%とUber Eats12%となっています。
Uber社は2014年8月、アメリカのカリフォルニア州サンタモニカで、「UberFRESH」という名称でフードデリバリーのサービスを開始し、2015年にサービス名を「UberEATS」に改名しました。
同社が香港での自動車配車サービスを開始したのは2014年6月ですが、Uber Eatsの香港業務を開始したのは2年後の2016年で、競争相手のfoodpanda(2014年)とdeliveroo(2015年)のサービス開始時期に対して遅めなのが、市場占有率競争に不利の主因だと思われます。
去年の9月まではプロモーションに膨大な資金を投入
Uber Eatsの今回の撤退は突然の決定として世間をとても驚かせています。それは、Uber Eatsは去年の7月に千万香港ドルを超える予算を投じて当地の中小飲食店を支援すると発表し、9月にはマクドナルドとのコラボレーション「Happy Delivery」を発表、数ヶ月間に多くの香港歌手との広告やプロモーションに力を入れていたからです。
去年7月、Uber Eatsは「Tonight I’ ll Be Eating」という千万香港ドルを超えるプロモーション企画を発表しました。この企画は「撐地區好味道(各地区の美味しさをサポートする)」のスローガンをもとに、プラットフォームでの3000軒超えの中小飲食店を重点的に宣伝していました。テレビ、交通機関やインターネットなどでの広告のみでなく、クーポンや飲食店とのコラボレーションも去年の後半に続ける予定でした。Uber Eatsは人気歌手の鄭欣宜(ジョイス・チェン)と許廷鏗(アルフレッド・ホイ)が推薦する宣伝素材を各中小飲食店に無料で提供し、1000軒以上はブランド名、おすすめの食品などの内容をカスタマイズできるとのことでした。
Uber Eats香港地区の総経理Elisa Janiecが今回のプロモーション企画で新規飲食店の登録を40%~60%、新規ユーザーが30万名以上の成長を期待していると当時コメントしました。また、年内にはプラットフォームで飲食店向けの新しい機能を発表する予定で、飲食品以外(ファッション、電子製品、コスメなど)の配達サービスについても数年内に発表する予定とのことでした。
コロナ状況の収まりがフードデリバリー業界に影響
世界中では依然コロナの感染数が多くなっている中、香港は去年の10月以来本土での感染数がゼロで続いています。飲食店は一時は1テーブルの着席人数を2人までで営業を6時までにという厳しい制限がかかっており、店内飲食に大きな影響を与えていましたが、コロナが落ち着いてる今では、香港市民は店内飲食する傾向に戻り、フードデリバリー業界の競争が激しくなっていることも、Uber Eatsが香港から撤退する理由の一つだと考えられます。
※1月20日現在では、オミクロン株の影響により再び香港の規制は強化されています。
香港餐飲業協会(HKFORT)のSimon Wong Ka-wo会長のコメントによると、飲食業界のテイクアウト業務は最近約2ヶ月間で減っています。去年は比率が30%もあったテイクアウト業務が、今は15%未満に減少しました。
また、foodpanda、deliveroo、Uber EatsとHKTVmallの4つのフードデリバリーサービスを利用している飲食店の龍鳳祥餃子館(Dumpling Pro)も毎日の注文数について、他のプラットフォームが15~20つ入ってくるに対しUber Eatsは1~5つしか入ってこないとコメントし、Uber Eatsの利用率不足が反映されています。
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「ウェルネス」トレンド!心身の「癒し」を求めている香港市場
皆さんは香港の生活スタイルに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
香港人は一般的に歩調が速く、日常でのストレスが高くなりがちと考えられています。
もちろん、この二年ほどずっと続いてきたコロナ禍も近年ストレスがより高まっている原因の一つと見られ、アメリカの24/7 Tempoが2020年に行った調査では、香港は世界でストレスの高い都市ランキングで1位になりました。
それに対し、現在香港人、特に若年層は心身の健康を以前よりも重視し、香港なりの「癒し系ブーム」が近年起きています。一部のブランドはこのブームを掴みビジネスをより発展させ、この「癒し系ブーム」の市場がこれからも成長し続けることが見込まれています。
今回のブログは、このブームに関するビジネスの一部の実例、香港人がそのサービス・製品に「癒し」を求める理由について、ご紹介したいと思います。
世界中で成長し続けている「ウェルネス」産業市場
長引くコロナ禍はまるでゴールの見えないマラソンを延々と走らされているようで、人々のストレスは通常よりも増しています。それに伴い、人々の「ウェルネス」への重視は世界中でも見られます。
「ウェルネス」というのは単なる健康ではありません。アメリカのコンサルティング会社McKinsey & Co.は、2021年の消費者のウェルネスへの関心について、6ヶ国で消費者7,500名に調査を行いました。調査結果によると、79%は健康・フィットネス・栄養・容姿・睡眠・マインドフルネスを含んだ「ウェルネス」を重視していると回答し、42%は生活で「ウェルネス」を一番重視していると回答しました。経済面では、現在世界でのウェルネス産業市場は約1.5兆USD(約173兆円)で、年平均成長率5%~10%で膨らんでいると推測できるとのことです。
香港での「癒し系ブーム」で成長したビジネス
生活でのストレスに向き合うために、消費者は休みの日にペースを緩めて「ダウンシフト」を実現したい傾向があります。そのためか、香港ではコロナ禍に影響されているこの2年間に開店したばかりにもかかわらず、毎月の売り上げが5~6桁の香港ドルに安定し、これからも約20%成長すると見込んでいる小売店があります。
香港のhketが2021年に日本の茶道をテーマにしたレストランと台湾からのお香を販売している店にインタビューし、香港での「癒し系ブーム」について成長の理由を挙げました:
・今世界中がウェルネスを重視しているため、体の健康だけでなく、メンタルヘルスに関係する産業も成長し続けています。
・コロナ禍というパンデミックが世界中の新しい課題になり、人々はストレスと不安に向き合わざるを得ないため、メンタルヘルスがより重視されています。
・SNSの普及:例えばシンギングボウルや茶道などの伝統文化はこれまで消費者の目にあまり届いていませんでしたが、近年では体験ワークショップで撮った写真をSNSに投稿するのが人々の習慣になっている為、お客様の投稿が宣伝になり、サービス・製品に興味を持つ人を増やし、客層の拡大に繋がっています。
・現在香港のコロナ感染数は落ち着いていますが、海外旅行が大好きな香港人が世界のコロナ状況で長い間海外旅行できていない為、海外文化の体験を従来よりも求めています。
これらの店舗の事業戦略から見ると、どちらも実店舗とオンラインショップを両方持ち、FacebookなどのSNSを常に更新している上、商品に関係する茶道・香道のワークショップを定期的に開いています。
多くの香港人にとって、心の健康というのはまだまだ新しい概念です。一部の人はその概念がまだ十分理解できておらず、高価な製品を盲目的に追求する傾向があり、逆にサービス・製品への定着が難しくなっています。ワークショップを通じてブランドの理念を伝え、手にとった製品の特長を実感させ、お客様自身の使用体験に転化させることが、ブランドへの定着をより強めることに繋がります。
MAYプランニングでは、香港市場への進出に関わるサポートを行っています。ワークショップの開催、Facebook、InstagramなどのSNSでの宣伝など幅広いマーケティングソリューションを提供しております。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
KOLとは?今香港でトレンドになっているライブコマース
コロナ禍で世界中の人々の消費行動が変わりました。インターネット、オンラインショッピングの日常生活との融合が加速し、EC(電子商取引)は益々発展してました。
香港のVS MEDIAが香港市民のコロナ禍での消費行為について調査した所によると、75%以上の回答者が「KOL」と呼ばれる人たちのおすすめ商品やサービスを信じていることがわかりました。
「KOL」はこれからのポストコロナ時代でも影響力を発揮し、「ソーシャルコマース」や「ライブコマース」という新しい消費行為を発展させていく見込みです。
「KOL」とは?「ソーシャルコマース」「ライブコマース」とは?
香港でよく聞く「KOL」という言葉は英語「Key Opinion Leader」の略語で、中国語では「網紅」、日本ではインフルエンサーとも呼びます。
スポーツ選手やタレント、ファッションモデルなど特定分野の専門家はもちろん、最近では主にインターネット上で大きな影響力を持つ一般人やブロガー、YouTuberなどのことを指しています。
「ソーシャルコマース」とはSNSとECの組み合わせで、お客様がSNSで気になる商品を見つけた際に、そのままSNS投稿から商品購入ページに移動してもらい、商品・サービスの販売促進を行う手法です。
その中でも、「ライブコマース」は、KOLがライブで商品の実物を手に取って紹介したり、実際使って見せたりするので、従来の宣伝方法よりも消費者の信用が得られるという意見もあります。2021年10月20日、中国のオンラインモールTaobaoでのトップKOLの一人のライブでの売り上げは1日106.53億RMB(約1881億円)もあり、ライブコマースの盛況が見て取れます。
スマートフォン・インターネットの普及率が90%以上になっている香港
ソーシャルコマースもライブコマースも、消費者のインターネットの使用が不可欠となっています。では、現在香港でIT関連の普及率はどうなっているでしょうか?
香港統計処が発表した「香港的女性及男性主要統計数字 2021年版」の調査結果によると、2020年10歳以上の香港市民で、過去12か月以内にパソコンを使ったことがあると回答したのは79.8%、スマートフォンを持っている人口は92.1%で、これからもパソコンより安くて使いやすい、持ち歩けるスマートフォンが香港での主流になるでしょう。
インターネットの普及に関しては激しい成長が見られます。同対象の92.4%が調査前12か月以内にインターネットを使ったことがあると回答し、2001年の僅か43.3%より倍以上の成長を見せました。
また、15歳以上の香港市民で個人的にオンラインショッピングを利用したことのある人の比率は、2001年の5.6%から2020年の43.1%に、20年間でおよそ8倍に成長しました。
NielsenIQ社のデータから見ると、香港の世帯でのネット消費はコロナ禍が始まる直前の2019年と比べ2020年に46%の成長が見られます。消費者の2020年ネット消費回数は75%増加し、消費金額は52%増加、同時期実店舗で消費した金額の2.5倍になりました。
香港市場でのオンラインショッピング・KOLトレンド
VS MEDIAが2021年7月に18~45歳の香港市民を対象に行った「消費者網購及KOL影響力意見調查」(消費者のオンラインショッピング及びKOLの影響力に対する意見調査)のオンライン調査によると、香港人がオンラインショッピングに使った平均金額は月2,673香港ドル、およそ39,000円になり、商品やオンラインショップのネット上の口コミを従来より重視する傾向があるとのことです。
90%以上の回答者はKOLが紹介する製品やサービスに興味があると回答し、その中でレストランやグルメ情報が総合的一番人気で、女性に一番人気の分類はコスメ・美容とサービス、男性に一番人気なのは電子製品です。
80%以上の回答者はライブコマースの配信を見たことがあり、その魅力について以下の点を挙げています:
・ライブ配信期間限定の割引とキャンペーン
・実演で商品への理解が深まる
・ライブ配信中の数量限定の商品
・商品のセールスポイントが正確に伝わる
・商品に対して実用的な情報がある
など
78%の回答者はKOLの配信内容が面白ければ、間接広告の要素があってもあまり気にしないと回答し、73%は例えその内容に広告や商業でのコラボレーションがあると知っても、KOLのおすすめや体験シェアを信じる傾向があるとのことです。また、77%の回答者はアイドルや芸能人のおすすめよりもKOLが薦めた製品やサービスを信じており、87%は製品がKOLのお墨付きがあればトレンドの目印になると思い、購買意欲が高まるという意見です。
一方、約65%の回答者は自分の趣味やスキルでKOLになることに憧れていると回答し、その原因は主に働き方の自由度が高いにもかかわらず高収入を得られるという点です。しかし、約70%はKOLになるのに必要な条件と機材が分からない、75%は企業が撮影から制作までワンストップのサポートサービスを提供した方がKOLになる意欲が上がるという意見がありました。
ITの普及率がどんどん進んでいる今の時代、従来の紙媒体・テレビでの広告の効率が低下しつつあり、これからはインターネット主導の時代になる傾向が予測できます。その中で特にKOLの影響力を利用したソーシャルコマースとライブコマースが若年層の購買意欲を高める効果が見られ、今後のマーケティング戦略に取り入れておくべき項目になっています。
MAYプランニングでは、香港への進出に関わるサポーティング・香港市場でのプロモーションに関わるサポートを提供しております。Facebook、InstagramなどのSNSでの広告やKOL配信でのライブコマースのサポートが可能です。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
就業者収入が増加し続ける香港、長時間労働が深刻に
前回の記事では、香港での人材と高学歴化について、香港政府統計処が発表した「香港的女性及男性主要統計数字 2021年版」のデータを基にお伝えしました。
これからの香港、特に若年層の就業者ではIT化という世界的なトレンドに適切な人材が多数いることが分かりました。
ではそれらの人材を雇用するために、香港では給与金額と勤務時間をどう設定すれば求職者と従業員にとって魅力的なのか、今回は同調査結果を基に、香港就業者の収入と労働時間についてご紹介します。
収入
過去数十年間、香港就業者の月収は増える一方で、コロナ禍で近年は主流である定期昇給が影響を受けることもありますが、今後も増えていく傾向です。
就業者の月収は過去30年間目覚ましい成長が見られ、香港は2020年に一番コロナ禍に影響されていたにもかかわらず、月収中位数の伸びは緩くなっただけで止まることはありませんでした。
1991年の月収中位数は6,000香港ドルに対し、2020年は17,700香港ドルに成長し、その中でも、月収30,000香港ドル以上のグループが1991年の男女合計約58,300人から2020年の975,100人に、一番成長を見せました。
2020年のデータで男性の月収中位数は、前年と同じく20,000香港ドルと変化がありませんが、女性は700香港ドル増の15,000香港ドルで、ここ数年横ばいの男性の賃金に対し伸びており、男女差がなくなってきています。
また、2011年5月~6月のデータによると、香港政府の雇員・《最低賃金条例》(Minimum Wage Ordinance)を免除された「実習学員」、「工作経験学員」と外国人ヘルパーを除き、時給の中位数は女性47.1香港ドル・男性57.5香港ドルでしたが、同データ、2020年5月~6月の数字は女性66.0香港ドル・男性83.0香港ドルに増加しました。
各産業・職務・学歴での収入中位数参考
では、各産業・職務・学歴の人材への給料を決める際に、具体的にどの数字を参考にすればいいでしょうか。
産業別でみると、2020年女性での月収中位数は公務員(31,000香港ドル)が一番高く、2位の金融が30,000香港ドル、3位の教育は26,500香港ドルです。
同データで男性での中位数は金融40,000香港ドル、公務員35,000香港ドルで、教育は33,400香港ドルになります。
中位数が一番低いのは男女同様小売・宿泊・飲食業(女性12,000香港ドル・男性15,700香港ドル)です。
国際標準職業分類(ISCO‐08)で分けると、女性は専門員(Professionals)48,000香港ドル、経理・行政関連(Managers and administrators)が40,400香港ドル、専門員のサポートに当たる準専門員(Associate professionals)が23,800香港ドルです。
一方、男性では専門員が50,000香港ドルで、経理・行政関連が45,000香港ドル、準専門員が23,800香港ドルになっており、準専門員においては女性の方が男性より上回っております。
また、単純作業(Elementary occupations)では女性10,200香港ドル・男性13,000香港ドル、男女同様一番月収が低くなっています。
学歴別から見た月収中位数では、高卒(=昔の制度の中学7年卒)では男性18,000香港ドル、女性15,000香港ドルで;高専卒の場合は男性20,000香港ドル、女性18,000香港ドル;大卒以上では男性35,000香港ドル、女性30,000香港ドルになり、高学歴の就業者の方が高い月収を得られる傾向が分かります。
勤務時間
給料は会社運営に欠かせないものですが、労働時間も当地の雇用において知っておかなければならない重要な項目です。
香港は世界で最も労働時間の長い地域の一つとして知られており、2020年のデータから見ると、勤務時間の長い外国人ヘルパーを除いても、7日間での平均勤務時間は女性40時間、男性44時間です。
実はかなりの就業者、特に男性が12%も、7日間での平均勤務時間が60時間以上で、深刻な長時間労働になっています。
法令で守られていない香港従業員の労働時間
日本と違い、香港では法定の労働時間に関しての法令が制定されていません。
香港政府は2010年に法定の労働時間(Standard Working Hours)への研究を承諾しましたが、後に契約労働時間(Contractual Working Hours)と時間外労働の強制的補償に変更しました。2018年にはそれらの法案を保留にし、法的拘束力のない「11つの産業の労働時間ガイドライン」の設立に再度変更しました。しかし、実は2021年現在、未だにそのガイドラインは発表されておりません。
また、日本の過労死等防止対策推進法のような法律がなく、過労死についての定義もなく、過重労働に関連した病気に罹患した労働者は補償を求めるのが困難になっています。
労働時間に関して法令もガイドラインもない一方、香港の従業員は一般的に「給料は契約で決められた労働時間に対して支給されている」という考え方を持っており、定時出社と定時退社が労働において基本的な目標になっております。なのに現実では、労働時間に法的保障がないので、怒られるやクビになる可能性を恐れ、残業代なしで残業している従業員がほとんどです。
香港職工会連盟(HKCTU)が2019年4月に発表した調査結果によると、香港の労働者でおよそ5人に1人が、昨年平均で週55時間、または1日に11時間働いていました。
警備、飲食、陸上運送、建設や小売部門の労働者の労働時間がもっとも長く、その中でも、特に警備員が最悪で、4人に1人が週72時間以上就業していました。
長時間労働に陥っているのは肉体労働やブルーカラー職種だけでなく、わずかな休憩でほとんど30時間以上オンコール勤務に就いている医師も、週55時間以上、もしくは70時間以上働いている教師も香港には多数います。
結果、仕事中に非労働災害で死亡した人数は毎年約140人弱になっており、バス運転手の過労で致命的な交通事故が起きたり、過酷な労働時間での自殺が起きたりしています。
労働時間への制約が承諾されて11年に経ち、政府側は労資両方の合意に至るのが難しいので未だに法令やガイドラインの制定についてスケジュールがないと発言しました。保障が少なく、長時間労働が社会病になっている香港では、ワーク・ライフ・バランスのできる仕事がとても重宝されております。
福利厚生の充実は、社員の企業へのロイヤリティを高め、企業にとって採用活動や人材定着にもかかわります。香港では関連の法令がありませんが、福利厚生の一環として、適切な労働時間と時間外労働補償を制定した方が企業の利益になるでしょう。
香港政府統計処が発表した完全版の調査結果はこちらのURLまでご参考ください:
https://www.censtatd.gov.hk/en/EIndexbySubject.html?pcode=B1130303&scode=180
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高学歴IT人材の増加〜2021香港での人材実態〜
前回の記事では、香港政府統計処の「香港的女性及男性主要統計数字 2021年版」に基づき、香港の人口・労働市場変化についてお伝えしました。
人口においては不振に見える香港では、実は経済産業のシャッフルが起きています。この状況で商機を掴むために、香港での労働市場について知っておくことが役に立つでしょう。
今回は、同調査結果を基に、香港人材の実態についてお伝えします。香港就業者の収入と労働時間については次回の記事でご紹介する予定です。
香港は以前より、高学歴社会になってきており、その中でも、テクノロジー、ビジネス、科学に関する人材が大多数を占めています。
高学歴社会になっている香港
学歴では、昔のデータに比べると、大学の学位を持っている人が増える一方で、若年層の高専卒以上の比率が一番高くなっています。
2020年、外国人ヘルパーを除き、15歳以上で学位を持っている女性は24.9%で男性は27.9%。同データで2001年の数字は女性10.9%男性14.4%、顕著な増加が見られます。
年齢層で見ると、40代グループとそれ以上のグループは高卒(=昔の制度の中学7年卒)までの学歴が多数ですが、30代グループを境目に、若年層では高専卒以上の方が多数になっており、高専卒以上の学歴を持っている比率が一番高いのは20代グループ(56.0%)です。
テクノロジー関係の科目が一番人気に
香港の大学では様々な科目があり、多様な人材を育てています。その中でもエンジニアとテクノロジーの科目が伝統的人気の商科の履修人数を追い越し一番人気で、IT化のトレンドを反映しています。
2020/21年度の大学教育資助委員会が資助している課程の学生数から見ると、19.0%の学生が「工程科と科技科(Engineering and Technology)」を履修しており、各科目で一番多いです。その中の71.1%が男性で、各科目で男性の比率が一番高い科目になっています。2・3位は同じく17.8%の学生が履修している「商科と管理科(Bussiness and Management)」と「理学科(Sciences)」で、男女の比率は約4:6と6:4です。
ちなみに、注目なのは、中国語と英語という香港の公用語以外、日本語は主に外国人ヘルパーの母国語であるフィリピン語とインドネシア語に続き、香港人(外国人ヘルパーを含む)が「読み・書き」できる外国語で3位になっております。
2016年のデータによると、中国語の「読み」ができる人口は女性84.6%・男性95.1%、英語を読めるのは女性65.7%・男性71.2%に対し、日本語を読める香港人口は男女同様2.0%です。「書き」の方は、中国語(女性82.0%・男性93.1%)と英語(女性63.6%・男性68.7%)に対し、日本語を書ける香港人口は女性1.7%・男性1.6%です。
まとめると、香港では現在世界的なトレンドのIT化に対し、テクノロジー専攻の高学歴人材が増えています。他の分野でも高専卒以上の人材が今後増えていく見込みで、各業界に適切な人材がいます。その上、日本語のできる人口が他の外国語よりも比較的に多い、日本企業の香港への進出には有利な環境になっていると言えます。
香港政府統計処が発表した完全版の調査結果はこちらのURLまでご参考ください:
https://www.censtatd.gov.hk/en/EIndexbySubject.html?pcode=B1130303&scode=180
香港で人材雇用する際に参考に入れておきたい、香港就業者の収入と勤務時間のデータについては、次回の記事でご紹介したいと思います。
香港人口・労働市場の実態!2021年の統計発表
香港政府統計局による「香港の女性及び男性の主要統計数字 2021年版」が発表されました。この調査結果は毎年発表されているもので、人口構成をはじめ、教育、就労、医療、インターネットの普及率などまで、様々な分野について男女別で非常に細かいデータが載っています。2020年のデータのみでなく、過去のデータも載っているので、現在の香港社会での推移が分かる重要な指標です。この調査結果のデータに基づき、現在香港での実態についてご紹介します。
まずこの記事では、2019年~一連の事件による香港の人口・労働市場への影響についてご紹介します。次回の記事ではそれをもとにした人材採用の状況についてお伝えする予定です。
2019年からの事件による人口への影響
2019年~2020年の逃亡犯条例改正案の端を発する香港民主化デモ、香港国家安全法の施行、2020年~の新型コロナウイルス状況など、この2年間はこれらの事件が香港に経済面だけでなく、人口面と労働市場面でも大きな影響を与えました。
人口面からみると、香港の人口は数十年間増え続けていましたが、2020年のデータでは減少しました。その原因はこの数十年続けている出生率の低下以外、移民などでの人口の流出も考えられます。
統計局の調査結果によると、2020年時点での香港人口は外国人ヘルパーを含めて合計約7,481,800人(女性4 065 500人・男性3 416 300人)。
14年前の女性3 587 000人・男性3 270 100人と比べて、どちらも増加していますが、女性の方の増加率が男性の約三倍です。
しかし、注意すべきなのは、この激しい成長の中、2020年は唯一減少し、香港の人口は2019年より約2.5万人も減少しました。
香港中文大学の香港アジア太平洋研究所が、今年9月16日から25日にかけて、716人を対象に移住に関する電話インタビューを行いました。その結果、42%が「香港から移住を検討」、うち12%は「中国本土に移住を検討」と回答しました。
海外移住の検討理由では22%が「自由と人権」、18%が「海外の広々とした生活空間」をあげました。移住検討者の38.7%はすでに移住の準備を始めていると回答しており、人気の移住先はイギリス(26.1%)、カナダ(14%)、オーストラリア(11%)、台湾(7.5%)となっています。中国本土への移住検討の理由としては「香港の住宅価格高騰、窮屈な生活空間、物価の高さ、厳しい経済見通し」があげられました。
労働市場への影響
一方、労働市場では、就業者数が過去30年増える一方、2018年のデータ(2019年に調査したもの)から2年連続で減少しています。
過去30年間、香港の就業者数は1991年の約280万人から2020年の約389万人に、38.7%増加しました。その中でも、女性で増加した就業者数は899,900人(85.9%)増加し、男性の184,200人(10.5%)より大幅に超えています。女性の外国人ヘルパーの増加が一部の原因ですが、主な原因は女性の学歴向上・独身・婚姻年齢の上昇により香港本土の女性が就業者人口に加わったからです。
しかし、2019年のデータと比べると、男性の就業者数が103,100人減って2020年は1,806,000人になり、女性も同じく85,300人減で1,855,500人になりました。2018年のデータからも就業者数の減少が見られ、男女同様の2年連続の減少となります。
労働者数減少の原因
香港中文大学社会工作学系の黃洪副教授によりますと、
この現象について様々な原因がありますが、大きくは2つです:
1.卒業者数の減少
2.一部の就業者の労働市場離れ
特に労働市場離れについては更に3つの原因が考えられます:
1.早めの定年退職ーー50代・60代の人は本来はまだ労働力ですが、就職が難しいので求職せずに早めの定年退職を選んでいます。これは「就業意欲喪失者(discourage worker)」と呼び、政府の定義では失業ではなく労働市場から離れたと見なされます。
2.移民ーー30代の人が移民することを選び、労働市場から離れた事は近年よく聞かれます。
3.市場の衰退ーーこれはあくまで可能性ですが、雇用者が若年者を雇いたくない、かつ若年者も働きたくない為とも言われています。
まとめると、2019年からの一連の事件とその結果で香港人の未来への希望が揺らぎ、人口にも就業者数にも反映されています。特に今香港から移住したい香港人が増えているのが顕著です。
香港政府統計処が発表した完全版の調査結果はこちらのURLまでご参考ください:
https://www.censtatd.gov.hk/en/EIndexbySubject.html?pcode=B1130303&scode=180
では現在の香港ではどんな人材を探せるか、就業者が香港での収入と勤務時間のデータを含めて、次回の記事でご紹介したいと思います。