学歴証明が厳格化。シンガポールの就労ビザ(EP)の新しい申請フロー

シンガポールのEP(Employment Pass)は、外国人材がシンガポールでプロフェッショナルや経営・管理職として働くための登竜門です。今回の記事では、資格基準から2023年9月に導入された新しいポイント制度COMPASSまで、EP申請に当たる最新情報をご紹介します。EPを取得する方法、学歴の審査が厳しくなる理由とその意味について理解しましょう。

シンガポール就労ビザ(EP)の概要

シンガポールのEPは、シンガポール国内で専門職、管理職、経営幹部の内定を獲得し、特定の資格基準を満たした外国人向けの就労ビザです。申請には、有効なパスポート、英語での卒業証明書、学歴証明書などの必要書類の提出が必要です。申請が承認されると、申請者は最初のビザで最長2年間滞在できます。更新時の最長滞在期間は3年間です。給与要件は業種によって異なり、金融業は最低 5,500 SGD、その他の業種は 5,000 SGDとなっています。これらの基準額は、申請者の実務経験、年齢、学歴などの要因によって異なります。例えば、40代半ばの経験豊富な申請者の場合、給与要件が最低 10,500 SGDに達する可能性もあります。

その他、下記の要件と詳細は申請者の給与によって異なります:

4,500~5,999 SGD6,000~19,999 SGD
※2023年9月よりは6,000~22,499 SGDに変更
20,000~ SGD
※2023年9月よりは22,500~ SGDに変更
MyCareersFutureでの求人広告従業員10名以上の会社には必要
※公正な雇用の観点で、10名以下でも実施推奨
従業員10名以上の会社には必要
※公正な雇用の観点で、10名以下でも実施推奨
必要ではない
家族ビザの申請不可可能可能
家族ビザの対象者不適用配偶者、21歳未満で未婚の子供配偶者、21歳未満で未婚の子供
家族ビザ所有者の就労不適用EP・S Pass・Work Permitなどの
就労パスの取得により可能
EP・S Pass・Work Permitなどの
就労パスの取得により可能

新規EP申請のフロー(2023年9月1日以降)

シンガポールにおけるEPの申請フローには、2023年9月よりCOMPASSと呼ばれる新しいポイント制度が導入され、給与水準やスキルといった個人属性項目と、国籍の多様性やローカル人材へのサポートなどの企業属性項目で適格性が評価されます。(こちらの記事もご参考ください:シンガポールEPの新審査システムCOMPASS

ここでは最新の新規EP申請フローについて確認しましょう:

  1. MyCareerFutureでの求人広告
    申請書を提出する予定の雇用主は、外国人を雇用する前のシンガポール人に対する公正な雇用配慮の証明として、まずシンガポール政府の求人プラットフォームMyCareerFutureに求人広告を出さなければなりません。
  2. 自己診断ツール(Self Assessment Tool、SAT)にて給与要件を確認
    申請の手続きに進む前に、申請者の役職、年齢、資格、実務経験に基づき、EP取得における給与要件の最低額を確認します。
  3. COMPASS
    2023年9月1日よりの新規申請、2024年9月1日よりの更新申請に対し、新しいポイント制度COMPASSが導入されます。
    COMPASSの基準をクリアするには合計40ポイント以上を獲得することが必要です。
  4. 学歴証明
    学歴を証明するには、シンガポール労働省(MoM)が選定した第三者検証機関による証明書を添付する必要があります。
    平均の処理期間は、特に問題がない場合で約2~3ヶ月かかります。
  5. EPの申請
    会社のシンガポール現地拠点がスポンサーとなり、申請者のEPを申請します。
  6. 仮承認のレターを受領
    申請が承認された場合、仮承認(IPA)のレターが発行されます。
  7. カードの発行
    MoMの指示に従って、写真撮影・指紋登録完了後、EPカードが発行されます。

注意すべくのは、現在のEP所有者であっても、別のシンガポール法人に移籍する場合は新会社からの新規申請になるので、COMPASSや第三者機関の認証などを含む上記の最新フローが適用されます。

学歴証明に関する変更点

2021年7月、MoMは、年間平均660人の外国人が資格詐称によりシンガポールでの就労を永久に禁止されたことを判明しました。それらの外国人労働者による学歴詐称に関する事件を受け、MoMは、就労パス申請の完全性を確保するために厳格なアプローチをとっています。

この変更により、大学を卒業した申請者は、認証のために厳選された身元調査会社の利用を義務付けられています。また、ポイント制度COMPASSの導入により、中等教育修了証書以上の資格を持つ申請者には最低10点が与えられ、正当な学歴の重要性が強調されます。外国人申請者の資格カテゴリー(C2)での点数を求める場合、学歴証明書をMoMが指定した会社に大学から直送し、その認証証明書によって学歴を申告するのが必須となりました。

C2カテゴリーでの点数を特に必要ない場合はこのプロセスを取らなくてもいいですが、申請での不確定性を排除し、スケジュールを短縮できるメリットがあるので取ることがおすすめです。現在のMoMの説明によると一度取得した認証証明書に有効期限はないので、将来のEP更新や新規EP申請にも使えます。

しかし、世界で日々厳格化が進んでいる個人情報保護法により、第三者からの学歴照会に応じない大学も一定数存在します。また、第三者による学歴照会に対応している大学であっても、大学所定の委任状に署名して提出させたり、学歴照会専用サイトから申請させたり、第三者の住所への直接送付を希望する理由の説明を申請者に求めたりするなど、独自の申請プロセスを持っています。第三者からの学歴照会に対する大学の対応スピードが、大学や照会時間、大学事務担当者のスピードによって異なり、対応予定時間が公表されないため、スケジュールが読みにくいというデメリットがあります。そのため、第三者機関へ認証を依頼しても、申請者本人の方が学歴証明書の原本を第三者機関に直送するように大学に申し込んだほうが手続き的にスムーズになります。

これらの措置は、EP申請がより手間にかかり、全体的な処理時間を延長する可能性がありますが、教育資格の信憑性を保護する上で重要な一歩であり、最終的にはシンガポールの労働市場における公正と信頼を促進します。

まとめ

規制が厳しくなっている時代において、シンガポールのEPを理解することは、シンガポールへ進出する企業と外国人材にとってとても重要です。COMPASSの導入と厳格な学歴確認要件は手続きの複雑さを増すかもしれませんが、シンガポールが公正な雇用慣行に取り組んでいることを示し、最終的には労働市場の整合性の維持、シンガポールが人材とイノベーションの世界的なハブであり続けることを保証するものです。

お気軽にお問い合わせください

MAYプランニングでは、シンガポールのEP申請に関するサポートを行っています。また、EPの規則に関する最新情報を引き続きアップデートし、COMPASSでポイントを獲得できる要件やMyCareerFutureでの求人広告などについてのアドバイスも提供しております。