香港法人設立の手順と事業形態
日本企業が香港に会社設立する際は、現地法人・支店・駐在員事務所という、主に3つの事業形態の中から選択をする必要があります。
下記ではそれぞれの事業形態別の手続き、設立の手順について解説します。
現地法人
香港の現地法人といえば、通常は有限責任会社を指し、「有限公司」と言います。香港に進出する日系企業の多くは、株式による私的有限責任会社を採用します。株主は個人でも法人でもよく、出資した金額を限度に責任を持つことになります。日本における株式会社に相当します。
近年、アジアで最も低い法人税率と容易な設立手続きのおかげで、香港で法人を設立する会社は増える一方です。駐在員事務所とは異なり、販売や営業といった収益に関連する業務が可能です。中国との経済協定により、中国との貿易をスムーズに行うことができます。
また、設立にあたっては、外資100%出資の会社を18歳以上の取締役1名と最低資本金1香港ドルから設立することができます。
設立の手順と必要書類
法人名の決定(類似商号の調査)
英文は必須で、中文の会社名は任意となります。英文の場合、「Limited」、中文の場合は、 「有限公司」を社名の最後につけることになります。
会社名が既に他社によって登録されていないか、類似商号がないかどうか確認します。一連の手続きは、専門家に依頼するのが一般的だが、商号はCyber Search Centreのウェブサイト(www.icris.cr.gov.hk)で事前の簡単な確認も可能です。
会社登記と商業登記の申請
【必要書類】
・設立申請書(Form NNC1)
・会社定款の写し
・会社登記所への通知書(IRBR1)
設立申請書(Form NNC1)には次の情報が必要。
・会社名
・現地法人の住所
・登録済の株式資本
・出資者の株式取得数
・出資者の同意書への署名
会社定款(Articles of Association)には次の内容を記載。
・会社名
・会社目的
・株主の責務(有限・無限責任)
・株主の出資額(有限会社のみ)
・資本金or株主の出資情報(株主会社のみ)
会社登記所への通知書(IRBR1)には次の内容を記載。
・3年間の商業登記証を選択しているかどうか
上記の書類と合わせて、法人登記手数料1,720香港ドルと商業登記手数料2,250香港ドル(1年間有効)、または5,900香港ドル(3年間有効)を支払う必要があります。
ネットで提出する場合は約1時間で登録書が発行され、郵送の場合は約4日間の作業日が必要とされます。
支店
海外法人の「香港支店」として進出する事業形態です。支店の役割も現地法人と同様ですが、香港に進出する場合は、日本法人(香港以外)による支店設立が認められます。
支店は、親会社名義で資金調達が可能です。その一方で現地法人と異なり法人格を持たないため、支店の責任はすべて日本の本社が負うことになります。駐在員事務所と違って、現地法人同様に、営業活動は可能ですが、本社と合算して申告・納税をする必要があります。決算においては、日本本社の財務文書を翻訳して提出する必要が生じます。
例えば、香港支店で稼いだ利益は香港分を除き、基本的には日本の法人税率分を支払う義務が発生します。そもそも香港外で獲得した利益は課税対象外ですので、香港会社設立の最大のメリットである低減率(法人税率16.5%、個人所得税標準税率15%)を享受することができなくなってしまいます。
設立の手順と必要書類
香港で支店を開設してから1カ月以内に、会社登記所に登録申請をしなければならない。
【必要書類】
・設立申請書(Form NN1)
・会社構成を示す法律文書の認証謄本(定款等)
・設立認可証(Certificate of Incorporation)の認証謄本(登記簿謄本でも可)
・最新の会計報告書の認証謄本
・商業登記所への通知書(IRBR2)
上記の書類は英訳済みの上、国際公証人による翻訳証明が必須です(翻訳者が日本在住であれば日本の公証、香港在住であれば香港の公証)。
設立申請書(Form NN1)には次の内容を含む。
・支店の設立日時
・香港・日本での拠点
・本社の事業所所在地
・取締役・秘書・支店の代表者に関する情報
登記手数料については、現地法人と同様の手数料が必要になります。しかし、支店は駐在員事務所と同様、商業登記証を毎年更新する必要があるため、原則として、1年有効な商業登記証を取得することになります。
支店も現地法人と同じように、会社登記申請と同時に商業登記申請を行うことができます。
設立手続完了後、銀行口座開設のため登記書類原本証明を準備し、銀行口座開設手続、事務所の賃貸契約、駐在員ビザ申請などの手続を行います。
駐在員事務所
海外で合法的に登記設立された企業がその一事業所を香港に設置した形態となります。香港の駐在員事務所は、他国と同様、販売や営業といった収益に絡む営利活動は禁止されています。主な業務内容としては、現地の市場調査、情報収集や品質管理といった業務になります。
駐在員事務所は、現地法人、支店と比較すると開設、閉鎖手続が簡単で維持管理が比較的容易です。香港での経費は、本店で負担となります。従業員の雇用も可能です。会計監査を受ける必要がなく、事業所得税は、原則課税は発生しないが、数年に1度、法人税申告書が税務局より発行される場合に対応するのみとなります。
一方、営業活動ができないという点と香港の低税率、税務面での優遇を受けることができません。
設立の手順と必要書類
駐在員事務所の手続きには、会社登記は不必要ですが、商業登記が必要です。商業登記の手続きは容易なため、現地法人や支店設立と比べると、簡単に設立することができます。
【必要書類】
・商業登記所への通知書
・商業登記証書
・倒産時賃金保護基金の証書
駐在員事務所の設立においては、商業登記料として2,000香港ドル、また、基金の課徴金として、250香港ドルが必要になります。また、毎年更新が必要なため、その都度、商業登記所へ商業登記料を支払う必要があります。
登記手続完了後、事務所の賃貸契約、駐在員ビザ申請などの手続を行います。
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