注目!アジアで広がっている人工肉食文化
前回の記事では、現在世界的に注目されている三種類の人工肉――代替肉、培養肉、発酵食品とその世界的市場についてお伝えしました。
今回は、アジア、日本、シンガポールと香港市場での人工肉業界の動きについてお伝えします。
日本でも人工肉業界が成長
日本でも、大豆由来の代替肉原料を開発・製造するスタートアップDAIZ株式会社が冷凍食品大手のニチレイフーズと業務提携を締結するなど、2019年から食品メーカーを中心に人工肉参入の動きが続いています。2019年12月には食肉大手の伊藤ハムが人工肉市場への参入を発表し、2020年1月には食肉業界最大手の日本ハムが人工肉市場に参入すると報じられました。
現在日本では大豆由来の代替肉商品が増え、例えば日本ハムの「NatuMeat(ナチュミート)」や伊藤ハムの「まるでお肉!」シリーズなどは日本のスーパーで発売されており、一般の消費者にも簡単に手に入れられるようになっています。
シンガポール政府が培養肉の販売を許可
2020年12月、シンガポールはアメリカのEat Just社から輸入の培養肉「Just Meat」の販売を許可しました。培養肉の販売許可はこれが世界初です。
植物由来の代替肉と違い、動物の細胞を組織培養するのコストが高いため、培養肉はまだまだ普及はしていません。Eat Just社がシンガポールで最初に発売する商品はチキンナゲットで、価格は当初50USDに設定しましたが、現在は高級鶏肉相当の価格まで下げ、「1880」というレストランで提供されています。
香港でのベジタリアン料理が人気に
香港大学の2018年の研究によると、香港は人口1人当たりの肉の消費量が世界で最も高い地域の一つで、毎日人口1人当たり664gの肉を消費しています。しかし、近年では動物飼育に伴う汚染や動物性脂肪の健康への影響に関心を持つ人が増加し、コロナ禍の2年間で代替肉を販売しているお店はどんどん増えています。
元朗(Yuen Long)にある健康食材販売店の責任者呉氏は「お客様一人あたりの消費額は約150香港ドル。代替肉の新トレンドで若いお客様から代替肉に関するお問い合わせが増えており、これからも代替肉の需要が増えていくと見込んでいる。」とコメントしました。
インポッシブル・フーズ社のNick Halla(ニック・ハラ)上級副社長は「パンデミックの前に、世界での提携飲食店は約2,000軒から2.4万軒に、11倍増加した。香港での提携飲食店も約250軒しかなかったが、パンデミック期間には約1,000軒と3倍に増加した。」と香港での代替肉トレンドについて説明しました。
2021年10月4日より、香港にある120軒以上の飲食店がImpossible豚肉を使った料理を提供し始めました。例えば、点心専門店の「添好運」はImpossible豚肉を使った点心と炊き込みご飯を提供し、飲食店チェーンの「美心MX」は45店舗に「燒汁茄子ImpossibleTM植物豬肉煲(ソースがけ茄子とImpossible豚肉の鍋」」を提供し始めました。その他にも、餃子専門店の「餃子源」、上海料理店の「王家沙花樣年華」やカツレツ専門店の「京都勝牛」など、料理の種類を問わず色々な飲食店が提携しています。
提携店のベジタリアン洋食カフェOVO CAFÉの黄経理は、植物由来の代替肉が2年前から飲食の新トレンドになっているとコメントしました。「香港でのベジタリアン飲食店が大幅に増加したので、様々なブランドから代替肉の食材を選ぶ際にはお客様の健康を考慮して食材の新鮮さで選んでいる。」
香港はインポッシブル・フーズ社の初の輸出地
香港市場に進出する足がかりとして、インポッシブル・フーズ社は飲食店から入る戦略を取っていました。「私たちはホテルや高級レストランからはじめ、そこにいる多くの上質な顧客から信用と評判を得ている。」香港の多様な食文化も人工肉の可能性を広げているとHalla上級副社長がコメントしました。「中国料理店は代替肉で中華肉まんや点心を作ったり、鍋料理店は代替肉を火鍋の具材として使ったりして、調理方法は色々だが、どちらも本物の肉と全く同じ。」
Halla上級副社長は香港消費者の消費習慣についても注目しました。「香港の消費者はアメリカと比べてより健康と栄養に関心を持っている。例えば抗生物質やホルモン剤が使用されているか、タンパク質や鉄分が多く含まれているか、脂肪やカロリーが少ないか。人工肉のメリットは栄養から成分まですべて生産中に調整できること。」
2012年に設立した、ベジタリアン食文化と低炭素社会を推進している香港の社会的企業Green Mondayも代替肉の生産に参入しています。同社が開発した「OmniPork」は香港で有名な餃子ブランド「湾仔碼頭」とコラボし、植物由来の豚肉で作った豚肉餃子を販売しています。生活のペースが早い都会人に合わせるため、同社が「OmniPork」を使ったインスタント麺料理やインスタント点心などを「OmniEat」シリーズとして販売し、パンデミック期間に売上が約5倍増加しました。
発展の方向性として、今後はより多くの食品を開発し、販売代理店を増やす以外、グループのレストランGreen Commonの店舗を増やすのも重点的な方向だとGreen Mondayの創設者楊大偉(David Yeung)がコメントしました。「顧客に写真を撮らせるために実店舗の設立もとても重要だ。」
MAYプランニングでは、香港市場への進出に関わるサポートを行っています。現地飲食店とのコラボレーション、現地スーパーでの販売サポートなど幅広いマーケティングソリューションを提供しております。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
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