香港人口・労働市場の実態!2021年の統計発表
香港政府統計局による「香港の女性及び男性の主要統計数字 2021年版」が発表されました。この調査結果は毎年発表されているもので、人口構成をはじめ、教育、就労、医療、インターネットの普及率などまで、様々な分野について男女別で非常に細かいデータが載っています。2020年のデータのみでなく、過去のデータも載っているので、現在の香港社会での推移が分かる重要な指標です。この調査結果のデータに基づき、現在香港での実態についてご紹介します。
まずこの記事では、2019年~一連の事件による香港の人口・労働市場への影響についてご紹介します。次回の記事ではそれをもとにした人材採用の状況についてお伝えする予定です。
2019年からの事件による人口への影響
2019年~2020年の逃亡犯条例改正案の端を発する香港民主化デモ、香港国家安全法の施行、2020年~の新型コロナウイルス状況など、この2年間はこれらの事件が香港に経済面だけでなく、人口面と労働市場面でも大きな影響を与えました。
人口面からみると、香港の人口は数十年間増え続けていましたが、2020年のデータでは減少しました。その原因はこの数十年続けている出生率の低下以外、移民などでの人口の流出も考えられます。
統計局の調査結果によると、2020年時点での香港人口は外国人ヘルパーを含めて合計約7,481,800人(女性4 065 500人・男性3 416 300人)。
14年前の女性3 587 000人・男性3 270 100人と比べて、どちらも増加していますが、女性の方の増加率が男性の約三倍です。
しかし、注意すべきなのは、この激しい成長の中、2020年は唯一減少し、香港の人口は2019年より約2.5万人も減少しました。
香港中文大学の香港アジア太平洋研究所が、今年9月16日から25日にかけて、716人を対象に移住に関する電話インタビューを行いました。その結果、42%が「香港から移住を検討」、うち12%は「中国本土に移住を検討」と回答しました。
海外移住の検討理由では22%が「自由と人権」、18%が「海外の広々とした生活空間」をあげました。移住検討者の38.7%はすでに移住の準備を始めていると回答しており、人気の移住先はイギリス(26.1%)、カナダ(14%)、オーストラリア(11%)、台湾(7.5%)となっています。中国本土への移住検討の理由としては「香港の住宅価格高騰、窮屈な生活空間、物価の高さ、厳しい経済見通し」があげられました。
労働市場への影響
一方、労働市場では、就業者数が過去30年増える一方、2018年のデータ(2019年に調査したもの)から2年連続で減少しています。
過去30年間、香港の就業者数は1991年の約280万人から2020年の約389万人に、38.7%増加しました。その中でも、女性で増加した就業者数は899,900人(85.9%)増加し、男性の184,200人(10.5%)より大幅に超えています。女性の外国人ヘルパーの増加が一部の原因ですが、主な原因は女性の学歴向上・独身・婚姻年齢の上昇により香港本土の女性が就業者人口に加わったからです。
しかし、2019年のデータと比べると、男性の就業者数が103,100人減って2020年は1,806,000人になり、女性も同じく85,300人減で1,855,500人になりました。2018年のデータからも就業者数の減少が見られ、男女同様の2年連続の減少となります。
労働者数減少の原因
香港中文大学社会工作学系の黃洪副教授によりますと、
この現象について様々な原因がありますが、大きくは2つです:
1.卒業者数の減少
2.一部の就業者の労働市場離れ
特に労働市場離れについては更に3つの原因が考えられます:
1.早めの定年退職ーー50代・60代の人は本来はまだ労働力ですが、就職が難しいので求職せずに早めの定年退職を選んでいます。これは「就業意欲喪失者(discourage worker)」と呼び、政府の定義では失業ではなく労働市場から離れたと見なされます。
2.移民ーー30代の人が移民することを選び、労働市場から離れた事は近年よく聞かれます。
3.市場の衰退ーーこれはあくまで可能性ですが、雇用者が若年者を雇いたくない、かつ若年者も働きたくない為とも言われています。
まとめると、2019年からの一連の事件とその結果で香港人の未来への希望が揺らぎ、人口にも就業者数にも反映されています。特に今香港から移住したい香港人が増えているのが顕著です。
香港政府統計処が発表した完全版の調査結果はこちらのURLまでご参考ください:
https://www.censtatd.gov.hk/en/EIndexbySubject.html?pcode=B1130303&scode=180
では現在の香港ではどんな人材を探せるか、就業者が香港での収入と勤務時間のデータを含めて、次回の記事でご紹介したいと思います。
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