採用担当者必見!シンガポールVS日本での教育システムと採用事情
人材採用にあたって、学歴が条件とされているのはよく知られています。
特に新卒応募者は社会人経験がないため、入社後に教育されていく中で読解力や理解力などの潜在能力をどれくらい発揮できるかを見極める為、学歴要件が重視されているポイントの一つです。
転職の応募者でも、職務経歴書や面接だけではなかなかその人の能力を全て知ることが難しいため、「この学歴であれば、これくらいの知的好奇心、論理的思考力や直観力はあるだろう」と考える採用担当者が多いです。転職・求人サイトDODAのデータによると、60%の求人は学歴を問い、44%は大卒以上を求めています。
ニュースサイトの「まいどなニュース」が日本全国の人事・採用担当者300人を対象に「採用時のバイアス(偏り・偏見)に関する調査」を実施したところ、「自社の採用時の評価に関する学歴の影響」について、「やや影響している」(36.3%)、「かなり影響している」(5.7%)をあわせて42%の人が「影響している」と回答したそうです。また、「学歴が影響している理由」については、「基礎能力があると判断できるから」(50.8%)、「活躍人材を採用したいから」(46.8%)、「業務能力が高い可能性があるから」(45.2%)という回答が続きました。
今回の記事では、シンガポールと日本の教育システムと採用事情を比較してご紹介します。
シンガポールでの教育システムについて
シンガポールの教育システムはイギリスの植民地時代の影響を大きく受けており、日本の教育制度と比べるとかなり複雑です。
日本の義務教育が小学校の6年間と中学校の3年間、合計9年間の普通教育が含まれているのに対し、シンガポールの義務教育はPrimary School(小学校)までとされています。
Primary Schoolを卒業する際に、Primary School Leaving Examination(PSLE)という今後の進路決定を大きく左右する全国統一テストを受験しなければなりません。
受験結果によって進路が7つのレベル別コースに分けられ、Secondary(中学校)以降は学力別の教育機関に通い、大学進学のコース或いは技術系の学校(ITE・Institute of Technical Education)進学コース、各自希望の教育機関への最短経路が決まります。
シンガポールで大学へ進学するには、PSLE以降もOレベルとAレベル両方のGCE(The Singapore-Cambridge General Certificate of Education)の合格が求められます。
GCEのOレベルとは、Ordinary Level(GCE O-Level)を指し、各教育機関の入学資格として機能しています。Oレベルの合格を経て、次はAレベル(GCE A-Level)へと進みます。
Oレベルに合格すると、基本的にJunior Colleges/Centralised Institute 、Polytechnics、ITEもしくはArts Institutionsに進学する権利が得られます。
Aレベルに合格すると、ローカル大学に進める権利を与えられます。
PSLEでの成績があまり良くなくても個人の頑張り次第で大学進学もできますが、優秀層より長い年月がかかるため実際の進学率は低いようです。
そのため大学進学を希望する際には、小学校卒業時点で受験するPSLEがとても重要になっており、初等・中等教育が全員同じ年月をかかり、進路が一般的に高校時代で決められる日本の教育システムとは全く違います。
シンガポールでの上位教育機関
・シンガポール国内トップ大学
A levelに合格した者、もしくはローカルのPolytechnic出身の優秀層のみが進学する下記の6校になります:
・シンガポール国立大学National University of Singapore(NUS)
・南洋理工大学Nanyang Technological University(NTU)
・シンガポールマネージメント大学Singapore Management University(SMU)
・シンガポール工科デザイン大学Singapore University of Technology and Design(SUTD)
・シンガポール工科大学Singapore Institute of Technology(SIT)
・シンガポール社会科学大学Singapore University of Social Sciences(SUSS)
中でもシンガポール国立大学 、南洋理工大学の2校がQS社による世界大学ランキング(World University Rankings)で常に総合トップ100位以内に入っています。
2022年のデータによると、シンガポール国立大学(NUS)は総合で世界11位で、南洋理工大学(NTU)は総合で世界12位になっております。その他、シンガポールマネージメント大学(SMU)もビジネス管理学科で世界36位、会計ファイナンス学科で世界49位にランクインしており、比較的に高い評価を得ています。
・その他私立大学
シンガポール人の中にはイギリスやオーストラリアなど海外大学出身の人も多くいます。
シンガポール国外の大学の方が国内の大学よりも様々な専攻を学べるなどメリットがあります。シンガポールの国内の大学の場合、オンライン学習がメインとなります。
・シンガポールのPolytechnic
エンジニアなど理工の人材育成が主な役割の教育機関です。IT、健康、科学、メディアやデザインに関する専攻学科も提供しています。
シンガポール国内には、Nanyang Polytechnic、Republic Polytechnic、Temasek Polytechnic、Ngee Ann Polytechnic、Singapore Polytechnicの5校しかありません。
・Diploma Certificate(Kaplanなど)
日本でいうと高校卒業資格に近いイメージがあります。
専門知識や資格を修得し、私立大学に進むケースが多くあります。
・ITE(Institute of Technical Education)
PolytechnicやArts Institutionsに進む一歩手前の段階で、5つのPolytechnic同様シンガポール教育部の教育機関の一つです。
工学、会計、マネージメント、看護、医薬品、建築や法律などの専門的課程と実習トレーニングを提供しています。
シンガポールでの採用について
シンガポールで人材採用する際、日系企業のほとんどが大学卒業(Bachelor’s Degree)を求めています。
そして、現在では専門職の需要が高く、実務経験、異文化コミュニケーション力や問題解決力など学校で教えられていないスキルがよく求められており、大学卒業であっても新卒の就職がより難しくなっています。
一方、今どきの応募者について、Kelly Services社の副社長Mark Hall氏がCNBCのインタビューで「今のシンガポールでは、多くの応募者、特に大卒の方は、給与など金銭的利益よりのみでなく、企業の種類や業種などの要素を重視している。卒業生はよく色々な役職を試し、最終的なキャリアパスを決める前にある程度の実務経験を積み重ねるのが一般的だ」と語りました。シンガポールでは転職が当たり前であるため、日本の伝統的な「終身雇用」の概念とは相当違います。
では、シンガポールでの人材は企業に何を求めているのでしょうか。シンガポールの求人プラットフォームGlints社はシンガポールの新卒応募者が企業に一番求めている点をいくつか挙げました:
1. ワーク・ライフ・バランス
2. 自分自身の能力に基づいた適切な給与
3. 昇進するチャンス
4. メンタリング
5. 仕事場で活かせるトレーニング機会
6. 企業の長期ビジョン
専門職や即戦力が求められている今、人材採用で学歴以外にも重要な考慮点が色々あるはずです。シンガポールの教育システムでは大学以外にもPolytechnic、Arts InstitutionsとITE、3つの高等教育機関が専門的な課程を提供しており、大卒ではなくてもこの3種類の高等教育機関の資格を持つ応募者も考慮に入れてはいかがでしょうか。
また、最終的なキャリアパスが決まる前に転職回数が多い傾向があるシンガポールの候補者にとって働き続けたい企業であるために、企業の仕事環境やサポート内容などを定期的に見直すべきでしょう。
次回の記事では、香港の教育システムと採用事情を日本と比較しながらご紹介する予定です。
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