【2022施政報告】最新人材確保措置、滞在サポートと優遇措置
前回の記事では、2022施政報告による新たに設立した人材誘致措置「高才通」と現有の入境優遇措置の最適化についてご紹介しました。
人材を確保した以上、長く滞在してもらわないと結局香港の人材不足は解決できなくなるので、人材誘致の措置とともに人材向けの滞在サポートと優遇措置も提案されました:
3. 海外人材サポート専門の窓口を設立
新設立の「人材サービス窓口(Talents Service Unit)」は政務司司長が主導し、下記のサポートを提供する予定です:
A. 香港で不足している人材の種類について積極的に調査し、人材探しの戦略を立てる
B. 各入境優遇措置でのビザ申請手続きについて、申請状況照会や不明時のサポートを行う
C. 海外人材が香港滞在中、子女の就学や日常生活などワンストップのサポートサービスを提供すること
また、「人材サービス窓口」が策定した戦略を実行し、戦略対象との連絡の取り合いやトップ100の大学への広報宣伝を行うために、17ヶ所の中国のオフィス及び海外の経済貿易代表部には「企業・人材誘致専門チーム」を設立する予定です。政府の情報筋によると、海外留学中の香港学生や海外勤務の香港人もチームの連絡対象となっており、イベント開催や香港の最新情報の提供を通じて、流出してしまった香港人材が香港に戻ってもらうように推進する方針です。
海外人材の誘致は期待が寄せられる一方、現有人材の確保は言及されていない
香港大学経済と経営学学院の経済学教授Heiwai Tang氏の意見では、政府自ら人材に連絡するのは望ましく、人材供給会社との提携を考慮に入れるべきとのことです。特に中小企業は従業員子女の就学手配までサポートするのが難しく、子供連れの海外人材にとって魅力的なポイントの一つです。
一方、民主党主席のLo Kin-hei氏は今回の施政報告における人材流出対策について、「海外から新しく人材を誘致することしか言及しておらず、香港に現有している人材の確保については全く言及されていない」と指摘しています。
4. 誘致した海外人材の確保
人材探し、人材誘致といった挑戦をクリアした後、重要なのは長く滞在してもらうことです。そのために、香港政府はこの2つの措置を提案しました:
A. 雇用された後、3年間滞在できる就労ビザを発行する
B. ビザ申請の手続きを今年より全面的にデジタル化する
また、人材確保措置の一環として、下記の条件を満たした場合は不動産購入時の印紙税(Buyer’s Stamp Duty、New Residential Stamp Duty)が還付されます:
・不動産購入時に、下記の6つの入境優遇措置と新設立の「高才通」のいずれかのビザを持っていること
・「一般就業政策(GEP)」、「中国人材入境計画(ASMTP)」、「優秀人材入境計画(QMAS)」、「非香港人卒業生に対する滞在・入境管理制度(IANG)」、「科学技術人材入境計画(TechTAS)」、「海外在住中国籍香港永住者2代目入境計画(ASSG)」
・香港で7年間居住し、且つ香港永住者になった者
・不動産の売買契約書が2022年10月19日以降に成立し、成立時申請者が香港での住宅の実質的支配者(beneficial owner)でないこと
・印紙税還付対象の不動産は印紙税還付を申請する時点で依然所有している不動産の中で、一番早く購入したもののみ
注意すべきなのは、Buyer’s Stamp DutyとNew Residential Stamp Dutyは還付されますが、「第2標準税率」で計算されたAd valorem stamp dutyは支払わなければなりません。
諸措置に対しての学者の意見
シンガポール社会科学大学(Singapore University of Social Sciences)ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーWalter Edgar Theseira氏の分析によると、印紙税還付の措置は人材誘致への効果が弱いとのことです。高度人材の収入は生活費や税金を難なく支払うことができるため、滞在地でのビジネス環境やチャンスの方を重視しているとのことです。「シンガポールのONE Passの目標は香港と競争することではなく、世界各国の人材争奪戦への対策だ。シンガポールはASEANとの関係が緊密で、フィンテック、法務や資産運用の方が得意;一方香港は中国とのビジネス引取にとって理想的な会社設立サイトで、保険などの分野が得意だ。両者は各自の優位性があり、共同に発展することができるはずだ。」
アメリカのクレムソン大学の元経済学部副教授のKevin Tsui氏はシンガポールで勤務したことがあり、シンガポールの海外人材向けの就業サポート制度を高く評価しています:「シンガポールでは従業員を雇用する際に配偶者も雇用し、子女の就学にもサポートしてくれている。それに対して香港ではこういったサポートがなく、より高い給料しか提供していない」Tsui氏は印紙税還付の措置について「悪くない」とコメントしていますが、香港市民に与える印象があまりよろしくないかもしれないと指摘しています。「バランスをとるための政策があったほうがいいだろう。現在のままでは不動産価格維持のため、もしくは外来者、特に中国人に便益を与える措置という印象を与えてしまっているかもしれない。」
人材争奪の要は海外人材が香港に就職する意欲だと、Tsui氏が語っています。「まずは環境を整えることだ。人が楽しく働けるようにしないと。例えば今のコロナ規制は緩和されたとしても、海外からの入境者は何回もPCRテストを受ける必要があり、万が一感染した場合は隔離施設に送られ、仕事の妨げになっている。こういった措置は多数の国の方針とはずれており、海外の人には不自由の印象を与えてしまう。」
厳しくなっている人材流出に向かって、2022施政報告で提案された対策が、特に現有人材の確保の面ではまだまだだと感じる人が多いかもしれませんが、人材誘致の措置は多数最適化される予定です。また、2年間実行した後措置の効果を検討して調整する予定もあり、今後の人材不足改善状況に注目すべきです。
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