コロナ政策と経済における問題、香港新政権の発足を機に解決されていくか
在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所と香港日本人商工会議所の3組織は在香港の日本企業等が直面するビジネス環境を把握するために実施された調査の結果によると、2022年7月に発足した香港の新政権に「域外(特に中国本土・日本)との往来制限の早期撤廃」や「防疫対策の見直し」を期待している企業が7割を占めており、「物流の正常化」「雇用補助金の継続」など経済対策も要望されています。中長期的には、香港の優位性やビジネス環境維持、そして大湾区(GBA)や深センと接する元朗区と北区を中心とした「北部都会区(Northern Metropolis)」など更なる経済開発を望む意見もありました。
今回の記事では、調査で記述された各要望の実現状況についてご紹介します。
経済対策の効果
ヨーロッパのシンクタンクBruegel社の意見では、特に電子決済を普及させた「電子消費券」と給与補助金の「保就業計画(ESS)」が家計消費と就業に対して効果的とのことです。財政長官の陳茂波(Paul Chan Mo-po)氏が2022年10月2日のブログで、8月に配布した第一段階の「電子消費券」について、「その130億香港ドルの消費券は、配布した一ヶ月以内に約7割の金額が消費された。その中で、約6割は小売に、約3割は飲食に、約1割はサービス業に使用された」と述べています。また、「この措置のもう一つの目標は電子決済を普及させること。去年措置を初めて実施して以来、6社の電子決済サービスで合計約800万人の消費者と15万を超えるの店舗が新規登録された。電子決済の普及に伴い、ECでの取引額が急成長、今年は8月までで小売業のEC取引額が合計204.5億香港ドルに達し、前年比は約2割増加し、前々年比は7割超えの成長を見せた。合計売上高でのECの割合も去年の5.4%から現時点の9%に成長した」と、香港で日々重要になっている電子決済とECの状況を伝えました。
ESSについて、労働と福利局元局長の羅致光(Law Chi-kwong)氏は2022年3月に、「2020年6月の失業率は6.2%まで上昇した一方給料補助期間である7月~8月の失業率は6.1%~6.3%の間に維持できるのはESSによる『就業安定』効果だ」とコメントしました。
そして2020年11月から発生したコロナ第4波に伴った失業率の再上昇について、「2021年2月の失業率は7.2%に再上昇したが、コロナの状況が若干緩和された3月には既に失業率は減少しつつあり、4月からはさらに急減して、同年12月には3.9%へと、10ヶ月をかけて3.3%下がった。それに対して2003年SARSが香港を襲った時、同年6月の失業率が8.5%、3.3%下げるのに30ヶ月もかかった。2021年のリバウンドはその3倍だ。原因は色々あるが、ESSが大きな要因だと思う」とESSの効果を強調しました。
域外との往来制限の撤廃、防疫対策の見直しになるか
防疫対策の見直しは明言していませんが、香港政府は9月26日よりのホテル隔離措置を撤廃しました。
香港で一番有名なスポーツ大会の一つである香港セブンズは、今年11月にコロナ発生以来初めて開催され、この緩和措置の検証として期待されています。香港ラグビーフットボール協会(HKRFU)CEOのRobbie McRobbie氏は緩和された措置に残っている制限への懸念を表明しています。「スポンサーである国際企業は大会に対して疑念を持っているため、チケットの前売りは2019年の販売数より30%減少している。入境後3日間の自粛期間は大会会場には立入禁止となるため、海外からの観客にとっても不便で、チケットが完売できるかどうかは現時点では言い切れない。」また、350人の選手、コーチ及びメディカルチームは香港に到着後の3日間、会場とホテルとのみの移動に制限されるかはまだ確定していません。
現時点では、入境措置の緩和による最大の受益者は観光業界の経営者です。Sunflower Travel Serviceの次長はこの措置に対して「観光業界にとって非常に前向きの措置」だと評価しています。「緩和措置が発表された金曜日から、毎日300超えの問い合わせが届いている。主な客はこの3年以来初めて海外旅行を予定する香港居住者だ。」他の業界にとって、今回の緩和措置はいい影響と悪い影響の半分ずつのようです。緩和措置が発表後初めてとなる週末に、飲食グループのBlack Sheep Restaurants社の香港にある約40軒のレストランの売上が減少しました。グループの合同創業者であるSyed Asim Hussain氏によると、香港居住者はみんな香港から海外旅行に出ていることが原因です。「だが、残っている規制は観光客を香港に呼び寄せるのに魅力的ではない。香港政府に苦情を送るつもりだ。」
全体的に、この緩和措置は香港の経済と国際金融ハブの地位を維持するのにとって重要な一歩だと、S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)アジア首席経済学者のLouis Kuijs氏がコメントしています。「国際的連結性において他の都市と競争するのに、入境措置の緩和は香港を公平な競争環境に立たせる事ができる。しかし、個人とビジネスの反応も航空会社の便数調整も時間が経てば叶うだろうが、近年香港から離れた人々やイベントは戻ってこないかもしれない。」
香港の優位性やビジネス環境維持が不安
入境措置は緩和されたのですが、香港の独特の優位性とビジネス環境を構成するもう一つの要因――政治的な状況への評価は未だに分かれています。S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)アジア首席経済学者のLouis Kuijs氏の意見では、中国がゼロコロナ政策を維持するのに香港がそこから一歩抜け出せることは、「一国両制」での「両制」を強化でき、後日粤港澳大湾区(大湾区)の発展で香港の特色を発揮できます。
一方、2022年9月ニューヨーク・タイムズの記事では、今回の措置緩和が中国中央政府の許可を得た上で実施できた事実で、人々が香港の自治権喪失への懸念が強まってしまったとの意見です。「コロナ発生の前でも、香港で数ヶ月間も続いた大規模民主化デモへの参加で多くの市民が逮捕もしくは追い出され、団体や組織が活動中止され、香港での不可逆変化が既に進んでしまっている。」その上、コロナへの対応では前任の香港政府は中国の厳しいゼロコロナ対策を採用したり放棄したり、一貫していない行動を見せたことで、香港居住者の間では恐慌感が生まれ、香港在住の外国人を始め、多くの人は香港から離れることを選択しました。「香港の国際的名声は既に徹底的に破壊されている」と、香港で長い間コーポレート・ガバナンスを勤めていたDavid Webb氏がニューヨーク・タイムズの記事で指摘しました。
全体的に見ると、香港が金融・ビジネス・航空などの面で国際的なハブとしての地位が維持できるかどうかは中国と香港政府の方向性に深く依存しているため予測することが難しいですが、コロナ関連の制限はパンデミックの風土病化に伴い、続々と解除されていくに違いありません。店舗の賃料低下を機に新しく展開しているビジネスも不況でありながら現れ続けており、景気に顕著な回復が見られるまで香港政府が経済対策の実施で企業と民間を支え続ければ、香港の経済も徐々に修復するでしょう。
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ポストコロナ時代の香港の現状!経済とビジネス環境の修復に向けて
米中対立やコロナの世界的感染拡大、香港国家安全維持法の施行など、香港のビジネス環境が大きく変化しています。特に世界で多くの国が既に「ウィズコロナ」政策へ転換する一方、中国は依然「ゼロコロナ」政策を堅持し、香港は長い間板挟みの状態が続いてきました。
2022年7月に発足した香港の新政権は、3年弱続いてきたホテル隔離の政策を9月下旬より撤廃し、コロナ関連措置のさらなる緩和が期待でき、ビジネス環境と経済が改善されると見込まれています。
在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所と香港日本人商工会議所の3組織は在香港の日本企業等が直面するビジネス環境を把握するために調査を実施しました。今回の調査は在香港の日本企業を対象に2022年7月に実施され、有効回答数は295社(うち非製造業265社、製造業30社)となります。
今回の記事では、この調査結果による在香港日本企業の22年下半期への展望に基づき、現時点で改善されつつある香港のビジネス環境の現状をお伝えします。
22年上半期悪化傾向の業績、下半期に改善を見込む
22年1~6月の業績が21年7~12月期(前期)と比較して「悪化」または「大幅悪化」と回答した企業の割合は上昇し、35.6%(前期:19.1%)となりました。
業績の変化理由について、特に影響が大きかった要因は「新型コロナウイルス」関連(71.6%)が中国の景気動向(11.5%)や米中対立(2.9%)より遥かに高く、景気回復がパンデミックの状況に深く関わっていることがわかりました。
パンデミック状況の緩和につれ、22年7~12月期の業績見通しに「改善」と回答した企業の割合は前期(18.9%)から14.5ポイント上昇し、33.4%となっています。特に非製造業の情報・通信・メディア・広告(50.0%)、飲食・小売(66.7%)、運輸・倉庫(44.8%)で「改善」の回答割合が20ポイント以上改善と顕著に好転しました。
業績が変化する理由として、「改善見通し」と回答した企業の半分(51.6%)は「香港市場での売上増加」と見込んでいる一方、「悪化見通し」と回答した企業の45.5%は「中国本土への輸出低迷による売上減少」を主な理由としています。
ゼロコロナ政策によるマイナスの影響
未だに中国で実施されているゼロコロナ政策は、ビジネスに大きな打撃をもたらしています。
84.1% の回答企業が「マイナスの影響が生じている」と回答し、自由記述欄での回答のうち、約半数が「往来の制限による事業活動への支障」、「物流の停滞による出荷および仕入れの遅延・コスト増加」と「インバウンド客の減少などによる需要や売上への影響」が各々約2割を占めています。
ヨーロッパのシンクタンクBruegel社によると、香港政府が施行した厳格なソーシャルディスタンス規制が各業界と香港の経済に直接且つ幅広い影響を与え、香港の2022年第1四半期のGDPは前年比4%減少しました。3月のデータではPMIが42に減少し、香港域内も対外貿易も厳しすぎる入境措置により大きく影響を受けました。同期の経済状況について、香港浸会大学ジャーナリズム学系の元アシスタントプロフェッサー、杜耀明(To Yiu Ming)氏は「個人消費(5%減)、設備投資(8%減)と輸出(4.5%減)が特にひどい。3月の小売売上高が13.8%も減少した上、飲食業界の収益は記録上最低となり、景気回復のために社会は一刻も早くこの非常事態から回復しなければならない」と指摘しました。
コロナ規制を依然緩和しない香港に対し、国際航空運送協会(IATA)事務局長のWillie Walsh氏が9月21日に「中国のゼロコロナ政策によって香港は国際ハブ空港としての地位を既に失った」と非難しました。一方、ロイヤル・カリビアン・クルーズが香港での業務をシンガポールへ移転するとの報道を受け、香港観光業議会(TICHK)会長の徐王美倫(Gianna Hsu)氏が「今後2年間香港に泊まるクルーズ客船はなくなるだろう。母港としての地位が危うい」と警告しています。
香港のビジネス環境への評価
1年前と比較した香港でのビジネスのしやすさについて、23.4%の企業が「悪化した」(21.4%)または「大きく悪化した」(2.0%)と回答し、項目別で見ると、「人材の確保」と「事業コスト」で「悪化した」または「大きく悪化した」と回答した企業がそれぞれ43.5%と35.7%となっています。また、自由記述欄で記入された具体的な「人材の確保」への悪化影響で、「人材の移住に伴う流出」との回答が大半を占めました。
香港の人口・人材流出が深刻に
実際、人材の流出はこの数ヶ月進んでおり、香港政府統計処(C&SD)が2022年第2四半期に発表した「年齢別の労働人口(Labour force by age and sex (excluding foreign domestic helpers))」のデータによると、香港の労働人口は全体で375.02万人、前年同期比で3.49%減少しています。20~49歳の6グループは全部マイナスになっており、特に20~24歳のグループは14.98%減という深刻な状況になっています。ブラックロックなどの大手グローバル投資企業が会員である香港投資基金公会(HKIFA)が最近行った調査の結果で、3割超の企業が区域やグローバルの執行役を一部もしくは全部香港から移転したと発表しました。香港の労働力は過去10年最低レベルになり、「今年末まで香港の経済はリセッションのままになるだろう」と香港の財政長官も警告しています。
コロナ関連を除き、香港の人材流出に影を落としている他の要因
人材流出の問題は、コロナ関連の各規制と影響以外に、愛国教育が推進される子女の教育環境、香港の高コスト構造など複合的な要因があります。
その中で各業界でも注目されているのは2020年6月より実施されている香港国家安全維持法(国安法)です。調査結果では41.1%の回答企業が、国安法について「大いに懸念している」(7.8%)または「懸念している」(33.3%)と回答しました。法への懸念理由の2~4位(情報に制限がかかる恐れがあるから(56.2%)、中国政府の干渉が増えて香港の自治が弱まる恐れがあるから(47.9%)、香港の「法の支配」「司法の独立」が失われる恐れがあるから(47.1%))を見ると、どれも香港が従来享受してきた「自由」の喪失への懸念で、最も懸念されている「人材が流出し、優秀な人材の確保が困難(68.6%)」という結果へと繋がっています。
実際、香港の変わり続ける政治的な雰囲気は人々に影を落としています。政府が去年発表した課程のガイドラインでは、「中国・中国のリーダー・中央政府に対する忠誠」が強調され、社会で「国安法が学校の課程にマイナスの影響を与えてしまうのは時間の問題だ」という声が増えて特に国際学校では人員補充が困難になっています。
また、国安法の適用範囲が幅広く、その不安定さでニューヨーク・タイムズを含めたマスコミ企業やNGOが2020年から続々と東京やソウルなどのアジア都市へ人員を移転しています。
では、様々な課題に今年7月に発足した香港の新政権はどうやって取り組んでいるか、経済の景気回復に繋がるコロナ政策から生み出した問題は解決されていくかについて、次回の記事でご紹介します。
ビジネスでの業務自動化とデジタル化の現状
ビジネスを自動化することで業務効率を飛躍的に向上させることができます。従来はITチームに限られていた話ですが、現在では企業のビジネス全体が自動化されていくトレンドが起こっています。企業自動化プラットフォームのWorkato社が発表したレポートによると、業務プロセスの自動化を導入し始めた部署は多様化しており、その中でも財務部門がIT部門を超えて一番自動化が進んでいる部署になっているようです。
今回の記事では、コロナ禍で加速している、企業の業務自動化とデジタル化の現状についてご紹介します。
66%の企業は5つ以上の部門が自動化導入
Workato社は2021年2月から2022年1月までの間に、世界で900社の中小企業を対象に、自動化ソフト、一番自動化されているプロセスや自動化作業に連係する役職などについて調査しました。
ローコード開発プラットフォームのアクセシビリティと使いやすさで、企業の自動化導入率が去年(2021年)急増したことが調査結果からわかります。66%の企業は5つ以上の部門が自動化されており、7つの部門が自動化されている企業数は2019年と比べて倍増しました。
一方、自動化プロセスを採択する非技術スタッフの増加は顕著です。2020年には、大部分の企業では1つか2つの部門しか自動化されていませんでしたが、2021年を始め、ビジネスの自動化は1,074%成長し、カスタマーサービスの自動化サポートは666%、財務の自動化は659%成長しました。その中で、財務部はIT部門を超えて自動化率最大の部門になっており、自動化プロセス全体の26%を占めています。
各企業での自動化状況を追跡するために区域のデータを分析する際、Workato社はヨーロッパ、中東とアフリカでの洞察・分析するための自動化率が昨年比403%成長したことを発見しました。APAC区域では、財務の自動化の方が発展しており、仕入れから支払いまでのプロセスが514%、記録から報告までのプロセスが569%成長しました。
自動化の実行とセキュリティホール管理の強化
企業が書類をクラウドにアップロードし、デジタル化した管理を実現することで、業務の効率化ができ、保管費用と捜索時間を節約することもできます。しかし、アメリカのForrester Research社が世界268人のITマネージャーに行った調査によると、63%の回答者が企業の基礎設備が不足しているとし、特にデジタル化の作業を行うのが困難だそうです。58%はクラウドコンピューティングなど企業のIT基礎設備不足はネットワークセキュリティにさらなる危険をもたらすのみでなく、より多くの運営費用が生じ、イノベーション能力を制限してしまう可能性があるとの意見です。
Forrester Research社の意見では、IT基礎設備の自動化への需要増加に伴い、企業は自身の弱点を分析し、その弱点がどのようにビジネスの発展と社員の能力発揮に影響するのかを理解しなければなりません。基礎設備が完全に自動化を実行できる際に、セキュリティホールの管理が強化でき、業務でのリスクを回避できます。
IT基礎設備での自動化は開発者の効率と生産力を高め、納品時間を改善できます。レポートによると、約60%のITマネージャーが基礎設備を利用し、納品時間、システムのサービスレベルとソフトのリリースライフサイクルでKPIを追跡しています。46%の回答者は、所属企業はさらなる高い運営効率を求め、自動化した基礎設備を利用していると回答しました。
データはデジタル化での「石油」、企業にさらなる価値をもたらす
コロナの影響で、多くの企業は運営パターンと最新テクノロジーの連係を見直し、業務デジタル化のペースを上げています。業務デジタル化の戦略を決める際には、クラウドコンピューティングとデータの応用が大切です。
新興企業のみでなく、金融機関、保険業界や小売業界などでの伝統企業もテクノロジーを積極的に利用するようになっており、多様なデジタル製品や業務を開発して競争力を高めています。Oracle社の香港・台湾地区副総裁のPatrick Lo氏は、その中でのデータは現代社会での「石油」だと述べており、例えば業務の改善方向を詳しく分析して長期の運営方針に役立ち、データは企業にとって重大な価値があるとコメントしています。そのため、データセンターやオンラインストレージを選ぶ際に、ストレージサービスプロバイダの合法性やデータセキュリティの保障について気を付けなければなりません。
現状では、多くのテクノロジーサービスはクラウドコンピューティングを利用しています。そのメリットは地域の制限がなく、オフショアのデータセンターでもオンショアのと同じく遅延を最大限に減少することやデータセキュリティの保障などができ、データの紛失や業務の中断を回避できます。
ビッグデータを適切に拾い上げて分析することは企業の競争力を有効に高めることができます。近年の消費者は情報プライバシーへの関心が高く、その需要に対し、様々な対応策があります。例えばセンシティブ情報の収集を回避すること、データを暗号化すること、名前やID番号などの個人情報を使用しないデータマスキングを導入することなど、適切な情報のみ収集することは消費者の信頼に繋がります。
現在の市場ではAIや機械学習などのデータ分析技術がトレンドになっていますが、Patrick Lo氏は多くの企業ではデータ処理戦略の整合性が不足だと述べています。
デジタル化戦略は運営に役立ち、企業の手足だといえば、データの運用や分析は企業の脳のようです。しかし、多くの企業はITのプロジェクトを実行する際に、「脳」の重要性を見落としがちです。例えばプロジェクトがどのようなデータを入手できるか、そのデータの価値や業務改善に役立つデータモデルの分析など、データは企業に様々なメリットをもたらします。
コロナの影響は中小企業が真っ先に大きく影響されますが、デジタル化改革に必要な資源も膨大で、多くの中小企業はその規模や資源に限られて最先端の技術に触れることが難しいです。
企業デジタル化の専門家は中小企業のデジタル化改革方向性について下記の3つのアドバイスを挙げています:
1. SaaSなどのクラウドコンピューティングを採用し、開発時間、資金や人的資源を節減し、より柔軟にビジネスを展開する
2. 業務改善の方針を分析するために、ITプロジェクトから生じたデータを有効に運用すべき
3. データの保存や整合にOSIを採用する
クラウドコンピューティングが日々新しくなり、中小企業のビジネスに新しいテクノロジー革命が今起きています。「一気にビジネス全体ではなく、小規模のプロジェクトからデジタル化改革を始めても、すぐ効果が感じられるだろう」とPatrick Lo氏は話しています。
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経験談あり!香港教育、香港人従業員の特徴と採用事情
前回の記事で、香港の教育システムと学歴資格体制についてご紹介しました。
学歴以外に、教育の特徴も人の習慣や態度に影響し、仕事にも関わっています。今回の記事では、香港教育の特徴に関わる香港人従業員の特徴、及び香港での採用事情について、筆者自身の経験を例に付けてご紹介したいと思います。
香港小中学校教育の特徴に関わる香港人従業員の特徴
・国際的な物事の見方、優れた多国語力
国際都市であるゆえ、香港の学生は比較的国際的なものの見方が育てられています。言語も広東語(世界でよく使われている言語17位)、英語(1位)、中国語(2位)の3つが使えるのが一般的です。それに加えて、日本語、韓国語、フランス語などの外国語の課程を提供している機関もたくさんあり、それらの言語が使える香港人は少なくないです。
英語がメインの公用語であるシンガポールに比べると劣りますが、一部(114校)の香港中学は国語や中国歴史は除く全教科を英語で教育しており、EF Education Firstの調査によると香港人の英語力はアジアで4位となっております。
・能力重視
香港の教育は日本のに似ておりよく「詰め込み教育」だと言われていますが、日本とは大きく異なり、香港は義務教育中であっても進級できるレベルに達していない場合は留年になります。反対に、極めて珍しいのですが、優秀であれば飛び級をすることもあります。学校でのクラスも成績の優秀な順に分けられる場合が多く、香港教育の「能力重視」と「エリート教育」の一面が見えます。
仕事面でも、自分の能力に見合った待遇のために積極的に交渉する従業員が多く、年功序列が伝統である日本企業にとってはアグレッシブに見えるかもしれません。
・行事よりは仕事
日本の学校は、入学式、卒業式や運動会、文化祭など一年を通して多くの行事があり、全員で取り組むことでチーム力や企画力などを育む機会となります。香港の小中学校でも入学式、卒業式、運動会や遠足など一応ありますが、やはり成績重視になっているので、雰囲気的に運動会以外はあまり重視されておらず、行事は事務的に行っている感じが強いです。学生も殆どは行事にあまり関心を持っておらず、筆者の学生時代には行事が学習・休憩に対して邪魔だと思う学生までいました。
実際筆者が務めていた香港系の小型企業でもクリスマスパーティーが行われていましたが、殆どの社員はそこまで熱心ではありませんでした。
・効率重視、タイトなスケジュール
香港の小中学校ではよく「生徒全員楽器を習う」など音楽や体育などへの強制的な課外活動方針が実施されており、学力向上のために学生たちはよく放課後に様々な塾に通い、また、中学には学生たちが主導するクラブ活動があり、学習時間以外も香港の小中学生たちの生活は大忙しです。それが高等教育の段階に入り、人生一大事の統一テストもなく強制的な課外活動方針もなくなり、やっとアルバイトや遊ぶ時間を確保できます。詰めすぎたスケジュールはストレスの要因の一つですが、それに慣れた香港人は効率重視で、卒業後でも勤務時間でもプライベート時間でもついスケジュールを詰めてしまいます。
香港での採用について
香港の従業員の中では、「魚唔過塘唔肥(魚は別の池に移してこそ太くなれる)」ということわざがあり、よりいい仕事環境や待遇を求めるには転職しかないと強く信じている人が多数で、終身雇用が伝統である日本とは違って香港の職場では転職はごく普通なことです。
ここでは香港従業員が仕事における最重視している要素について最新情報をお伝えします。
Randstad社の委託を受けたKantar TNS社が2022年1月に3,027人の香港従業員をインタビューし、従業員や求職者が新しい仕事を探すのに重視している要素について調査しました。
結果、2022年になって香港の従業員が仕事における一番魅力的に感じる要素は「ワーク・ライフ・バランス」(60.4%)で、初めて2位の「給与と福利厚生」(60.2%)を超えました。3位から順に「企業の財務健全性」(49%)、「雇用保障」(48%)と「楽しい仕事環境」(44%)。
また、18~34歳の78%が「雇い主が提供するスキルアップ研修」を重視していると回答し、58%は「個人のキャリアパス」をとても重視していると回答しました。Randstad社香港区総監のBenjamin Elms氏が、「香港の従業員は魅力的な企業や頼れる雇い主にキャリアパスの発展やスキルアップの機会を求めている。優秀な人材を確保するために、企業は従業員が仕事で達成感を得られるように見直しを続けるべき」とコメントしました。
言語力が優れている香港人材にとって、日系を含めた外資系企業は人気なのでしょうか。
香港青年協会青年研究中心(YRC, HKFYG)が創立した「青年創研庫(Youth I.D.E.A.S.)」が2021年6月に18~34歳の青年520人にインタビューした結果、60%以上の回答者が企業の背景について好みがあると回答しました。2019年に発生したデモで若年層に政府や中国系の企業への不信を募らせたためか、政府系(6.3%)と中国系(5%)企業に対し、香港系と外資系(日系を含む)企業の好む確率は比較的高く、26.9%と20.4%となっています。
また、求人プラットフォームについて、シンガポールでは官営の求人サイトが信頼されており若い利用者も多数いますが、香港ではその逆で、年長であるほど労工処で求人広告を探し、または官営の求人サイト「iES」を利用します。若年層はJobsDBなどの民営求人サイトを通じて求人先に直接応募するか、企業に在籍している知り合いに紹介してもらうのが一般的です。
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採用担当必見!香港VS日本での教育システムと学歴資格体制
前回の記事ではシンガポールと日本の教育システムを比較しご紹介しました。
シンガポールと比べて、香港の方が日本の教育システムに似ているかもしれませんが、違う点や習慣もあります。
今回の記事では筆者自身の経験から香港の教育システムについてご紹介します。香港教育の特徴と採用事情については次回ご紹介する予定です。
香港の教育システム
2008年度までの教育制度はイギリス植民地時代からの方式を取り入れたもので、小学校6年(Primary 1-6)と中学前期課程3年(Secondary 1-3またはForm 1-3)を含む義務教育が合計9年、その後の中学後期課程(Secondary 4-5またはForm 4-5、高校に相当)2年、大学予科2年(Secondary 6-7またはForm 6-7)、大学3~4年(学科によります)となっていました。
学制改革により、2009年度のForm 4入学者から「六三三四制」と呼ばれる新教育制度が適用となり、2011年度からForm 6-7の予科課程が廃止され、中学後期課程3年・大学課程4年がと定着しました。
香港での学歴資格体制「Qualifications Framework」
「資歴架構(Qualifications Framework・HKQF)」とは香港の教育局より制定された学歴の資格に関する体制で、香港で取得可能なの学歴を下記の7級に分けています:
第1級:証書(香港でのForm3相当)
第2級:証書(香港旧教育制度Form5で受験する香港中學會考(HKCEE)相当)
第3級:香港中学文憑(HKDSE)、基礎課程文憑(Diploma of Foundation Studies)、毅進文憑(Diploma Yi Jin)(香港新教育制度でのForm6、または旧制度でのForm7相当)
第4級:高級文憑(Higher Diploma)、副学士(Associate Degree)、専業文憑(Professional Diploma)
第5級:学士(Bachelor’s Degree)
第6級:碩士(Master’s degree・修士)、深造文憑(Postgraduate Diploma、PgDip)
第7級:博士(Doctor’s degree、PhD)
香港での中学校以降の教育機関
・ローカル大学と法定学院
主に学士以上の課程を提供している教育機関ですが、その付属学院では副学士など「資歴架構」第4級以下の課程を提供している場合もあります。
現時点で、香港で学士以上の課程を提供しているのは以下の合計11校の大学と1校の法定学院となります:
「8大」と呼ばれている公的資金の補助を受けている大学8校
・香港大学 The University of Hong Kong(HKU)
・香港理工大学 The Hong Kong Polytechnic University(PolyU)
・香港中文大学 The Chinese University of Hong Kong (CUHK)
・香港浸会大学 Hong Kong Baptist University(HKBU)
・香港城市大学 City University of Hong Kong(CityU)
・香港科技大学 The Hong Kong University of Science and Technology(HKUST)
・嶺南大学 Lingnan University
・香港教育大学 The Education University of Hong Kong(EdUHK)
私立大学3校
・香港都会大学Hong Kong Metropolitan University(HKMU、元香港公開大学The Open University of Hong Kong(OUHK))
・香港樹仁大学Hong Kong Shue Yan University(HKSYU)
・香港恒生大学Hang Seng University of Hong Kong(HSUHK)
舞台芸術の人材育成専門の法定学院1校
・香港演芸学院The Hong Kong Academy for Performing Arts(HKAPA)
その中でもにも香港大学、香港理工大学、香港中文大学、香港城市大学、香港科技大学の5校が世界大学ランキングで常に総合トップ100位以内に入っています。
・海外大学と国際連携教育課程
海外大学の学位を取得するには、海外へ留学するのは勿論、実は香港にいても国際連携教育課程を修了することで取得できます。
例えば、筆者自身は香港城市大学付属の専業進修学院(CityU SCOPE)とイギリスのセントラル・ランカシャー大学(University of Central Lancashire・UCLan)が連携した国際ビジネスコミュニケーション課程を香港で修了し、UCLanの学士学位を取得しました。
国際連携教育課程が普及してきた今、海外大学の学位を持っている人でも必ずしも海外留学を経験したわけではありません。
・その他「資歴架構」第4級以上の課程を提供している教育機関
香港学術及職業資歴評審局(HKCAAVQ)の審査を通ればった以上、学歴の授与が可能です。香港では副学士など「資歴架構」第4級以上の課程を提供している教育機関が多数あるためここではリストアップしませんが、多くは「学院」が学校名に付いています。
審査を通った課程はこちらのシステムにて検索・確認できるようになっています:
http://www.hkqr.gov.hk/HKQRPRD/web/hkqr-en/search/op-search/index.html
では香港の教育における特徴が香港人従業員の特徴にどう関わっているのか、及び香港での採用事情について、筆者自身の経験を例として次回の記事でご紹介したいと思います。
解雇補償金・長期服務金へのMPF相殺廃止!企業が知っておくべき情報
強制性公積金(MPF)という積立金制度が2000年に実施されて以来、「MPF相殺」の仕組みは長く利用されています。「相殺」とは、香港法人が従業員に解雇補償金・長期服務金を支払う場合、MPFのAccrued Benefit(退職給付引当金)の会社負担分で充当することが、法律上許容されています。
積金管理局(MPFA)が発表した「強制性公積金計画統計摘要(Issue of the Mandatory Provident Fund Schemes Statistical Digest)」レポートによると、解雇補償金と長期服務金に充当されたMPF資金の総額は、2021年度だけで66億香港ドル(約1141.7億円)になります。
MPF相殺の仕組みが実施されて以来、従業員への搾取ではないかと批判されていますが、従業員側と企業側の間の合意には至っていませんでした。相殺の実施が22年目になり、香港立法会は2022年6月9日にMPF相殺廃止についての法案を通過させました。
MPF相殺の廃止で企業の負担増加が予想され、今後の資金運用調整のために企業が知っておくべき情報を今回のブログでご紹介します。
解雇補償金・長期服務金とは?
香港の雇用条例によると、下記の条件に合致する場合、従業員は解雇補償金または長期服務金のどちらかを受給する権利があります:
解雇補償金:
継続的契約(※)での雇用期間が24ヶ月以上であり、かつ下記の条件のいずれに合致:
・余剰人員整理を理由として解雇されたこと
・定められた雇用契約期間の満了後、余剰人員整理を理由として更新されなかったこと
・業務停止で解雇相当事由があったこと
長期服務金:
継続的契約(※)での雇用期間が5年以上であり、かつ下記の条件のいずれに合致:
・重大な不当行為または余剰人員整理以外の理由で解雇されたこと
・定められた雇用契約が期間満了後、更新されなかったこと
・従業員が在職期間内に死亡したこと
・名簿に登録された医者・漢方医が恒久的に契約上の業務を遂行できないと判断された証明書(LD424(S))を従業員が提示、健康上の理由で自己都合退職したこと
・65歳以上の従業員が高齢を理由に自己都合退職したこと
※継続的契約の定義についてはこちらの記事をご参照ください
注意すべきなのは、解雇日の7日以上前(解雇補償金の場合のみ)、または定められた雇用期間の満了日の7日以上前に、雇い主が書面により「雇用契約の更新」、または「新しい雇用契約での再雇用」を申し込んだにも関わらず、従業員が不合理な理由で拒否した場合、従業員は解雇補償金と長期服務金の受給権利を失ってしまいます。
解雇補償金・長期服務金の計算方法
解雇補償金及び長期服務金の計算方法は以下の通りとなります:
月給制の場合:
(最終の月額賃金(#1)×2/3)(#2)×算定可能な勤続年数
日給制・出来高払いの場合:
直前30日のうち従業員が選択した通常の就労日18日間の合計賃金(#1・#2)×算定可能な勤続年数
*解雇補償金・長期服務金の最大金額は39万香港ドルとなります
*算定可能な勤続年数が1年未満の場合は按分計算されます
#1:従業員はこの金額の計算のために雇用契約終了の直前12ヶ月の月額平均賃金を選択できます。解除予告手当による雇用契約解除の場合は、従業員は解除予告手当の計算に含まれる最終日の直前12ヶ月の月額平均賃金を選択できる。
#2:当該金額の上限は22,500香港ドルの3分の2(=15,000香港ドル)となります
現在の「MPF相殺」の仕組み
MPF相殺廃止案が通過されたとはいえ、実施されるまでの間は現在の仕組みを使い続けなければなりません。現在の仕組みは以下の通りです。
「相殺」の仕組みで、香港法人は従業員に解雇補償金・長期服務金を支払うために、MPF会社にAccrued Benefit(退職給付引当金)での雇い主負担分の受取を申し込むことができます。Accrued Benefitとは、雇い主が毎月従業員の基本給、諸手当などの総支給額の5%(上限1,500香港ドル)をMPFの口座に入金し、MPF会社の投資運用によって左右されている金額です。投資状況によっては運用利益がマイナスになるケースもあるので、事前に計算しておくことが難しいです。
雇い主負担分のAccrued Benefitが解雇補償金・長期服務金より多い場合、解雇補償金・長期服務金が相殺され、雇い主は追加払いする必要がありません。逆に雇い主負担分のAccrued Benefitの方が少ない場合、雇い主はその差額を追い払わなければなりません。
下記の2つの例を見ていきましょう:
1. 雇い主負担分のAccrued Benefitが解雇補償金・長期服務金より多い場合:
解雇補償金・長期服務金の金額 30,000香港ドル
雇い主負担分のAccrued Benefitの金額 50,000香港ドル
MPF相殺可能な金額 30,000香港ドル
雇い主が追加払いする差額 0香港ドル
相殺後MPF口座での残額 20,000香港ドル
2. 雇い主負担分のAccrued Benefitが解雇補償金・長期服務金より少ない場合:
解雇補償金・長期服務金の金額 30,000香港ドル
雇い主負担分のAccrued Benefitの金額 20,000香港ドル
MPF相殺可能な金額 20,000香港ドル
雇い主が追加払いする差額 10,000香港ドル
相殺後MPF口座での残額 0香港ドル
MPF相殺が廃止された後
MPF相殺廃止実施日(現在未定)より、MPF雇い主負担分のAccrued Benefitで解雇補償金・長期服務金を充当することはできなくなりますが、実施の遡りはできないので、実施日前の部分は現在のMPF相殺仕組みで計算することができます。
例えば、最終の月額賃金が15,000香港ドルで勤続年数が5年の従業員Aが、MPF相殺廃止実施日の1年後に余剰人員整理で解雇される場合、その解雇補償金とMPFの計算は2つの部分に分けて計算します:
最初の4年分:
解雇補償金の金額 40,000香港ドル
雇い主負担分のAccrued Benefitの金額 36,000香港ドル(全額相殺)
雇い主が追加払いする差額 4,000香港ドル
相殺後MPF口座での残額 0香港ドル
最後の1年分:
解雇補償金の金額 10,000香港ドル
雇い主負担分のAccrued Benefitの金額 9,000香港ドル
雇い主が払う金額 10,000香港ドル(^)
相殺後MPF口座での残額 9,000香港ドル
^香港政府は329億香港ドルで25年の補助期間で解雇補償金・長期服務金の一部の金額を補助する予定で、企業の負担金額は下記の立法会資料の19ページ目をにご参照ください:
https://www.legco.gov.hk/yr2022/english/panels/mp/papers/mp20220204cb2-39-1-e.pdf
注意すべきなのは、雇い主が自発的追加負担分のMPFや従業員の勤続年数に応じた退職金(Gratuity)がある場合、今回の相殺廃止案に影響されなく、引き続き解雇補償金・長期服務金に充当することができます。
現時点で、MPF相殺廃止の実施は早くて2025年を予定しており、企業に解雇補償金・長期服務金の支払いに備えさせるために専門口座の新設が必要なのですが、詳細はまだ発表されていません。最新情報が発表され次第、続報いたします。
MAYプランニングでは、香港法人を運営していく上で必要な労務管理に関わるサポート、貴社のケースに応じたMPF相殺廃止案に関するコンサルティングなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
コロナ禍でも開設可能な香港の法人口座とは?
ビジネス用の銀行口座(法人口座)を作るのは起業家の常識ですが、個人口座ではなくわざわざ法人口座を作る理由に疑問を持ったことがありませんか?また、コロナ禍で法人口座を作るのを諦めてはいませんか?
まだ起業したばかりの小さい企業に専用の口座は現時点で必要ではないかもしれませんが、法人口座を持つことには多くのメリットがあります。この記事では法人口座開設のメリットや銀行の選び方、コロナ禍でも開設可能な銀行についてご紹介します。
法人口座とは?
法人口座とは法人や個人事業主が収益を管理するために使う口座の一種です。法人口座を利用することでキャッシュフローの管理、給与の支払い等がよりしやすくなります。
法人口座を使う5つのメリット
・税金に関するトラブルを回避
ビジネスでの取引が一目瞭然で、会計監査に関するトラブルを回避します。また、課税控除も最大限に活用できます。
・企業イメージの確立
口座の取引で企業名を使うことで仕入先・取引先、または従業員側にもより信頼できるイメージが確立できます。
・資金の管理が楽
取引で企業専用の口座を使うことで支出の確認が簡単になります。
・ビジネスの発展が確認できる
キャッシュフローが容易に管理可能になることで、ビジネスを改善するための戦略を練る事が出来ます。
・企業の信用の確立
法人口座を利用することで、銀行での信用を築くことができ、ビジネスローンや企業用クレジットカードなどの特典が使えるようになります。
香港での銀行を選ぶ時に考慮すべき点
それでは、香港ではどの銀行を選んで法人口座を開設すればよいのでしょうか?企業の需要に基づいて色々な特典が提供されるので、どの金融機関が「一番」かを決め付けることはできません。しかし、以下のポイントで絞り込むことができます:
・創設年月日
銀行の歴史は銀行が企業の需要をどれほど熟知しているかを表します。また、金融業界での信頼性でもあります。
・利用のしやすさ
地方企業にとってもグローバル企業にとっても、銀行支店やオンラインバンキングを問わず、口座へのアクセスのしやすさと取引のスピードはとても重要です。
・最低入金額
口座を設立する際に重要な考慮点の一つです。最低入金額は法人口座の種類によって違うので、口座を設立する前に必ず確認しておきましょう。
・手数料
銀行取引には様々な手数料が発生しますので、事前にその種類と金額を確認しておきましょう。
・その他のサービス
24時間年中無休のカスタマーサービス、顧客関係担当者、オンラインバンキングなど
香港シティバンク(花旗銀行、Citibank (Hong Kong) Limited)でのリモート口座開設
香港の銀行はコロナ状況がもたらしたニューノーマルに適応し、顧客の需要に応じてオンラインバンキングサービスを提供し始めています。ここでは例として、香港シティバンク(花旗銀行、Citibank (Hong Kong) Limited)での口座開設についてご紹介します。
シティバンクでリモート口座開設する方法
未だに続いているコロナ禍で、国際便の便数が減少し、世界中の起業家は海外への進出、特に銀行口座の開設に苦戦していますが、香港の銀行は顧客の需要に適応する方法を提供しています。
シティバンクでのリモート口座開設は現時点では香港とシンガポールを拠点とした、かつ特定の事業を展開する企業のみが利用できるサービスです。しかし、株主と取締役への国籍の制限はありません。
リモートの口座開設になるので、申請書類、ビジネス証明、企業の書類と取引先の情報など必要な書類を出来るだけ完璧に揃えて提出しましょう。銀行側の担当者とはZoom会議で面談します。
基本資料を提示する
香港上海滙豐銀行(HSBC)、中国工商銀行、中国銀行(香港)、シティバンクなどの香港の銀行では口座開設の際に下記の書類を提出しなければなりません:
・オンラインの申請書類とサインしたスキャンコピー
・香港での登録住所
・企業の法人登記書類
・商業登記証(Business Registration Certificate)の認証コピー
審査通過の可能性を上げるために、下記の資料もできるだけ備えておきましょう:
・取締役、実質的な所有者や10%以上の株を所有している株主、主要取引先の代表などの身分証明書類
・口座開設の目的や業務内容
・企業が運営していることを証明できる書類
「KYC(Know-Your-Client)」本人確認手続き
不正利用やマネーロンダリング防止のため、地方銀行でも国際銀行でも「KYC(Know-Your-Client)」という本人確認手続きが口座開設の際に求められます。この手続きは一般的に時間を要する為、申請書類提出後の銀行側との面談は2ヶ月ほどかかると考えておいた方が良いでしょう。
MAYプランニングでは、貴社の需要に応じて適切な香港銀行の提案、口座開設のサポートなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
2022年度の雇用支援計画の概要
香港政府による2022年度の雇用支援計画(ESS)の申請受付期間が終了しましたが、今回の記事では今後の助成金申請の参考のため、「ESS2022」の適用対象、計算方法、支給期間、注意点などについてご紹介します。
適用対象
「ESS2022」の補助金を申請する法人は以下の条件を満たさなければなりません:
1.会社・法人・機構・個人雇用主として申請すること
2.除外リスト」に含まれていないこと
(除外対象は香港政府や法定機構、在香港の各領事館が含まれています。詳細はこちらのURLの第一部をご参照ください:https://www.ess.gov.hk/doc/Exclusion_List_eng_2022_04_18.pdf)
3.2021年12月31日までにMPFかORSOの退職積立金スキームに参加していること
4.法人が解散、清算、登記抹消、休眠になっていないこと
5.2022年5月10日までに「ESS2020」の返還金額・罰金を納付完了すること(対象の場合)
支給金額の計算方法
雇用主は2022年5~7月の毎月、「雇用予定の従業員数(フルタイム、パートタイム、65歳以上の方を含む)」を申告します。従業員数は「ESS2020で申請した従業員数」または「2021年第4半期(10~12月)のうち最も助成金額が多くなる月の従業員数」のどちらかを自分で選択できます。
MPFに加入している場合、政府の代理人が申請者のMPF記録で自動的に助成金額が最も多くなる月を参照として選択しますが、ORSOに参加している場合、申請者が参照月を自分で記入しなければなりません。
MPFもORSOも、2022年2月28日までに作成し、2021年第4半期の積立金を納付したアカウントのみが対象となります。
補助対象の従業員とその支給金額は以下の3種類になります:
1.参照月での月給が8,000HKD以上の従業員:一人当たり毎月8,000HKD
2.参照月での月給が3,000HKD以上8,000HKD未満の従業員:一人当たり毎月4,000HKD
3.参照月での月給が3,000HKD未満で65歳以上の従業員:一人当たり毎月4,000HKD
以上3種類の従業員の合計人数が補助対象の人数上限になります。また、申請者の業務が「制限リスト(※)」に含まれている場合、補助対象の人数上限が最大100人に制限され、その他の業務の場合、補助対象の人数上限が最大1,000人になります。
※制限リストにはスーパーマーケット、コンビニ、薬局、薬販売会社、消費者向けEコマース、不動産管理、清掃、警備、保険、銀行、証券、MPF、資産管理、信託、ローカル宅配、公共事業、テーマパーク、私立病院と医療機関、建設、不動産デベロッパー、不動産業者、人材アウトソーシングなどが含まれています。詳細はこちらのURLにご参照ください:https://www.ess.gov.hk/doc/2022ESS_RestrictedList.pdf
申請受付期間
2022年4月29日~5月12日23時59分
助成金支給期間
助成金は4回分けで支給されます:
1回目:申請後の2~3週間後
2回目:6月
3回目:7月、支給分の70%
4回目:7月、支給分の30%(ただし、返還金額や罰金が発生する場合はこの30%から引かれます)
申請時の誓約事項と罰則
1.補助金の受給期間中に、該当対象グループの人員整理を行わないこと
例)申請時月給8,000HKDの従業員を5名、月給3,000~8,000HKDの従業員を2名、65歳以上の従業員を1名申告した場合、会社都合・自己都合に関わらず、各グループの申告人数より減らしてはいけません。例えば月給8,000HKDの従業員が1名辞めた場合、月給8,000HKDの従業員を新規採用して数を維持しなければなりません。
2.受給した補助金を全て賃金支払いに充当すること
注意すべき点として、賃金の支払い額が補助金支給額を下回ってはいけません。
上記の誓約を破った場合は罰金が発生します。
人員を減らした場合、その減少した分にペナルティ率10%を掛けて計算されます。
例)月給8,000HKDの従業員が6人辞めた場合、助成金総額の144,000HKD政府への返還金額の上、罰金14,400HKDが発生します。
政府より委託を受けたESS制度代理人が全申請企業の代理人としてMPF記録を受領し、ESSの実行モニタリングを行います。
MPFやORSOの信託会社はESS制度代理人へMPF記録を提供しESS実行のための関連情報の確認を行います。
申請方法
https://application.ess.gov.hk/en/apply
2020ESSの申請受付番号(2020ESSを申請したことがある場合)、Business Registration Certificate、住所証明、法人口座情報と最新のステートメントのコピー、MPF・ORSO信託会社や計画名称と登録番号、及びそれらの情報が載っている書類を準備し、上記の申請ウェブサイトにて各種情報の入力に進んでください。
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人材不足のギャップを埋める柔軟な雇用形態、フリーランスの活用
コロナ禍で起きた「大量退職時代(The Great Resignation)」、各業界で従業員の離職率が上がる一方で技術人材も不足しています。そのため、多くの企業はフリーランスを雇って現在の需要を解決しようとしています。
今回の記事では、前回ご紹介した人材リテンション以外に、「大量退職時代」へのもう一つの対応方法――フリーランスの起用についてご紹介します。
需要が高まっているフリーランス
インドのフリーランスプラットフォームFlexing It社のデータによると、本財政年度の「プロジェクトベース・フリーランス」の求人広告数は2021年の財政年度より50%も増加し、企業のフリーランスへの需要が高まっていることがわかります。
Flexing It社の創設者及び代表取締役のChandrika Pasricha氏は、今の労働市場のフリーランスへの需要が非常に強いとコメントしています:「IT技術の発展はリモートワークに快適さをもたらしました。その上、社会では柔軟な仕事形態を受け入れるようになっているので、多くの企業がフリーランスの起用を企業の長期的な計画に入れていることが見受けられます。」
インドのHindustan Unilever社は「Open2U」というギグワーカーの採用形式を発表し、フリーランスを他の企業との期間限定コラボレーションプロジェクトのコンサルタントとして雇っています。この採用形式は企業にとって新しい人材ベースを得られ、需要に応じた人材採用で企業の能力を強化することができます。
高度人材は時間の掌握を重視
企業側の需要増加以外に、Flexing It社のデータからは柔軟な仕事形態を求めているプロフェッショナルが急増していることもわかります。Flexing It社のプラットフォームでの本財政年度の新規登録ユーザー数は去年同期と比べて毎月約35%成長しています。
「自分の時間を確保したい高度人材が多い」と、インドのAxis Bank社の代表取締役及び人事主管のRajkamal Vempati氏はコメントしています、「企業はフリーランス人材ベースから多様化した人材を探し出し、特定のスキルを得て、持続可能な形式で現在のダイナミックな市場ニーズに応えなければならない。」Axis Bank社は自社の「Gig-a-opportunities」計画を通して、ギグワーカーの形で15%の人材を採用しました。
Deloitte India社のパートナー及び首席人事主観のSV Nathan氏が、フリーランスの雇用はスピーディー且つ柔軟さのある方法で、人材流出で生じたギャップを埋めることができると指摘しています、「企業が高度人材の人材ベースを持っている場合、必要な時に活用することができ、運営効率を高めることができる。」
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「大量退職時代」の到来!人材リテンションで注意すべき点
2021年、世界各国で、特に欧米など比較的経済回復が早かった国では、「大量退職時代(The Great Resignation)」を迎えました。サービス業やブルーカラー職のみでなく、ホワイトカラー職も大量に退職しています。HBS(Harvard Business School)の調査によると、一番退職が増えているのが、通常の若い世代でなく30~45歳のミッドキャリアで、2020年に比べ2021年は平均20%以上増えているとのことです。その原因はコロナ禍を経て、労働者を取り巻く環境や労働者自身の志向、価値観に大きな変化が起こっているからだといわれています。
給料を上げることや福利厚生の改善は従来の人材リテンションの方法ですが、「大量退職時代」がトレンドになっている今、従業員たちはそれらよりも価値のある項目を優先的に考えるようになっています。例えば仕事内容やワークライフバランスなど。
この記事では、「大量退職時代」に向け、企業側が人材リテンションで注意すべき点をご紹介します。
従業員エンゲージメント(Employee Engagement)
Adobe社とEconsultancy社が今年2月に発表した「2022デジタルトレンド:APACに注目(2022 Digital Trends – APAC in Focus)」のレポートでは、作業環境及びマーケティング環境のデジタルトランスフォーメーションで従業員のストレスを減らす以外に、人材流出を避けるためには、より多くの休日、より柔軟な勤務時間やメンタルケアなどの福利厚生はもちろん、もう一つ大切なのはプロフェッショナルなトレーニングや従業員への激励により、「従業員エンゲージメント」を上げることだと述べました。
「従業員エンゲージメント」とは、企業に対する従業員の思いや態度、仕事へのモチベーションを表す言葉です。従業員のモチベーションが高く、日常の仕事に意義と目的が得られる場合、仕事のできが良くなり、その上、上司、同僚や取引先からもその努力が称賛されます。これらがまた「従業員エンゲージメント」が高まる要素になり、従業員にとっても企業にとっても好循環になります。
「大量退職時代」と人材争奪戦が現状である今、「従業員エンゲージメント」を育てることがとても重要です。
エグゼクティブサーチ会社WeCruitrのCEO、Jack Kelly氏によると、管理職は、従業員がオフィスにいても在宅勤務でも満足する「従業員エンゲージメント」を維持する責任があるとのことです。「管理職は従業員で共有できる、信頼・尊重・称賛とキャリアパス重視の企業文化と価値観を創り出すべきだ」とコメントしました。
一方、従業員が企業の価値観に賛同することも大事です。チームスピリットのある従業員を持っている企業はより強くなり、取引先の満足度や業界でのリーダーシップを高めることができ、求人や人材リテンションにとって理想的です。
「従業員エンゲージメント」を高めるために、Kelly氏は従業員に仕事の「所有権」を与えることが必要だという意見です。従業員を起用することにより、管理職は従業員を信頼し、充分な自由を与えるべきで、その従業員にとって有効的な方法で仕事を完成させるのです。例えば指定した時間帯にオフィス勤務を強いることよりも、従業員自身に一番合った方法で仕事を完成させた方が「従業員エンゲージメント」や仕事の成果は理想的なものになるでしょう。
それと同時に、主管者は生産力に集中すべきです。ここでの生産力は所要時間ではなく、各従業員が各自にとってベストの作業方法で自分の作業時間と場所を管理することを指しています。
実績をねぎらうこともとても大事です。「どんなに小さい成果でも、企業は従業員の努力を称賛すべきだ」とKelly氏がコメントしました。
授業員の努力が公に承認或いは奨励された場合、他の従業員にも励みになり、企業全体の「従業員エンゲージメント」を高めることができます。
柔軟さ(Flexibility)&ウェルビーイング(Well-being)
LinkedIn社が発表した「2022世界人材トレンド(2022 Global Talent Trends)」はプラットフォームでの数十億件の投稿、数百万人の従業員ユーザーと成功企業について調査・分析し、コロナ禍で従業員は雇用主との関係を再検討するようになっているとの結論を導き出しました。分析では、優秀な人材を引きつけ・確保・発展させるために、企業は現存の企業文化を微調整、或いは徹底的に改造しなければなりません。もし従業員が企業文化に満足しない場合、最悪退職してしまう可能性があります。
従業員は仕事する場所、時間及び方法への柔軟さを期待しています。彼らはもうオフィスにいる時間を業績の基準として判断しなくなり、代わりに結果重視の企業を求めています。従業員が企業の柔軟さに満足している場合、喜びが2.6倍も増え、他の求職者にその企業を薦める可能性も2.1倍増加します。
多くの従業員はウェルビーイング重視の企業を優先的に選びます。調査によると、従業員は人が自分の仕事に関心を持つと感じる場合、仕事中に喜びを感じる可能性が3.2倍増え、他の求職者にその企業を薦める可能性は3.7倍も増加します。「従業員の身体的、精神的福利厚生を優先的に考える企業文化を育てる為、やはり経営者層から始めなければいけない。エンパシーの持っている企業のトップからその企業文化を受け入れ、柔軟さのある仕事計画や健康的な作業の習慣を自分自身で実行し、実際に示すことが有効である」とのコメントがあります。
これらの要素により、企業はその企業文化と価値観を改めて見直さなければならないし、現職では満足できない場合、従業員が現在の勤務先から離れる可能性も高くなり、求職行動が増加します。調査によると、2019年と比べて、2021年の求職者が応募する前に、閲覧する求人広告件数が2倍増えて、求職者が以前よりも熟考するようになっていると見られます。
企業文化の発展が加速している中、時代遅れにならないように企業や組織は現状を見直し革新しなければなりませんと、LinkedIn社の最高人事責任者のTeuila Hanson氏がコメントしました:「この『大量退職時代』を機に新たな企業文化と環境を創り出し、従業員一人ひとりに最善な仕事をこなさせ、最高の生活をもたらす。」
MAYプランニングでは、従業員エンゲージメントや企業文化の見直し及び改善のアドバイス、現地での企業向けトレーニングレッスンに関する情報、香港法人を運営していく上で必要な労務管理に関わるコンサルティングなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。