【世界が日本ブランドに抱く印象とビジネスチャンス①】香港でのプレミアム商品とオンライン展開の可能性
香港は日本にとって、経済交流や文化的な結びつきが強い重要な市場の一つです。多くの香港人が日本に対して非常にポジティブな印象を持っており、その背景には日本製品の品質への信頼感や日本文化への親和性があります。今回の記事では、香港人が抱く日本および日本製品の印象を掘り下げ、それがもたらすビジネスチャンスについて考察します。
香港人が抱く日本のイメージ
香港人にとって、日本は「安全・清潔・高品質」の国として認識されています。また、日本人に対しては「勤勉・礼儀正しい」というイメージが広く浸透しており、こうした好印象は香港人の日本製品や日本文化への高い関心を支えています。例えば、香港大学民意研究計画(Public Opinion Programme of the University of Hong Kong、HKUPOP)が2019年に行った調査によると、76%の香港人が日本人に好感を持っていると回答しています。
また、香港のメディアでは日本関連のニュースや文化情報が頻繁に取り上げられ、日本への興味関心をさらに深めています。街中では日系外食チェーンや日本料理店、日本製の商品を扱う店舗が多く、日本文化が日常生活に溶け込んでいることも特徴です。
日本製品の消費動向と人気カテゴリ
香港人が好む日本製品の特徴
香港人は、品質が高く、信頼できる日本製品を好む傾向があります。特に、以下のカテゴリが人気です:
・化粧品・スキンケア用品:お手頃価格のセザンヌ(CEZANNE)とキャンメイク(CANMAKE)を持つ井田コーポレーションから資生堂(SHISEIDO)やコーセー(KOSE)など有名ブランド、日本ブランドの化粧品・スキンケア用品は種類が豊富で価格も魅力的で、特に女性から高い支持を得ています。また、その成分の安全性と高い効果が評価され、香港人の間で根強い人気を誇っています。
・電化製品:日立、ソニー(SONY)やパナソニック(Panasonic)など日本製の電化製品は、性能や耐久性が評価され、信頼性と革新性が際立ち、競合製品と比較して値段が高くても購入する価値があると考えられており、香港市場での競争力を保っています。
・衣類・ファッション:ユニクロ(UNIQLO)、ジーユー(GU)や無印良品などの日本ブランドの衣類は、デザインがアジア市場に合っており、縫製の質が高いことから人気があります。
・生鮮食品・果物:日本産の糖度の高い果物(例:イチゴ、ブドウ、モモ)や高級農畜産品(例:佐賀牛、宮崎牛など)は香港市場でもブランドとして浸透しています。贈答用でも家族の健康のためでも、香港の消費者が買っている理由は「日本産だから」で、「日本産」が安心安全で品質が良い代名詞になっているのが伺えます。
日本食と食文化の需要
香港では日本食が非常に人気で、特に寿司や刺身、和牛ステーキ、焼肉などの高品質なメニューが支持されています。地元のスーパーや飲食店では日本産の生鮮食品が日常的に提供されており、日本食材フェアも頻繁に開催されています。さらに、香港人は食事を重視する傾向が強く、「本場の日本食」を求めるニーズは高まる一方です。例えば、香港の吉野家は1991年から運営しているブランドですが、メニューが日本本場のと違うことや運営側などで評判が賛否両論になっていますが、同じく牛丼屋チェーン店であるすき家は「日本の味をそのまま提供」が魅力点として、2019年の香港進出以来、現在でも常時列ができるほど大人気です。
特筆すべきは、香港人が味覚に敏感である点です。辛味や酸味に対して敏感であるため、薄味で調整できる料理が好まれます。この嗜好に応じた商品の開発やプロモーションが効果的だと思われます。また、和牛や日本酒といった高価格帯の食品・飲料は特に需要が高まりつつあります。
ビジネスチャンスの考察
香港市場における日本製品やサービスの需要を踏まえると、以下の分野でビジネスチャンスが広がる可能性があります:
・高級食材とブランド化
佐賀牛や宮崎牛、九州産の黒豚といった高品質な農畜産品はすでに人気が高いですが、地方の特産品をブランド化し、さらにプロモーションを強化することで市場シェアを拡大できる可能性があります。特に、贈答品としての高級食品は香港市場でのさらなる成長が期待されます。
・日本酒と飲料市場の拡大
香港では日本酒や焼酎に対する興味が高まっており、バーやレストランでの提供を通じてさらなる普及が期待されます。また、酒文化そのものを体験できるイベントの開催も有望です。香港人の嗜好に合わせた新しいフレーバーや商品の開発は重要ですが、ローカル化が過ぎると逆効果になる場合もあるため、慎重な計画が必要です。
・オンライン市場の活用
日本製品への需要が高い中、オンライン販売プラットフォームを活用して、香港の消費者に向けた商品の提供を強化することができます。特に、SNSやインフルエンサーを活用したプロモーションは現地での認知度向上に効果的です。また、日本から消費者へ直送する場合は、送料無料キャンペーンなどが個人の消費者の増加が期待できます。
・日本ブランドのプレゼンス強化
衣類や化粧品ブランドを含む日本企業が、現地市場の好みやトレンドに合わせた戦略を取ることで、さらにブランド認知度を向上させることが可能です。例えば、限定商品や現地ブランドとのコラボレーション企画など、香港市場特有のニーズに応える工夫が鍵となります。
・ローカライズ戦略の推進
製品やサービスのローカライズ、特に、言語対応やパッケージデザイン、マーケティング手法において現地文化を尊重したアプローチが求められます。
まとめ
香港人の日本および日本製品に対する高い信頼感と興味は、両国間のさらなる経済交流の推進に寄与します。日本企業は、香港市場の特性や消費者の嗜好を深く理解し、質の高い商品やサービスを提供することで、競争優位性を高めることができます。特に、高級食材、日本文化を体験できるプロモーション、そしてオンラインを活用した販売戦略が、今後の成長の鍵となるでしょう。
さらに、香港市場における日本ブランドの拡大は、単なる商業的成功にとどまらず、日本文化全体への関心と親和性をさらに高める重要な機会でもあります。
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参考:
1)JNTO訪日旅行誘致ハンドブック2022(東アジア 4 市場編)第1章 香港 外国旅行の動向. JNTO. https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/hongkong/hongkong05.pdf
2)黒坂岳央. (2018, January 22). なぜ近年になって台湾と香港に日本のフルーツがウケているのか?. 高級フルーツギフト・肥後庵の喜ばれる贈り物ブログ. https://higoan.jp/gift/2018/01/22/%E3%81%AA%E3%81%9C%E8%BF%91%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%81%A8%E9%A6%99%E6%B8%AF%E3%81%AB%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%8C/
3)寺田綾子. (2018, June 21). 香港で日本の農産物を売るには? 販売店に聞く日本産品のニーズ. マイナビ農業. https://agri.mynavi.jp/2018_06_21_29711/
4)吉野家. 香港網絡大典. https://evchk.fandom.com/zh/wiki/%E5%90%89%E9%87%8E%E5%AE%B6
5)Nhy. (2018, September 28). 香港の吉野家とはどんな感じか試してみる☆Yoshinoya in Hong Kong. Little Random Talks in 香港♪. https://eastmeadow.exblog.jp/30073958/
6)Yuriettmzk. (2021, May 16). 香港で大行列!日本のあの○○チェーン店. ドイツのケルン生活. https://ameblo.jp/yuriettmzk/entry-12674829889.html