【シンガポールM&Aの基礎①】登記簿謄本「BizFile(ビズファイル)」とは?

今回から7回に渡り、「シンガポールM&Aの基礎」として、シンガポールでビジネスを展開する上で欠かせない情報について掘り下げていきます。
シンガポール企業のM&Aを検討されている方はもちろん、企業を目指す方、また単にシンガポールビジネスのに興味をお持ちの方にとっても有効なガイドとなります。

第1回目では、シンガポールで法人を登記する際に必須となるBizFile(ビズファイル)について、その意義や入手方法をご紹介します。
BizFileに記載される詳細、さらに、シンガポールの行政サービスにアクセスできるオンラインアカウント「Singpass(シングパス)」の役割についても説明します。

世界経済のハブであるシンガポールで成功するために、「シンガポールM&Aの基礎」のシリーズで基礎情報を抑えておきましょう!

BizFile:シンガポール企業の登記簿

BizFileは、日本の登記簿謄本に相当するシンガポールの公的な登記簿です。

日本では上場企業の情報や財務諸表しか閲覧できませんが、シンガポールではより透明性の高いアプローチをとっています。
民間企業であっても、必要な情報や財務諸表をシンガポール政府に、特に会計企業規制庁(ACRA)に提出することが義務付けられています。

このような透明性の高い取り組みにより、BizFileは未上場企業と上場企業の両方に関する豊富な情報を提供し、シンガポールのビジネス・エコシステムに関する比類ない洞察を提供しています。

BizFileに記載される会社情報

BizFileを取得すると、登録された会社に関する多くの貴重な情報にアクセスすることができます。

ここでは、Bizfileに記載されている主な情報をご紹介します:

登録番号(Registration No.)登録時に企業に割り当てられた固有の識別番号。
会社名(Company Name)
[以前の社名 ※該当する場合のみ(Former Name if any)]
会社の正式名称。
社名変更があった場合は以前の社名も記載。
設立日(Incorporation Date)会社が設立された日付。
法人種別(Company Type)会社の法人種別。
事業内容(Activities)会社の事業内容。
資本金(Capital)会社の資本金額(発行株式も含む)。
登記住所(Registered Office Address)会社の正式な登記住所。
最終年次総会開催日(Date of Last AGM)会社の直近の年次総会開催日。
最終年次報告書日付(FYE As At Date of Last AR)会社の直近で年次報告された決算日。
会計監査法人(Audit Firm(s))会社の財務諸表の監査を担当する会計監査法人に関する情報。
役員/公認代表者(Officer(s))会社の取締役と秘書役などの詳細(氏名、住所、国籍、ID番号など)。
株主(Shareholder(s))会社の株主に関する情報(氏名、住所、国籍、身分証明書番号、保有株式数など)。

BizFileの取得方法

BizFileの取得には、シンガポールの様々な行政サービスにアクセスできるオンラインアカウント、Singpassの保有が必要です

BizFileの取得方法は以下の通りです:

1.Singpassを取得する
Singpassは、シンガポール市民、シンガポール永住権保有者、就労ビザ保有者、家族ビザ保有者、ロングステイビザ保有者など、15歳以上の個人が取得できます。
Singpassの公式サイトの申請フォームにてご自身の名前やFIA(外国人登録番号)あるいはNRIC(国民登録番号)を入力してお申し込みいただくことで完了します。
オフラインで申請する場合、パスポートとビザを持参のうえ、シンガポール国内に点在しているSingpassカウンターに行くことでも申請を行うことができます。

2.ACRAの公式サイトでBizFileを購入する
Singpassを保有していれば、ACRAの公式サイトから誰でも取得(購入)することができます。
2023年6月現在、BizFileの取得費用は1社につき5.50SGD(約585円)です。

BizfileはPDF形式で発行され、リース契約の締結やオンライン取引時の情報提供など、様々な用途に便利で簡単にアクセスできます。

Singpass:シンガポールの行政サービスへの鍵

SingpassはBizFileの取得に欠かせないだけでなく、シンガポールの様々な行政サービスをオンラインで利用することができます。
例えば、個人所得税の申告、納税状況の確認、CPF(中央積立基金)の残高の確認などが可能です。

個人情報の保護とオンライン取引の安全性を確保するために、Singpassではログインにパスワードワンタイムパスワードの両方を必要とする2段階認証を採用しています。

BizFile、シンガポールのビジネス情報へのゲートウェイ

BizFileは、シンガポール企業の詳細なビジネス情報にアクセスするのに最適なリソースです。
日本のそれとは異なり、BizFileは非公開企業・公開企業を問わず、登記詳細、財務諸表、株主データなど、重要な企業情報を提供しており、起業家、投資家、シンガポールのビジネス環境に関心のある方にとって貴重なツールとなっています。

一方、Singpassがあれば、BizFileだけでなく、シンガポール政府が提供する多数の行政サービスを利用することができます。
このオンラインアカウントにより、CPFの残高確認や税務申告、さまざまな重要サービスへのアクセスが便利になり、シンガポールでビジネスを開始する際にはぜひ申請しておきましょう。

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MAYプランニングでは、企業デューデリジェンスのサポートを行っています。また、BizFileの情報を基づいた競合分析やパートナースクリーニングなどについてのアドバイスも提供しております。