アジアハブへの飲食進出をお考えの方へ!ポストコロナにおける香港とシンガポールの飲食業の発展
コロナウィルスにより世界の経済は大きな影響を受けました。特に飲食業はコロナ規制の影響で、従来の店内飲食からテイクアウトに変更せざるを得なくなりました。
欧米を始め、ウィズコロナに取り込む国は続々と増えています。比較的早くウィズコロナに舵を取ったシンガポールに対し、香港は中国の政策であるゼロコロナの方針を貫いてきましたが、近頃ではコロナ規制も入境措置も緩和されるようになってきており、飲食業の店内飲食は徐々に回復しています。
今回の記事では、今後の飲食業復活の為に知っておくべき、香港とシンガポールの飲食店舗の発展の違いについてご紹介します。
土地不足がネックになる香港
様々なコロナ制限のもとで、香港の飲食業は特に不況です。近頃はコロナの感染状況が落ち着き、コロナ規制も少しずつ緩和されていますが、以前のような盛況にはまだまだほど遠い状況です。
パンデミックは飲食業の運営環境を変えました。例えば換気量やテーブル間の距離など、政府側も客側もレストランへの要求が大きく変わり、レストランの運営費用に負担がかかっています。
香港の居住者も観光客も誰しもが経験したことがありますが、香港の繁華街で美味しい軽食を買っても、食べる場所を探すのが苦労します。不動産価格が高いの香港で飲食業を経営するには、賃料が最も重い負担となります。
例えば、約100平方フィートの路面店である軽食店の場合、賃料はその収入の30~40%を占めているのが一般的です。従来では、集客のために数席だけ設けている小型店舗もありますが、コロナ規制に合わせるために通常以上の人手と空間が必要になり、一部の店舗は店内飲食の運営を諦めざるを得なくなりました。一方、客もテイクアウト、もしくは通路で慌てて飲食を済ませることしかできなくなり、自炊を選ぶ人も少なくありません。
賃料の他、人件費、食材や包装などの運営費用が高額で、売上総利益率は一般的に1桁しか残りません。収入ゼロでも賃料は支払わなければならない香港の飲食業界に対し、香港政府は補助金などいくつかの支援策を講じましたが、どれも一時的なものに過ぎません。
香港での飲食店運営にとって、根本的な問題は香港の土地の少なさです。香港でレストランを運営するために、調理技術はもちろん、「風火水電(換気・消防・給水と排水・給電)」を始めとした物件関係の知識から内装と土地売買契約への認識も欠かせません。不動産価格の高いの香港で、一人でも多くの客をもてなすために店舗の狭い空間を活用すべく、2人しか座れないボックス席に「繁忙時間は4人席となります」という標識があるのも香港のレストラン特有といえるでしょう。香港レストランでの消費額は、おそらく大半は食材ではなく賃料と店舗内装に持っていかれてしまっています。困難な運営環境は飲食業の経営者のみならず、美食が目的の客にとっても良いことがありません。
飲食業が一部計画されているシンガポール
シンガポールの人口は香港の4分の3で、面積は香港の約3分の2となっていますが、飲食業の運営環境は全く異なります。シンガポールで食事をする時に、席に困ることはほぼありません。シンガポール政府は市民の飲食店への需要を気にかけており、市民の負担可能な範囲内で料理の選択が確保できるよう、政府のHousing Development Board(HDB)は各区の公営住宅にフードセンターが備えられています。現在、シンガポールでは772ヶ所のフードセンターがあり、うち372ヶ所はHDBの貸し出しで、その他は民間所有のものです。
2018年、HDBはフードセンターの経営者選別において、賃料とクオリティ両方を重視する選別基準を導入しました。入札を通じて経営者がつける金額で評価するのみでなく、料理のクオリティと過去の業績も評価項目となります。フードセンターの経営者がそのサービスと設備を積極的に改善することを支援するため、シンガポール政府は賃貸規制を実行していません。その上、屋台を数多く収容できるフードセンター内では、屋台同士の競争によりコスパの高い飲食サービスを提供できるようになります。シンガポールの屋台は半分が民間所有であり、自由市場の主導する運営環境で顧客を獲得するために、屋台の経営者が手を尽くして良質なグルメを提供しています。近年では屋台不動産の個人投資家がF&B Techや不動産テックに関わる屋台不動産の付加価値に注目しており、産業チェーンの活性化に貢献しています。
屋台の経営を効率化するため、フードセンターの経営者は「屋外エリア使用許可(Licence Agreement for Outdoor Refreshment Area)」にサインすることにより、安い賃料でHDBから屋外エリアを借りることができ、客により広い飲食エリアを提供できます。このエリアは香港のフードコートのように共用可能で、同じ席で複数の屋台の料理を楽しめます。なお、屋外エリアでの飲食は換気がよくコロナ対策にもなっており、飲食店のコロナによる経済的影響が軽減される要因にもなっています。
HDBのフードセンターの他、シンガポールの飲食業界はレストラン、ファーストフード店とフードデリバリーにより構成されています。シンガポール統計局による2022年7月の売上データから見ると、レストランは前年比76.8%増加、ファーストフード店は11.5%増加、フードセンターは22.1%増加、フードデリバリープラットフォームの売上は前年比133%も成長しました。「民は食をもって天となす」、家族と友人との食事は元から人情で生活の欠かせない一部のため、ソーシャルディスタンス措置の緩和をきっかけに、飲食業界の業績は直ちにリバウンドしました。
シンガポールの飲食業は徐々にパンデミックの影響から回復しておりますが、自由市場が主導する香港では、飲食業経営者がポストコロナのビジネス環境への適応やインフレーションの克服などが業界淘汰の基準になるでしょう。香港市場での強化に専念すること以外、香港で実績を上げたブランドをさらに中国、もしくはシンガポールへ拡大するのことも効率的な選択になるかもしれません。
MAYプランニングでは、香港市場・シンガポール市場への進出に関わるサポートを行っています。現地市場へのアプローチアドバイスやプロモーションなどマーケティングソリューションを提供しております。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
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