【2022施政報告】最新人材確保措置、滞在サポートと優遇措置
前回の記事では、2022施政報告による新たに設立した人材誘致措置「高才通」と現有の入境優遇措置の最適化についてご紹介しました。
人材を確保した以上、長く滞在してもらわないと結局香港の人材不足は解決できなくなるので、人材誘致の措置とともに人材向けの滞在サポートと優遇措置も提案されました:
3. 海外人材サポート専門の窓口を設立
新設立の「人材サービス窓口(Talents Service Unit)」は政務司司長が主導し、下記のサポートを提供する予定です:
A. 香港で不足している人材の種類について積極的に調査し、人材探しの戦略を立てる
B. 各入境優遇措置でのビザ申請手続きについて、申請状況照会や不明時のサポートを行う
C. 海外人材が香港滞在中、子女の就学や日常生活などワンストップのサポートサービスを提供すること
また、「人材サービス窓口」が策定した戦略を実行し、戦略対象との連絡の取り合いやトップ100の大学への広報宣伝を行うために、17ヶ所の中国のオフィス及び海外の経済貿易代表部には「企業・人材誘致専門チーム」を設立する予定です。政府の情報筋によると、海外留学中の香港学生や海外勤務の香港人もチームの連絡対象となっており、イベント開催や香港の最新情報の提供を通じて、流出してしまった香港人材が香港に戻ってもらうように推進する方針です。
海外人材の誘致は期待が寄せられる一方、現有人材の確保は言及されていない
香港大学経済と経営学学院の経済学教授Heiwai Tang氏の意見では、政府自ら人材に連絡するのは望ましく、人材供給会社との提携を考慮に入れるべきとのことです。特に中小企業は従業員子女の就学手配までサポートするのが難しく、子供連れの海外人材にとって魅力的なポイントの一つです。
一方、民主党主席のLo Kin-hei氏は今回の施政報告における人材流出対策について、「海外から新しく人材を誘致することしか言及しておらず、香港に現有している人材の確保については全く言及されていない」と指摘しています。
4. 誘致した海外人材の確保
人材探し、人材誘致といった挑戦をクリアした後、重要なのは長く滞在してもらうことです。そのために、香港政府はこの2つの措置を提案しました:
A. 雇用された後、3年間滞在できる就労ビザを発行する
B. ビザ申請の手続きを今年より全面的にデジタル化する
また、人材確保措置の一環として、下記の条件を満たした場合は不動産購入時の印紙税(Buyer’s Stamp Duty、New Residential Stamp Duty)が還付されます:
・不動産購入時に、下記の6つの入境優遇措置と新設立の「高才通」のいずれかのビザを持っていること
・「一般就業政策(GEP)」、「中国人材入境計画(ASMTP)」、「優秀人材入境計画(QMAS)」、「非香港人卒業生に対する滞在・入境管理制度(IANG)」、「科学技術人材入境計画(TechTAS)」、「海外在住中国籍香港永住者2代目入境計画(ASSG)」
・香港で7年間居住し、且つ香港永住者になった者
・不動産の売買契約書が2022年10月19日以降に成立し、成立時申請者が香港での住宅の実質的支配者(beneficial owner)でないこと
・印紙税還付対象の不動産は印紙税還付を申請する時点で依然所有している不動産の中で、一番早く購入したもののみ
注意すべきなのは、Buyer’s Stamp DutyとNew Residential Stamp Dutyは還付されますが、「第2標準税率」で計算されたAd valorem stamp dutyは支払わなければなりません。
諸措置に対しての学者の意見
シンガポール社会科学大学(Singapore University of Social Sciences)ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーWalter Edgar Theseira氏の分析によると、印紙税還付の措置は人材誘致への効果が弱いとのことです。高度人材の収入は生活費や税金を難なく支払うことができるため、滞在地でのビジネス環境やチャンスの方を重視しているとのことです。「シンガポールのONE Passの目標は香港と競争することではなく、世界各国の人材争奪戦への対策だ。シンガポールはASEANとの関係が緊密で、フィンテック、法務や資産運用の方が得意;一方香港は中国とのビジネス引取にとって理想的な会社設立サイトで、保険などの分野が得意だ。両者は各自の優位性があり、共同に発展することができるはずだ。」
アメリカのクレムソン大学の元経済学部副教授のKevin Tsui氏はシンガポールで勤務したことがあり、シンガポールの海外人材向けの就業サポート制度を高く評価しています:「シンガポールでは従業員を雇用する際に配偶者も雇用し、子女の就学にもサポートしてくれている。それに対して香港ではこういったサポートがなく、より高い給料しか提供していない」Tsui氏は印紙税還付の措置について「悪くない」とコメントしていますが、香港市民に与える印象があまりよろしくないかもしれないと指摘しています。「バランスをとるための政策があったほうがいいだろう。現在のままでは不動産価格維持のため、もしくは外来者、特に中国人に便益を与える措置という印象を与えてしまっているかもしれない。」
人材争奪の要は海外人材が香港に就職する意欲だと、Tsui氏が語っています。「まずは環境を整えることだ。人が楽しく働けるようにしないと。例えば今のコロナ規制は緩和されたとしても、海外からの入境者は何回もPCRテストを受ける必要があり、万が一感染した場合は隔離施設に送られ、仕事の妨げになっている。こういった措置は多数の国の方針とはずれており、海外の人には不自由の印象を与えてしまう。」
厳しくなっている人材流出に向かって、2022施政報告で提案された対策が、特に現有人材の確保の面ではまだまだだと感じる人が多いかもしれませんが、人材誘致の措置は多数最適化される予定です。また、2年間実行した後措置の効果を検討して調整する予定もあり、今後の人材不足改善状況に注目すべきです。
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【2022施政報告】最新人材誘致措置、シンガポールと比較
2022年10月19日、香港行政長官のJohn Lee Ka-chiu氏は初めての「施政報告(policy address)」を発表しました。今回の報告で企業・人材誘致の措置は比較的多く、過去2年間での約14万人の人材流出への対策だとされています。
今回の記事では、2022施政報告の内容と労働福利局(LWB)局長のChris Sun Yuk-han氏の記者会見内容に基づき、現在の香港とシンガポールでの人材誘致措置を比較してご紹介します。
1. 「高度人材パス計画(Top Talent Pass Scheme)」を新たに設立
シンガポールが最近設立した「Overseas Networks and Expertise Pass(略称ONE Pass)」に応じて、香港政府も類似の「高度人材パス計画(Top Talent Pass Scheme)」、略称「高才通」を新らしく設立しました。対象は年収250万香港ドル(約4,700万円)以上の人材、及び世界大学ランキングでトップ100校を卒業した人材となります。収入面でも学歴面でも香港の「高才通」はシンガポールのONE Passより条件が厳しく、ビザの有効期限もONE Passより短いため、香港への入境におけるコロナ規制が維持されたままだとこの新措置での人材誘致は難しいとの意見もあります。
しかし、香港政府側は新措置の効果に対して楽観的で、2023年~2025年の人材誘致目標人数を毎年約3.5万名、コロナの影響が大きかった2020年~2021年の毎年約2万名より1.5倍高く設定しました。
「世界大学トップ100校」対象は合計165校
「高才通」の対象者は下記の3種類となります:
A. 過去1年間の年収が250万香港ドル(約4,700万円)以上の者、学歴は問わず、人数上限なし;或いは
B. 「世界大学トップ100校」の卒業生で過去5年間に3年間以上の職歴を持っている者、卒業年度は問わず、人数上限なし;或いは
C. Bの職歴条件に満たしていない「世界大学トップ100校」の卒業生、人数上限毎年1万名
注意すべきなのは、条件である「世界大学トップ100校」の対象範囲は4つの世界大学ランキングに基づいて設定され、合計165校が含まれています。また、学系や学科の制限はありません。
ビザ有効期限は「2+3+3年」、最初の2年間は就職不必要
香港政府の情報によると、「高才通」は今年12月から実施予定で、初回のビザ有効期限は2年間、3年ごとの更新を最大2回、合計8年間滞在可能です。また、配偶者と未成年子女の家族滞在ビザも申請できます。「高才通」は申請時の在職が不必要で、香港での滞在期間内も就職が要求されていません。しかし、就職はビザ更新の条件となっています。「職種に制限がないため、極端にいうとマクドナルドでの仕事でも不可能ではない。」という見解です。
シンガポールのONE Passとの比較と学者の意見
一方、シンガポールが来年より実施する予定のONE Passでは、過去1年間の月収が3万シンガポールドル以上(年収約3,700円)が条件となり、香港の「高才通」より僅かに緩い条件となっています。その上学歴にも制限がなく、初回の滞在期間は5年間で、追加5年間の更新が可能で合計10年間滞在可能となっています。香港政府は申請者の就職状況を継続的に観察することを計画しているため毎回の更新期間が短くなっているとのことです。「本計画はシンガポールと直接比較するために設立したものではない。両者の状況は違う。」
香港大学経済と経営学学院の経済学教授Heiwai Tang氏によると、年収250万香港ドル以上の人は経験豊富な人材が多く、「高才通」は香港への人材誘致に役立ちますが、滞在期間をより長くした方が魅力的だという意見です。
2. 人材の入境優遇措置を最適化
現在一番利用されている2つの入境優遇措置、中国以外の外国人向けの「一般就業政策(GEP)」と中国人向けの「中国人材入境計画(ASMTP)」については対象者以外はほぼ同じとなっています。今回の最適化ではGEPやASMTPの対象者をより区別しやすくするために、適用条件について下記の2点を変更する予定です:
A. 「人材リスト」の導入:「優秀人材入境計画(QMAS)」に適用されている「人材リスト」をGEPとASMTPに導入する。「人材リスト」にある職種の人材を雇用する場合、これまでは条件であった「香港での採用難を証明すること」が不要になり、GEPとASMTPのビザを直接申請できる
現在の「人材リスト」では13種類の職種があり、詳細は以下URL参照: https://www.talentlist.gov.hk/en/
香港での人材不足の最新状況を反映できるよう、「人材リスト」は2023年第1四半期までに更新予定
B. 雇用する職の年収が200万香港ドル以上である場合、これまでは条件であった「香港での採用難を証明すること」が不要になり、GEPとASMTPのビザを直接申請できる
「優秀人材入境計画(QMAS)」は現在は毎年4,000人という人数上限を設けていますが、香港政府は今後2年間、QMASの人数上限を一時停止します。
また、「非香港人卒業生に対する滞在・入境管理制度(IANG)」の最適化について、下記の2点を変更する予定です:
A. 現在の措置では、非香港人卒業生は香港の大学を卒業後、就職活動のために1年間滞在することが可能となっていますが、今後は2年間へと延長する。
B. IANGの適用範囲を香港の大学のGBA分校へと拡大する。現時点適用対象に追加される予定なのは香港浸会大学(HKBU)の北京師範大学・香港浸会大学連合国際学院(UIC)、香港中文大学(CUHK)の香港中文大学(深セン)(CUHK-SZ)と香港科技大学(HKUST)の香港科技大学(広州)(HKUST(GZ))の3校となる。
最後に、「科学技術人材入境計画(TechTAS)」の最適化のため、2点の改善を予定:
A. 現在条件となっている「香港従業員の追加雇用」を撤廃する
B. 企業からの申請にあたってITCが許可する定数の有効期限を1年間から2年間へと延長し、対象となるテクノロジーの範囲もより多くの新興テクノロジーを含めるように拡大する
現在の規定によりTechTASでビザを申請するには、企業は1~3名の非香港人テクノロジー人材を雇用する場合、香港人フルタイム従業員を最低1名と香港人実習生を最低2名雇用しなければなりません。2020年を除き、2018~2021年TechTAS経由でビザを獲得したテクノロジー人材の人数は僅か2桁でした。香港政府の情報源によると、業界はこの規定に対して「求人が困難でハードルが高すぎる」という意見を持っており、この規定の撤廃は業界の意見に応じた改善策とのことで、「香港の労働市場にあまり影響はないだろう」とコメントしています。
諸改善策に対する企業側の意見
香港にも支社を設けているアメリカのIT企業Barracuda Networks社のAPAC営業部長のJames Forbes-May氏の意見では、「海外人材が香港で就業して定住する難易度が緩められるのは人材誘致に一定の効果がある」と肯定すると同時に、テレワークが普及しているため、香港に定住するのはIT業界の人材にとって唯一の選択ではないと指摘しました。
今回は2022施政報告の人材誘致政策の目玉となっている「高才通」と現在の入境優遇措置の最適化を中心にご紹介しました。
次回のブログでは、「人材サービス窓口(Talents Service Unit)」の設立と人材に長く滞在してもらうように発案した政策についてご紹介する予定です。
消費傾向が二極化!不景気の中で成長する「贅沢品・嗜好品」と「中古品」
経済不況で世界的にインフレが進んでいる中、市場は不況による消費意欲の減少を懸念していますが、人々はコストを削減しているものの消費意欲が減少していません。
その中で特に意外な成長を見せているなのは「贅沢品・嗜好品」と「中古品」です。
今回の記事では、「贅沢品・嗜好品」と「中古品」が近年の不景気で逆に成長する理由についてご紹介します。

贅沢品、不景気中の心の癒やし
消費者心理専門の心理学者Cathrine Jansson-Boyd氏によると、他人にどう接してほしいかは、消費者が商品を購入と決める時に無意識ではありますが最も重要な要素の一つです。金銭的不自由は負の感情を招いてしまうため、消費者は自分を元気づけられる商品・サービスにお金を普段よりもかける傾向があります。
学者の意見では、不景気の時には消費者のステータスシンボルへの渇望が普段よりも強くなります。また、可処分所得の減少は消費者の情緒に影響し、非合理的な決断をしやすくなるとのことです。
アメリカのコンサルティング会社のBain & CompanyとAltagammaのデータによると、恒常為替レートで計算されたブティックでの2021~2022年の売上は15%も成長し、その中の60%はハンドバッグなどの主力商品の値上げによるものでした。来年度の売上についても、さらに3%~8%の増加を見込んでいます。
贅沢品の巨頭は最近の財務会議で楽観的な態度を示しており、LVMHの第3四半期の売上は去年比19%増加し、Gucciの親会社であるKering社は去年比14%増加しました。
「贅沢品の売上は富豪に集中している。」Bain & CompanyのパートナーであるClaudia D`Arpizio氏は指摘しています。「富豪の可処分所得は経済の不況にあまり影響されない。現在ピラミッドの頂点にいる2%の人は贅沢品売上の40%を占めており、2009年の35%よりも高くなっている。」
また、中国人は贅沢品の主要な購入者であるため、Bain社の予想では、ゼロコロナ政策撤廃につれ、中国の贅沢品売上成長率は2023年で6%~8%に達するとの見込みです。グローバルで見ると、2022~2030年で贅沢品の売上は60%と激増し、インド・韓国・メキシコの消費者はより富裕になり、贅沢品の新顧客を毎年合計1千万人生み出すと、同社が予測しています。
不景気で小売業者の大半が「トレードダウン」を取り入れ始めている中、Bain社はアメリカとヨーロッパの消費者がインフレーションを無視して贅沢品を購入している状況から、今年の贅沢品売上が5%以上成長すると予測しています。ロイターの報道によると、Bian社は6月21日の報告で、「控えめに予測しても、今年世界での贅沢品売上は3,050億ユーロに達するだろう。楽観的な状況では3,300億ユーロに達し、コロナ以来最も激しいリバウンドになる」と予測しているとのことです。

嗜好品、「リップスティック効果」により伸びる
「リップスティック効果」とは、不景気な時代には口紅など比較的に安い消費財や嗜好・趣味に関する消費・サービスがよく売れるという消費者行動傾向です。
不景気でも人々の消費への衝動は減退しませんが、経済の衰退で消費者の収入が減少しているため、不動産や自動車など高い消費は控え、比較的に安い商品・サービスをよりよく購入するようになります。
外出を控えることが推奨されるコロナ禍では、家で料理を研究することが娯楽の一種となり、調理関係の商品にへ意外な伸びをもたらしました。中国の美団社が発表した「2020春節宅経済ビッグデータ」によると、パン焼き・菓子焼き関係の商品の検索数は100倍増加し、酵母の売上は40倍、餃子の皮の売上は7倍以上成長したとのことです。
2022年に新しくネイルチップブランドを立ち上げたイギリスのブロガーChristy Llewellyn氏の観察によると、電気代や交通費などの生活コストが新しい年に上昇するニュースが出た後、ブランドの売上が大幅に増加しました。「この難しい時期には些細な幸せが特に欲しい、例えばコーヒーやマスカラ。それに対し、自動車や靴などの高い消費は控えるようになる」とLlewellyn氏が指摘しました。2022年7月にアメリカで行った市場研究でも、美容業・美容関係の商品が売上が成長すると見込まれていました。
一方、ホテルや飲食店にパンを提供し、カフェを2店舗所持しているイギリスパン職人のAlex Gooch氏によると、インフレーションでコストは持続的に上昇していますが、収入は不景気に影響されていないとのことです。「顧客は相変わらず10GBPをかけて2キロのパン・オ・ルヴァンを買ったりしている。不況でも人々は気に入ったカフェで消費するし、友人と会うこともやめないだろう。その生活習慣が幸せの一部だから、どうなっても諦めはしないと思う」とGooch氏が述べています。「カフェでの消費、例えばパンやコーヒーは6GBPくらいしかかからないので、他の消費と比べては安い方なんだけど、生活の中では大切なご褒美になる。」

中古品、サステナブルトレンドとオンラインプラットフォームの便利さが成長の発車に
売買取引プラットフォームのCarousell社が2022年11月21日に、香港の消費者の不景気での消費習慣についての調査結果を発表しました。80%以上の消費者が不景気の時により多くの中古品を購入しており、特に45歳以上の回答者では86%が平均3ヶ月あたり1回中古品を購入しているとのことです。全体的な調査結果は消費者の中古品への態度が好景気の時期よりも軟化していることがわかりました。
同調査では、62%の回答者が経済衰退の時により多くの中古品を購入すると回答しており、90%は中古品に対する態度が「中立」と「肯定的」になっています。消費者が中古品を購入時、一番よく思い付く商品種別は「家具・インテリア」と「趣味・ゲーム」です。45歳以上の回答者の中で、76%は中古の家具を考慮していると回答し、消費者は持ち運べる中古品のみでなく、サイズの大きい家具などにも興味があることがわかりました。
中古品の売上が経済の不況に影響されず、逆に成長している理由について、同調査では90%以上の回答者は「中古品の外観と性能は新品とあまり変わらない」と回答しています。また、中古品は持続可能な開発の理念に適切で、コストパフォーマンスも高いことはまさしく今の消費者が一番関心のある要素です。
その中でコストパフォーマンスの高さはやはり香港の消費者が中古品を購入する一番重要な理由で、53%の回答者は「中古品を買うことで毎年最低1,000HKDが節約できる」と回答、約10%は「毎年最低5,000HKDが節約できる」と回答しています。
中古品を購入する理由として、81%の回答者は「まだ傷がない」と回答し、使用されたことがあってもまだ使えるのなら無駄にしたくない、中古品を使うことをエコライフを実践する一環にしているようです。
中古品購入の便利さについて、60%以上の回答者はCarousellなどの売買取引プラットフォームが中古品売買の流れを改善していると述べています。45歳以上の回答者では、70%以上が中古品の購入が以前より便利だと感じており、高齢の消費者にとって効率のいい取引の流れが中古品への受け入れを促進していることがわかります。
経済の不況は全種類の商品の売上に影響すると一般的に認識されていますが、データから見ると一面的な結果ではないようです。
コロナ規制が解除しつつある今では、実店舗や対面のワークショップなどを通して、より直接的に商品の良さを実感させることが、消費者の定着に効果的でしょう。
一方、コロナ禍で人々がIT化した生活に慣れるようになっていることを活用し、オンラインプラットフォームの便利さで商品の認知度を上げることが重要です。また、近年世界的なトレンドである「サステナブル」の要素を取り入れることで、商品により魅力的な印象を与えることができます。
MAYプランニングでは、香港への進出に関わるサポートを行っています。法人や店舗設立、現地消費者への効果的な接触方法など幅広いビジネスソリューションを提供しております。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
大幅に緩和!香港の最新入境措置・防疫措置
12月28日、香港政府は入境措置と防疫措置を大幅に緩和すると発表しました。
約3年間の厳格な制限から通常生活に戻る大きな一歩ではありますが、パンデミックに関する制限はまだ若干残っています。
今回の記事では、香港政府における現時点(2022年12月29日)での最新入境措置・防疫措置についてまとめてご紹介します。

香港への入境措置(2022年12月29日より実施)
事前確認
香港居民・非香港居民問わず、香港への到着日に3歳以上である場合、全ての入境者(出発地問わず)を対象に「搭乗前24時間内に行ったRAT検査の陰性結果」もしくは「搭乗前48時間内に行ったPCR検査の陰性結果」が必須となっています。香港政府の関係者はテスト結果の提示を要求する場合があるため、検査結果は90日間保有してください。
過去必須となっていたオンラインでの健康申告は今後任意となります。
非香港居民が香港に入国するためのワクチン接種条件には変更がないため、搭乗日時点で12歳以上である場合、「香港政府が定めるワクチンを完全接種(*1)」し有効なワクチン接種証明書を提示する必要があります。
*1:香港政府による「完全接種」の定義は、下記のURLで記載された必要回数を「香港到着日の14日間前に」接種を完了することです。
https://www.coronavirus.gov.hk/pdf/list_of_recognised_covid19_vaccines.pdf
香港に入国後
新しい規定では、香港到着後のPCR検査が全て不要になります。
以前強制であった「到着後5日間の自己観察期間でのRAT検査結果のオンライン申告」は「必須」から「推奨」へと変更されます。結果が陽性の場合は衛生署衛生防護中心(CHP)へのオンライン申告により、政府からの支援が提供されます。
また、12月29日より香港でのワクチンパスの廃止により、短期滞在者向けの「臨時ワクチンパス」も廃止となります。

香港での防疫措置(2022年12月29日より実施)
濃厚接触者に関する防疫措置の撤廃
コロナ感染者の濃厚接触者の指定と強制隔離は撤廃されます。しかし、感染者の隔離は引き続き必要です。
ワクチンパスが廃止
これまでワクチン接種未完成者の施設への出入りを制限していた「ワクチンパス」は完全廃止となり、今後はワクチンの接種状況に関係なく飲食店や娯楽施設などに自由に入店・入場できるようになります。
ソーシャルディスタンス制限令は「マスク着用義務」以外全て廃止
これまで飲食店やテーマパークなど各施設で実施されていた「テーブル間隔、収容人数」などの制限は全て撤廃となり、公共の場での集まりの人数制限も撤廃となります。
しかし、「マスク着用義務」は引き続き実施され、飲食時、運動時、入浴時などの場合のみマスク着用が不要となります。
マスク着用義務範囲の詳細はこちらのURLにて随時更新されています:
https://gia.info.gov.hk/general/202212/29/P2022122900035_409576_1_1672250873961.pdf
政府によるPCR検査について
住宅への毎日の強制PCR検査は12月29日より完全廃止となりますが、80ヶ所以上のコミュニティーテストセンター(CTC)とコミュニティーテストステーション(CTS)は引き続き運営する予定です。無料で検査を受けるには「Leave Home Safe」アプリでの予約もしくは下記のサイトでの予約が必要になります。
https://booking.communitytest.gov.hk/form/index_tc.jsp
年長者向けの防疫措置は維持、学校向けの防疫措置は緩和
免疫力の低い年長者を守るために、養護ホームや身体障害者生活施設の従業員は毎日のRAT検査と定期的なPCR検査が引き続き必要となります。入居者は毎日のRAT検査が必要で、訪問者は訪問前48時間内に行ったPCR検査の陰性結果を提示しなければなりません。
学校について、ワクチンパスの廃止につき、教職員及び訪問者のワクチン接種状況は不問になり、全ての生徒の放課後活動が可能となります。
しかし、教職員及び全生徒は毎日登校前の検温とRAT検査が引き続き必要です。2023年1月31日まで、RAT検査で陽性の者は登校禁止となり、ワクチン接種率が政府の要求に達した学校のみが全日の対面授業が可能です。
また、中学校(高校を含む)は2023年2月1日より、小学校と幼稚園は2月15日よりワクチンの接種率を問わず全日対面授業が再開できる予定です。
一方、下記の社区隔離施設は引き続き運営する予定で、伝染防止のために隔離を希望する感染者は陽性結果申告サイトにて申し込むことができます。
https://www.coronavirus.gov.hk/pdf/Community_Isolation_Facilities.pdf
香港での入境措置と防疫措置が一気に緩和されることで、飲食業、観光業など各業界は回復する見込みです。
一方、感染数データに未だに疑念が残っている中国の出入国制限が緩和することを受け、世界各国が渡航前中国(一部の国では香港・マカオ含む)に滞在したことのある者に入境制限を新しく設けているため、渡航前目的地の入境措置・防疫措置を事前確認することをおすすめします。
MAYプランニングでは、香港への進出に関わるサポートを行っています。本サイトのブログと弊社のFacebookとLinkedinページにて香港の最新情報を提供しております。香港でのビジネスにご興味のある方はお気軽にご相談ください。
コロナ政策と経済における問題、香港新政権の発足を機に解決されていくか
在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所と香港日本人商工会議所の3組織は在香港の日本企業等が直面するビジネス環境を把握するために実施された調査の結果によると、2022年7月に発足した香港の新政権に「域外(特に中国本土・日本)との往来制限の早期撤廃」や「防疫対策の見直し」を期待している企業が7割を占めており、「物流の正常化」「雇用補助金の継続」など経済対策も要望されています。中長期的には、香港の優位性やビジネス環境維持、そして大湾区(GBA)や深センと接する元朗区と北区を中心とした「北部都会区(Northern Metropolis)」など更なる経済開発を望む意見もありました。
今回の記事では、調査で記述された各要望の実現状況についてご紹介します。
経済対策の効果
ヨーロッパのシンクタンクBruegel社の意見では、特に電子決済を普及させた「電子消費券」と給与補助金の「保就業計画(ESS)」が家計消費と就業に対して効果的とのことです。財政長官の陳茂波(Paul Chan Mo-po)氏が2022年10月2日のブログで、8月に配布した第一段階の「電子消費券」について、「その130億香港ドルの消費券は、配布した一ヶ月以内に約7割の金額が消費された。その中で、約6割は小売に、約3割は飲食に、約1割はサービス業に使用された」と述べています。また、「この措置のもう一つの目標は電子決済を普及させること。去年措置を初めて実施して以来、6社の電子決済サービスで合計約800万人の消費者と15万を超えるの店舗が新規登録された。電子決済の普及に伴い、ECでの取引額が急成長、今年は8月までで小売業のEC取引額が合計204.5億香港ドルに達し、前年比は約2割増加し、前々年比は7割超えの成長を見せた。合計売上高でのECの割合も去年の5.4%から現時点の9%に成長した」と、香港で日々重要になっている電子決済とECの状況を伝えました。
ESSについて、労働と福利局元局長の羅致光(Law Chi-kwong)氏は2022年3月に、「2020年6月の失業率は6.2%まで上昇した一方給料補助期間である7月~8月の失業率は6.1%~6.3%の間に維持できるのはESSによる『就業安定』効果だ」とコメントしました。
そして2020年11月から発生したコロナ第4波に伴った失業率の再上昇について、「2021年2月の失業率は7.2%に再上昇したが、コロナの状況が若干緩和された3月には既に失業率は減少しつつあり、4月からはさらに急減して、同年12月には3.9%へと、10ヶ月をかけて3.3%下がった。それに対して2003年SARSが香港を襲った時、同年6月の失業率が8.5%、3.3%下げるのに30ヶ月もかかった。2021年のリバウンドはその3倍だ。原因は色々あるが、ESSが大きな要因だと思う」とESSの効果を強調しました。
域外との往来制限の撤廃、防疫対策の見直しになるか
防疫対策の見直しは明言していませんが、香港政府は9月26日よりのホテル隔離措置を撤廃しました。
香港で一番有名なスポーツ大会の一つである香港セブンズは、今年11月にコロナ発生以来初めて開催され、この緩和措置の検証として期待されています。香港ラグビーフットボール協会(HKRFU)CEOのRobbie McRobbie氏は緩和された措置に残っている制限への懸念を表明しています。「スポンサーである国際企業は大会に対して疑念を持っているため、チケットの前売りは2019年の販売数より30%減少している。入境後3日間の自粛期間は大会会場には立入禁止となるため、海外からの観客にとっても不便で、チケットが完売できるかどうかは現時点では言い切れない。」また、350人の選手、コーチ及びメディカルチームは香港に到着後の3日間、会場とホテルとのみの移動に制限されるかはまだ確定していません。
現時点では、入境措置の緩和による最大の受益者は観光業界の経営者です。Sunflower Travel Serviceの次長はこの措置に対して「観光業界にとって非常に前向きの措置」だと評価しています。「緩和措置が発表された金曜日から、毎日300超えの問い合わせが届いている。主な客はこの3年以来初めて海外旅行を予定する香港居住者だ。」他の業界にとって、今回の緩和措置はいい影響と悪い影響の半分ずつのようです。緩和措置が発表後初めてとなる週末に、飲食グループのBlack Sheep Restaurants社の香港にある約40軒のレストランの売上が減少しました。グループの合同創業者であるSyed Asim Hussain氏によると、香港居住者はみんな香港から海外旅行に出ていることが原因です。「だが、残っている規制は観光客を香港に呼び寄せるのに魅力的ではない。香港政府に苦情を送るつもりだ。」
全体的に、この緩和措置は香港の経済と国際金融ハブの地位を維持するのにとって重要な一歩だと、S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)アジア首席経済学者のLouis Kuijs氏がコメントしています。「国際的連結性において他の都市と競争するのに、入境措置の緩和は香港を公平な競争環境に立たせる事ができる。しかし、個人とビジネスの反応も航空会社の便数調整も時間が経てば叶うだろうが、近年香港から離れた人々やイベントは戻ってこないかもしれない。」
香港の優位性やビジネス環境維持が不安
入境措置は緩和されたのですが、香港の独特の優位性とビジネス環境を構成するもう一つの要因――政治的な状況への評価は未だに分かれています。S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)アジア首席経済学者のLouis Kuijs氏の意見では、中国がゼロコロナ政策を維持するのに香港がそこから一歩抜け出せることは、「一国両制」での「両制」を強化でき、後日粤港澳大湾区(大湾区)の発展で香港の特色を発揮できます。
一方、2022年9月ニューヨーク・タイムズの記事では、今回の措置緩和が中国中央政府の許可を得た上で実施できた事実で、人々が香港の自治権喪失への懸念が強まってしまったとの意見です。「コロナ発生の前でも、香港で数ヶ月間も続いた大規模民主化デモへの参加で多くの市民が逮捕もしくは追い出され、団体や組織が活動中止され、香港での不可逆変化が既に進んでしまっている。」その上、コロナへの対応では前任の香港政府は中国の厳しいゼロコロナ対策を採用したり放棄したり、一貫していない行動を見せたことで、香港居住者の間では恐慌感が生まれ、香港在住の外国人を始め、多くの人は香港から離れることを選択しました。「香港の国際的名声は既に徹底的に破壊されている」と、香港で長い間コーポレート・ガバナンスを勤めていたDavid Webb氏がニューヨーク・タイムズの記事で指摘しました。
全体的に見ると、香港が金融・ビジネス・航空などの面で国際的なハブとしての地位が維持できるかどうかは中国と香港政府の方向性に深く依存しているため予測することが難しいですが、コロナ関連の制限はパンデミックの風土病化に伴い、続々と解除されていくに違いありません。店舗の賃料低下を機に新しく展開しているビジネスも不況でありながら現れ続けており、景気に顕著な回復が見られるまで香港政府が経済対策の実施で企業と民間を支え続ければ、香港の経済も徐々に修復するでしょう。
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ポストコロナ時代の香港の現状!経済とビジネス環境の修復に向けて
米中対立やコロナの世界的感染拡大、香港国家安全維持法の施行など、香港のビジネス環境が大きく変化しています。特に世界で多くの国が既に「ウィズコロナ」政策へ転換する一方、中国は依然「ゼロコロナ」政策を堅持し、香港は長い間板挟みの状態が続いてきました。
2022年7月に発足した香港の新政権は、3年弱続いてきたホテル隔離の政策を9月下旬より撤廃し、コロナ関連措置のさらなる緩和が期待でき、ビジネス環境と経済が改善されると見込まれています。
在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所と香港日本人商工会議所の3組織は在香港の日本企業等が直面するビジネス環境を把握するために調査を実施しました。今回の調査は在香港の日本企業を対象に2022年7月に実施され、有効回答数は295社(うち非製造業265社、製造業30社)となります。
今回の記事では、この調査結果による在香港日本企業の22年下半期への展望に基づき、現時点で改善されつつある香港のビジネス環境の現状をお伝えします。
22年上半期悪化傾向の業績、下半期に改善を見込む
22年1~6月の業績が21年7~12月期(前期)と比較して「悪化」または「大幅悪化」と回答した企業の割合は上昇し、35.6%(前期:19.1%)となりました。
業績の変化理由について、特に影響が大きかった要因は「新型コロナウイルス」関連(71.6%)が中国の景気動向(11.5%)や米中対立(2.9%)より遥かに高く、景気回復がパンデミックの状況に深く関わっていることがわかりました。
パンデミック状況の緩和につれ、22年7~12月期の業績見通しに「改善」と回答した企業の割合は前期(18.9%)から14.5ポイント上昇し、33.4%となっています。特に非製造業の情報・通信・メディア・広告(50.0%)、飲食・小売(66.7%)、運輸・倉庫(44.8%)で「改善」の回答割合が20ポイント以上改善と顕著に好転しました。
業績が変化する理由として、「改善見通し」と回答した企業の半分(51.6%)は「香港市場での売上増加」と見込んでいる一方、「悪化見通し」と回答した企業の45.5%は「中国本土への輸出低迷による売上減少」を主な理由としています。
ゼロコロナ政策によるマイナスの影響
未だに中国で実施されているゼロコロナ政策は、ビジネスに大きな打撃をもたらしています。
84.1% の回答企業が「マイナスの影響が生じている」と回答し、自由記述欄での回答のうち、約半数が「往来の制限による事業活動への支障」、「物流の停滞による出荷および仕入れの遅延・コスト増加」と「インバウンド客の減少などによる需要や売上への影響」が各々約2割を占めています。
ヨーロッパのシンクタンクBruegel社によると、香港政府が施行した厳格なソーシャルディスタンス規制が各業界と香港の経済に直接且つ幅広い影響を与え、香港の2022年第1四半期のGDPは前年比4%減少しました。3月のデータではPMIが42に減少し、香港域内も対外貿易も厳しすぎる入境措置により大きく影響を受けました。同期の経済状況について、香港浸会大学ジャーナリズム学系の元アシスタントプロフェッサー、杜耀明(To Yiu Ming)氏は「個人消費(5%減)、設備投資(8%減)と輸出(4.5%減)が特にひどい。3月の小売売上高が13.8%も減少した上、飲食業界の収益は記録上最低となり、景気回復のために社会は一刻も早くこの非常事態から回復しなければならない」と指摘しました。
コロナ規制を依然緩和しない香港に対し、国際航空運送協会(IATA)事務局長のWillie Walsh氏が9月21日に「中国のゼロコロナ政策によって香港は国際ハブ空港としての地位を既に失った」と非難しました。一方、ロイヤル・カリビアン・クルーズが香港での業務をシンガポールへ移転するとの報道を受け、香港観光業議会(TICHK)会長の徐王美倫(Gianna Hsu)氏が「今後2年間香港に泊まるクルーズ客船はなくなるだろう。母港としての地位が危うい」と警告しています。
香港のビジネス環境への評価
1年前と比較した香港でのビジネスのしやすさについて、23.4%の企業が「悪化した」(21.4%)または「大きく悪化した」(2.0%)と回答し、項目別で見ると、「人材の確保」と「事業コスト」で「悪化した」または「大きく悪化した」と回答した企業がそれぞれ43.5%と35.7%となっています。また、自由記述欄で記入された具体的な「人材の確保」への悪化影響で、「人材の移住に伴う流出」との回答が大半を占めました。
香港の人口・人材流出が深刻に
実際、人材の流出はこの数ヶ月進んでおり、香港政府統計処(C&SD)が2022年第2四半期に発表した「年齢別の労働人口(Labour force by age and sex (excluding foreign domestic helpers))」のデータによると、香港の労働人口は全体で375.02万人、前年同期比で3.49%減少しています。20~49歳の6グループは全部マイナスになっており、特に20~24歳のグループは14.98%減という深刻な状況になっています。ブラックロックなどの大手グローバル投資企業が会員である香港投資基金公会(HKIFA)が最近行った調査の結果で、3割超の企業が区域やグローバルの執行役を一部もしくは全部香港から移転したと発表しました。香港の労働力は過去10年最低レベルになり、「今年末まで香港の経済はリセッションのままになるだろう」と香港の財政長官も警告しています。
コロナ関連を除き、香港の人材流出に影を落としている他の要因
人材流出の問題は、コロナ関連の各規制と影響以外に、愛国教育が推進される子女の教育環境、香港の高コスト構造など複合的な要因があります。
その中で各業界でも注目されているのは2020年6月より実施されている香港国家安全維持法(国安法)です。調査結果では41.1%の回答企業が、国安法について「大いに懸念している」(7.8%)または「懸念している」(33.3%)と回答しました。法への懸念理由の2~4位(情報に制限がかかる恐れがあるから(56.2%)、中国政府の干渉が増えて香港の自治が弱まる恐れがあるから(47.9%)、香港の「法の支配」「司法の独立」が失われる恐れがあるから(47.1%))を見ると、どれも香港が従来享受してきた「自由」の喪失への懸念で、最も懸念されている「人材が流出し、優秀な人材の確保が困難(68.6%)」という結果へと繋がっています。
実際、香港の変わり続ける政治的な雰囲気は人々に影を落としています。政府が去年発表した課程のガイドラインでは、「中国・中国のリーダー・中央政府に対する忠誠」が強調され、社会で「国安法が学校の課程にマイナスの影響を与えてしまうのは時間の問題だ」という声が増えて特に国際学校では人員補充が困難になっています。
また、国安法の適用範囲が幅広く、その不安定さでニューヨーク・タイムズを含めたマスコミ企業やNGOが2020年から続々と東京やソウルなどのアジア都市へ人員を移転しています。
では、様々な課題に今年7月に発足した香港の新政権はどうやって取り組んでいるか、経済の景気回復に繋がるコロナ政策から生み出した問題は解決されていくかについて、次回の記事でご紹介します。
アジアハブへの飲食進出をお考えの方へ!ポストコロナにおける香港とシンガポールの飲食業の発展
コロナウィルスにより世界の経済は大きな影響を受けました。特に飲食業はコロナ規制の影響で、従来の店内飲食からテイクアウトに変更せざるを得なくなりました。
欧米を始め、ウィズコロナに取り込む国は続々と増えています。比較的早くウィズコロナに舵を取ったシンガポールに対し、香港は中国の政策であるゼロコロナの方針を貫いてきましたが、近頃ではコロナ規制も入境措置も緩和されるようになってきており、飲食業の店内飲食は徐々に回復しています。
今回の記事では、今後の飲食業復活の為に知っておくべき、香港とシンガポールの飲食店舗の発展の違いについてご紹介します。
土地不足がネックになる香港
様々なコロナ制限のもとで、香港の飲食業は特に不況です。近頃はコロナの感染状況が落ち着き、コロナ規制も少しずつ緩和されていますが、以前のような盛況にはまだまだほど遠い状況です。
パンデミックは飲食業の運営環境を変えました。例えば換気量やテーブル間の距離など、政府側も客側もレストランへの要求が大きく変わり、レストランの運営費用に負担がかかっています。
香港の居住者も観光客も誰しもが経験したことがありますが、香港の繁華街で美味しい軽食を買っても、食べる場所を探すのが苦労します。不動産価格が高いの香港で飲食業を経営するには、賃料が最も重い負担となります。
例えば、約100平方フィートの路面店である軽食店の場合、賃料はその収入の30~40%を占めているのが一般的です。従来では、集客のために数席だけ設けている小型店舗もありますが、コロナ規制に合わせるために通常以上の人手と空間が必要になり、一部の店舗は店内飲食の運営を諦めざるを得なくなりました。一方、客もテイクアウト、もしくは通路で慌てて飲食を済ませることしかできなくなり、自炊を選ぶ人も少なくありません。
賃料の他、人件費、食材や包装などの運営費用が高額で、売上総利益率は一般的に1桁しか残りません。収入ゼロでも賃料は支払わなければならない香港の飲食業界に対し、香港政府は補助金などいくつかの支援策を講じましたが、どれも一時的なものに過ぎません。
香港での飲食店運営にとって、根本的な問題は香港の土地の少なさです。香港でレストランを運営するために、調理技術はもちろん、「風火水電(換気・消防・給水と排水・給電)」を始めとした物件関係の知識から内装と土地売買契約への認識も欠かせません。不動産価格の高いの香港で、一人でも多くの客をもてなすために店舗の狭い空間を活用すべく、2人しか座れないボックス席に「繁忙時間は4人席となります」という標識があるのも香港のレストラン特有といえるでしょう。香港レストランでの消費額は、おそらく大半は食材ではなく賃料と店舗内装に持っていかれてしまっています。困難な運営環境は飲食業の経営者のみならず、美食が目的の客にとっても良いことがありません。
飲食業が一部計画されているシンガポール
シンガポールの人口は香港の4分の3で、面積は香港の約3分の2となっていますが、飲食業の運営環境は全く異なります。シンガポールで食事をする時に、席に困ることはほぼありません。シンガポール政府は市民の飲食店への需要を気にかけており、市民の負担可能な範囲内で料理の選択が確保できるよう、政府のHousing Development Board(HDB)は各区の公営住宅にフードセンターが備えられています。現在、シンガポールでは772ヶ所のフードセンターがあり、うち372ヶ所はHDBの貸し出しで、その他は民間所有のものです。
2018年、HDBはフードセンターの経営者選別において、賃料とクオリティ両方を重視する選別基準を導入しました。入札を通じて経営者がつける金額で評価するのみでなく、料理のクオリティと過去の業績も評価項目となります。フードセンターの経営者がそのサービスと設備を積極的に改善することを支援するため、シンガポール政府は賃貸規制を実行していません。その上、屋台を数多く収容できるフードセンター内では、屋台同士の競争によりコスパの高い飲食サービスを提供できるようになります。シンガポールの屋台は半分が民間所有であり、自由市場の主導する運営環境で顧客を獲得するために、屋台の経営者が手を尽くして良質なグルメを提供しています。近年では屋台不動産の個人投資家がF&B Techや不動産テックに関わる屋台不動産の付加価値に注目しており、産業チェーンの活性化に貢献しています。
屋台の経営を効率化するため、フードセンターの経営者は「屋外エリア使用許可(Licence Agreement for Outdoor Refreshment Area)」にサインすることにより、安い賃料でHDBから屋外エリアを借りることができ、客により広い飲食エリアを提供できます。このエリアは香港のフードコートのように共用可能で、同じ席で複数の屋台の料理を楽しめます。なお、屋外エリアでの飲食は換気がよくコロナ対策にもなっており、飲食店のコロナによる経済的影響が軽減される要因にもなっています。
HDBのフードセンターの他、シンガポールの飲食業界はレストラン、ファーストフード店とフードデリバリーにより構成されています。シンガポール統計局による2022年7月の売上データから見ると、レストランは前年比76.8%増加、ファーストフード店は11.5%増加、フードセンターは22.1%増加、フードデリバリープラットフォームの売上は前年比133%も成長しました。「民は食をもって天となす」、家族と友人との食事は元から人情で生活の欠かせない一部のため、ソーシャルディスタンス措置の緩和をきっかけに、飲食業界の業績は直ちにリバウンドしました。
シンガポールの飲食業は徐々にパンデミックの影響から回復しておりますが、自由市場が主導する香港では、飲食業経営者がポストコロナのビジネス環境への適応やインフレーションの克服などが業界淘汰の基準になるでしょう。香港市場での強化に専念すること以外、香港で実績を上げたブランドをさらに中国、もしくはシンガポールへ拡大するのことも効率的な選択になるかもしれません。
MAYプランニングでは、香港市場・シンガポール市場への進出に関わるサポートを行っています。現地市場へのアプローチアドバイスやプロモーションなどマーケティングソリューションを提供しております。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
ビジネスでの業務自動化とデジタル化の現状
ビジネスを自動化することで業務効率を飛躍的に向上させることができます。従来はITチームに限られていた話ですが、現在では企業のビジネス全体が自動化されていくトレンドが起こっています。企業自動化プラットフォームのWorkato社が発表したレポートによると、業務プロセスの自動化を導入し始めた部署は多様化しており、その中でも財務部門がIT部門を超えて一番自動化が進んでいる部署になっているようです。
今回の記事では、コロナ禍で加速している、企業の業務自動化とデジタル化の現状についてご紹介します。
66%の企業は5つ以上の部門が自動化導入
Workato社は2021年2月から2022年1月までの間に、世界で900社の中小企業を対象に、自動化ソフト、一番自動化されているプロセスや自動化作業に連係する役職などについて調査しました。
ローコード開発プラットフォームのアクセシビリティと使いやすさで、企業の自動化導入率が去年(2021年)急増したことが調査結果からわかります。66%の企業は5つ以上の部門が自動化されており、7つの部門が自動化されている企業数は2019年と比べて倍増しました。
一方、自動化プロセスを採択する非技術スタッフの増加は顕著です。2020年には、大部分の企業では1つか2つの部門しか自動化されていませんでしたが、2021年を始め、ビジネスの自動化は1,074%成長し、カスタマーサービスの自動化サポートは666%、財務の自動化は659%成長しました。その中で、財務部はIT部門を超えて自動化率最大の部門になっており、自動化プロセス全体の26%を占めています。
各企業での自動化状況を追跡するために区域のデータを分析する際、Workato社はヨーロッパ、中東とアフリカでの洞察・分析するための自動化率が昨年比403%成長したことを発見しました。APAC区域では、財務の自動化の方が発展しており、仕入れから支払いまでのプロセスが514%、記録から報告までのプロセスが569%成長しました。
自動化の実行とセキュリティホール管理の強化
企業が書類をクラウドにアップロードし、デジタル化した管理を実現することで、業務の効率化ができ、保管費用と捜索時間を節約することもできます。しかし、アメリカのForrester Research社が世界268人のITマネージャーに行った調査によると、63%の回答者が企業の基礎設備が不足しているとし、特にデジタル化の作業を行うのが困難だそうです。58%はクラウドコンピューティングなど企業のIT基礎設備不足はネットワークセキュリティにさらなる危険をもたらすのみでなく、より多くの運営費用が生じ、イノベーション能力を制限してしまう可能性があるとの意見です。
Forrester Research社の意見では、IT基礎設備の自動化への需要増加に伴い、企業は自身の弱点を分析し、その弱点がどのようにビジネスの発展と社員の能力発揮に影響するのかを理解しなければなりません。基礎設備が完全に自動化を実行できる際に、セキュリティホールの管理が強化でき、業務でのリスクを回避できます。
IT基礎設備での自動化は開発者の効率と生産力を高め、納品時間を改善できます。レポートによると、約60%のITマネージャーが基礎設備を利用し、納品時間、システムのサービスレベルとソフトのリリースライフサイクルでKPIを追跡しています。46%の回答者は、所属企業はさらなる高い運営効率を求め、自動化した基礎設備を利用していると回答しました。
データはデジタル化での「石油」、企業にさらなる価値をもたらす
コロナの影響で、多くの企業は運営パターンと最新テクノロジーの連係を見直し、業務デジタル化のペースを上げています。業務デジタル化の戦略を決める際には、クラウドコンピューティングとデータの応用が大切です。
新興企業のみでなく、金融機関、保険業界や小売業界などでの伝統企業もテクノロジーを積極的に利用するようになっており、多様なデジタル製品や業務を開発して競争力を高めています。Oracle社の香港・台湾地区副総裁のPatrick Lo氏は、その中でのデータは現代社会での「石油」だと述べており、例えば業務の改善方向を詳しく分析して長期の運営方針に役立ち、データは企業にとって重大な価値があるとコメントしています。そのため、データセンターやオンラインストレージを選ぶ際に、ストレージサービスプロバイダの合法性やデータセキュリティの保障について気を付けなければなりません。
現状では、多くのテクノロジーサービスはクラウドコンピューティングを利用しています。そのメリットは地域の制限がなく、オフショアのデータセンターでもオンショアのと同じく遅延を最大限に減少することやデータセキュリティの保障などができ、データの紛失や業務の中断を回避できます。
ビッグデータを適切に拾い上げて分析することは企業の競争力を有効に高めることができます。近年の消費者は情報プライバシーへの関心が高く、その需要に対し、様々な対応策があります。例えばセンシティブ情報の収集を回避すること、データを暗号化すること、名前やID番号などの個人情報を使用しないデータマスキングを導入することなど、適切な情報のみ収集することは消費者の信頼に繋がります。
現在の市場ではAIや機械学習などのデータ分析技術がトレンドになっていますが、Patrick Lo氏は多くの企業ではデータ処理戦略の整合性が不足だと述べています。
デジタル化戦略は運営に役立ち、企業の手足だといえば、データの運用や分析は企業の脳のようです。しかし、多くの企業はITのプロジェクトを実行する際に、「脳」の重要性を見落としがちです。例えばプロジェクトがどのようなデータを入手できるか、そのデータの価値や業務改善に役立つデータモデルの分析など、データは企業に様々なメリットをもたらします。
コロナの影響は中小企業が真っ先に大きく影響されますが、デジタル化改革に必要な資源も膨大で、多くの中小企業はその規模や資源に限られて最先端の技術に触れることが難しいです。
企業デジタル化の専門家は中小企業のデジタル化改革方向性について下記の3つのアドバイスを挙げています:
1. SaaSなどのクラウドコンピューティングを採用し、開発時間、資金や人的資源を節減し、より柔軟にビジネスを展開する
2. 業務改善の方針を分析するために、ITプロジェクトから生じたデータを有効に運用すべき
3. データの保存や整合にOSIを採用する
クラウドコンピューティングが日々新しくなり、中小企業のビジネスに新しいテクノロジー革命が今起きています。「一気にビジネス全体ではなく、小規模のプロジェクトからデジタル化改革を始めても、すぐ効果が感じられるだろう」とPatrick Lo氏は話しています。
MAYプランニングでは、業務の自動化とデジタル化、ITソリューションの提案と導入や実務サポートに関わるコンサルティングなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
注目!コロナ禍で自動化技術関連製品や家電に商機
香港のスマートホームアクセサリー(IoT家電)は新製品の発表とコロナでの在宅増加傾向により、家電のデジタル化需要が増え、セールスも急増しています。調色可能の電球に変えたいという市民もいれば、平均の消費金額が30%弱増えたという店舗もあります。
一方、同じくパンデミックの影響で抗ウイルス・殺菌技術への需要が増え、香港のスタートアップとの連携で技術と製品の可能性を最大化している企業もあります。
今回の記事では、コロナ禍で需要が高まっている自動化技術関連製品について、市場の現状と企業の実例をいくつかご紹介します。
普及し始めているIoT家電
4年前からMeross社のスマートIoT家電を入荷しているSynergy Tech(HK)社の製品経理Evan氏によると、近年ではApple社のHomekit製品の普及により、IoT家電の売上が伸び、市場にも様々な新製品が発表されています。例えばスマートコンセントは当初ペットの魚用の水槽向けのものでしたが、現在では一般家庭や身体不自由者などにも広く使われており、最近ではスマートロック、スマートコンセントとスマートスイッチも大人気になっています。コロナで人々の在宅増加はIoT家電のセールスを更に加速していますが、ウェハの供給不足の影響で全体的な売上予測は困難とのことです。しかし、Synergy Tech(HK)社のデータでは平均の消費金額が30%弱増加しており、パートナー企業の売上も好調です。
MOMAXの創業者とCEO鄭冬生(John Cheng)氏によると、2年前にIoT家電を発表し始めてから、コロナで人々の外出が減少し、買い物もオンラインショッピングが全体売上の約20%を占めており、コロナ対策のスマート製品の売上も連動して増加しました。製品の中でスマート空気清浄機シリーズが特に人気で、住宅以外にも、飲食店、コロナ対策の指定タクシー、養護施設、隔離ホテルなどに利用されています。John Cheng氏は8月に配布される予定の消費券に対応する支払い方法の増加が売上を伸ばすと見込み、オンラインショップでプロモーションをする予定とのことです。
スマートホームセキュリティ製品への問い合わせが増加
HKT社のHKT Home取締役蔡煒健(Derek Choi)氏が、IoT家電の技術が成熟し価格が安くなっていることから、中小型住宅用IoT家電への問い合わせが増えているとコメントしました。中でもスマートフォンでの操作性についての問い合わせが一番多く、最近ではIoT家電を含めたセキュリティソリューションについての問い合わせも増加しているとのことです。Derek Choi氏によると、HKT smart livingは170件以上の住宅プロジェクトにIoT家電のソリューションを提供しており、中でも新住宅とリフォームでのソリューションについての問い合わせが共に増加しています。
Everbest Technologies Ltd社の製品経理Esther氏は、「弊社は4年前からLifeSmartのIoT家電ソリューションを提供し、始めの頃はワイヤレスで操作可能なIoT家電に装飾性を求める客が大部分だったが、近年ではスマートカーテンやスマート照明など実用性の高い製品の需要が高くなっている」と述べています。
IoT家電トレンドで成功に実体験の必要性
将来のIoT家電トレンドに向けて、各企業はそれぞれのプロモーション戦略を持っています。
Synergy Tech(HK)社は製品の独特性と市場のトレンドに注目し、非政府組織(NGO)と連携し身体不自由者の需要を解決するなど自ら製品への需要を創造していくのが成功するコツだと話しています。MOMAX社はライブ販売などネットでの宣伝を増加し、消費者に自社の製品を無料で試用してもらう予定で、HKT社のHKT HomeはSNSで宣伝し、ショッピングモールでサンプルルームを設置して消費者に自社製品の効果を実体験してもらう方向です。Everbest Technologies Ltd社は展示即売会、ECショップでの販売や実例映像を通じて宣伝する方針です。
香港のスタートアップとの連携で製品の可能性を最大化する
紫外線の除菌技術は水処理施設などでの産業用途がメインでしたが、コロナの流行で「人が生活する空間」向けの新しい市場が生まれ、光応用製品専門のウシオ電機社が開発した、人体に無害な波長の紫外線を使った抗ウイルス・殺菌技術「Care222」の製品への問い合わせが突如殺到し、開発・量産計画が2020年から一気に加速しました。
室内に設置すれば即使用可能な小型のCare222ユニットは日本で約6,000台の販売実績があり、医療施設や商業施設、高齢者施設を中心に、欧米や中国でも導入実績が出始めています。
香港分社のUSHIO HONG KONG LTD.社は香港地元のスタートアップ、2018年設立のスタートアップECOBAY TECHNOLOGIES LIMITED社と連携し、香港市場向けの製品を開発しています。ECOBAY社の技術的なバックグラウンドやスタートアップならではのスピード感が決め手で、昨年の4月頃から協業を始めたとのことです。
世界初の空港採用、香港政府からも高い関心
ECOBAY社との提携と前後して、香港空港管理局(AAHK)からUSHIO HONG KONG社への問い合わせが入って、空港からコロナウイルスが市中への流入を防ぐために「Care222を全面的に導入したい」という内容でした。ECOBAY社も交えた協議を重ねた結果、1台目の手荷物カート用の殺菌設備が今年4月に香港国際空港に納入され、ウシオ電機社にとっては世界初の空港へのCare222納入となりました。
現在はカート用設備の追加のみでなく、エリア・用途の殺菌設備の導入も提案中とのことで、今回の実績を皮切りにアジアのその他の空港への納入も視野に入れる方向になっています。
香港では空港以外にも、幼稚園や病院、ショッピングモールにCare222製品の導入実績があり、中国の方針に沿って厳しいコロナ対策を実施している香港政府もCare222に高い関心を示しています。政府ビルのエレベーターでは、開閉ボタンなどにウイルスを塗布してCare222の効果を検証する試験を実施し、エレベーターや政府機関内の立ち入り制限区域などで導入する検討が進んでいるとのことです。
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経験談あり!香港教育、香港人従業員の特徴と採用事情
前回の記事で、香港の教育システムと学歴資格体制についてご紹介しました。
学歴以外に、教育の特徴も人の習慣や態度に影響し、仕事にも関わっています。今回の記事では、香港教育の特徴に関わる香港人従業員の特徴、及び香港での採用事情について、筆者自身の経験を例に付けてご紹介したいと思います。
香港小中学校教育の特徴に関わる香港人従業員の特徴
・国際的な物事の見方、優れた多国語力
国際都市であるゆえ、香港の学生は比較的国際的なものの見方が育てられています。言語も広東語(世界でよく使われている言語17位)、英語(1位)、中国語(2位)の3つが使えるのが一般的です。それに加えて、日本語、韓国語、フランス語などの外国語の課程を提供している機関もたくさんあり、それらの言語が使える香港人は少なくないです。
英語がメインの公用語であるシンガポールに比べると劣りますが、一部(114校)の香港中学は国語や中国歴史は除く全教科を英語で教育しており、EF Education Firstの調査によると香港人の英語力はアジアで4位となっております。
・能力重視
香港の教育は日本のに似ておりよく「詰め込み教育」だと言われていますが、日本とは大きく異なり、香港は義務教育中であっても進級できるレベルに達していない場合は留年になります。反対に、極めて珍しいのですが、優秀であれば飛び級をすることもあります。学校でのクラスも成績の優秀な順に分けられる場合が多く、香港教育の「能力重視」と「エリート教育」の一面が見えます。
仕事面でも、自分の能力に見合った待遇のために積極的に交渉する従業員が多く、年功序列が伝統である日本企業にとってはアグレッシブに見えるかもしれません。
・行事よりは仕事
日本の学校は、入学式、卒業式や運動会、文化祭など一年を通して多くの行事があり、全員で取り組むことでチーム力や企画力などを育む機会となります。香港の小中学校でも入学式、卒業式、運動会や遠足など一応ありますが、やはり成績重視になっているので、雰囲気的に運動会以外はあまり重視されておらず、行事は事務的に行っている感じが強いです。学生も殆どは行事にあまり関心を持っておらず、筆者の学生時代には行事が学習・休憩に対して邪魔だと思う学生までいました。
実際筆者が務めていた香港系の小型企業でもクリスマスパーティーが行われていましたが、殆どの社員はそこまで熱心ではありませんでした。
・効率重視、タイトなスケジュール
香港の小中学校ではよく「生徒全員楽器を習う」など音楽や体育などへの強制的な課外活動方針が実施されており、学力向上のために学生たちはよく放課後に様々な塾に通い、また、中学には学生たちが主導するクラブ活動があり、学習時間以外も香港の小中学生たちの生活は大忙しです。それが高等教育の段階に入り、人生一大事の統一テストもなく強制的な課外活動方針もなくなり、やっとアルバイトや遊ぶ時間を確保できます。詰めすぎたスケジュールはストレスの要因の一つですが、それに慣れた香港人は効率重視で、卒業後でも勤務時間でもプライベート時間でもついスケジュールを詰めてしまいます。
香港での採用について
香港の従業員の中では、「魚唔過塘唔肥(魚は別の池に移してこそ太くなれる)」ということわざがあり、よりいい仕事環境や待遇を求めるには転職しかないと強く信じている人が多数で、終身雇用が伝統である日本とは違って香港の職場では転職はごく普通なことです。
ここでは香港従業員が仕事における最重視している要素について最新情報をお伝えします。
Randstad社の委託を受けたKantar TNS社が2022年1月に3,027人の香港従業員をインタビューし、従業員や求職者が新しい仕事を探すのに重視している要素について調査しました。
結果、2022年になって香港の従業員が仕事における一番魅力的に感じる要素は「ワーク・ライフ・バランス」(60.4%)で、初めて2位の「給与と福利厚生」(60.2%)を超えました。3位から順に「企業の財務健全性」(49%)、「雇用保障」(48%)と「楽しい仕事環境」(44%)。
また、18~34歳の78%が「雇い主が提供するスキルアップ研修」を重視していると回答し、58%は「個人のキャリアパス」をとても重視していると回答しました。Randstad社香港区総監のBenjamin Elms氏が、「香港の従業員は魅力的な企業や頼れる雇い主にキャリアパスの発展やスキルアップの機会を求めている。優秀な人材を確保するために、企業は従業員が仕事で達成感を得られるように見直しを続けるべき」とコメントしました。
言語力が優れている香港人材にとって、日系を含めた外資系企業は人気なのでしょうか。
香港青年協会青年研究中心(YRC, HKFYG)が創立した「青年創研庫(Youth I.D.E.A.S.)」が2021年6月に18~34歳の青年520人にインタビューした結果、60%以上の回答者が企業の背景について好みがあると回答しました。2019年に発生したデモで若年層に政府や中国系の企業への不信を募らせたためか、政府系(6.3%)と中国系(5%)企業に対し、香港系と外資系(日系を含む)企業の好む確率は比較的高く、26.9%と20.4%となっています。
また、求人プラットフォームについて、シンガポールでは官営の求人サイトが信頼されており若い利用者も多数いますが、香港ではその逆で、年長であるほど労工処で求人広告を探し、または官営の求人サイト「iES」を利用します。若年層はJobsDBなどの民営求人サイトを通じて求人先に直接応募するか、企業に在籍している知り合いに紹介してもらうのが一般的です。
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