【世界が日本ブランドに抱く印象とビジネスチャンス⑥】日本ブランドがタイ市場で勝つためのポイント
タイは、日本企業にとって重要な海外市場の一つです。日本の製品やブランドは、タイの消費者から高い信頼を得ており、特に食品、化粧品、電化製品、自動車分野において強い競争力を持っています。今回の記事では、タイ市場における日本ブランドのビジネスチャンスをデータをもとに分析し、今後の戦略について考察します。
タイにおける日本ブランドの評価
タイの消費者は、日本製品を「高品質」「信頼性が高い」「洗練されている」と評価しています。特に、家電製品や自動車は長年にわたって市場での地位を確立しており、日本企業のブランド力が浸透していることが伺えます。また、日本の化粧品やスキンケア製品も「安全性」「高品質」といったイメージを持たれており、若年層を中心に人気を集めています。
日本ブランドへの関心の高さは、訪日旅行者の購買データからも読み取れます。2023年のデータによると、日本を訪れたタイ人旅行者の約60%が家電製品を購入し、50%以上が化粧品を購入しています。これらのデータは、タイ国内市場においても日本ブランドに対する強い需要があることを示唆しています。
一方で、価格競争の激化により、中国・韓国メーカーの台頭が見られます。コストパフォーマンスを重視する消費者層に対しては、独自の価値提案が求められます。
食品市場におけるビジネスチャンス
日本食ブームの影響もあり、日本食品の輸入量はASEAN諸国の中で最も多く、日本ブランドの食品は広く受け入れられています。特に以下のカテゴリーがタイ市場で成長の可能性を秘めています。
- 即席食品・スナック:タイの即席麺市場は年間約500億バーツ規模に達しており、高品質な日本製即席食品の需要も高い。
- 健康志向食品:タイでは健康志向が高まっており、特にオーガニック食品や機能性食品市場は前年比10%以上の成長を記録。
- 日本産飲料:緑茶や日本酒、クラフトビールなどの市場が拡大しており、高所得層の約35%が定期的に購入。
- 調味料・発酵食品:味噌や醤油の市場は、前年比20%以上の伸びを示しており、タイの家庭料理に取り入れられつつある。
化粧品・スキンケア市場の可能性
タイの消費者はスキンケアへの関心が高く、日本の化粧品ブランドは「高品質」「安全」「肌に優しい」といった点で高い評価を受けています。
- 美白・UVケア製品:タイの強い日差しの影響もあり、美白やUV対策商品が市場全体の40%以上を占める。
- ナチュラル・オーガニック製品:オーガニック化粧品の市場は前年比15%増加しており、今後も成長が見込まれる。
- 男性向けスキンケア:タイの男性美容市場は年率12%の成長を遂げており、特に20代・30代の男性がスキンケア製品に高い関心を持つ。
タイ市場でのマーケティング戦略
日本ブランドがタイ市場で成功するためには、現地の消費者ニーズに適応した戦略が必要です。
- デジタルマーケティングの活用
タイではSNSの普及率が非常に高く、Facebook、Instagram、LINEが主要なプラットフォームとして活用されています。特にInstagramとTikTokでのインフルエンサーマーケティングは、高い効果を発揮します。タイの消費者は製品を購入する前に、ソーシャルメディアでの口コミやレビューを確認する傾向が強く、企業側もターゲット層に合ったインフルエンサーを活用することが有効です。 - 現地パートナーとの協業
タイ市場に精通した現地企業との提携により、流通網の確保や消費者インサイトの獲得が可能になります。特に、ShopeeやLazadaなどのECプラットフォームとの連携が成功の鍵となります。タイではEC市場が急速に拡大しており、2023年時点でのEコマース市場規模は約3兆バーツに達すると予測されていました。日本ブランドも、現地の流通企業と協力しながら、スムーズな物流と配送システムを確立することが求められます。 - ローカライズ戦略
商品パッケージやプロモーションをタイ市場向けに適応させることで、消費者の関心を引きやすくなります。例えば、タイ語表記のパッケージを採用することで、消費者の認知度を高めることができます。また、現地の味覚や嗜好に合わせた製品開発も重要です。例えば、甘みの強いスナックが好まれる傾向があるため、日本の食品ブランドがタイ向けにカスタマイズしたフレーバーを提供することで、受け入れられやすくなります。 - ブランドストーリーの強化
日本ブランドの「伝統」「こだわり」「品質の高さ」といったストーリーを明確に伝えることで、消費者の信頼を得ることができます。特に、タイの消費者は製品の背景や企業の理念に関心を持つ傾向があり、製品の製造プロセスや原材料へのこだわりを伝えることが有効です。たとえば、日本の伝統技術を活かした化粧品や食品は、特に高所得層に支持されています。 - サステナブルな取り組みの強化
環境問題への関心が高まる中、エコフレンドリーなパッケージや持続可能な製造プロセスを採用することが、ブランド価値の向上につながります。特に、タイ政府もプラスチック削減や環境保護に積極的に取り組んでいるため、サステナブルな商品は市場での競争力を持ちやすいです。
今後の展望と課題
タイ市場での日本ブランドの成長には大きな可能性がありますが、いくつかの課題も存在します。
- 価格競争への対応
日本製品は高品質である反面、価格が高めであることが競争の壁となる可能性があります。タイの消費者はコストパフォーマンスを重視する傾向があるため、日本ブランドは価格競争を避けるために「プレミアム戦略」を取るか、現地生産を行うことでコストを抑える方法を検討する必要があります。 - 物流インフラの整備
現地での迅速な配送や在庫管理の強化が求められます。特にEC市場の拡大に伴い、即日配送や翌日配送のニーズが高まっています。物流センターを現地に設置し、配送の効率化を図ることが成功の鍵となります。 - 現地の規制・法律の理解
特に食品・化粧品分野では、輸入規制や認証取得が必要となるため、進出前に十分なリサーチが必要です。たとえば、食品の安全基準に関する規制が厳しくなっており、日本の食品メーカーは適切な認証(FDAタイ版)を取得する必要があります。 - 競争環境の変化
中国・韓国ブランドとの競争が激化しており、日本ブランドは独自の付加価値を示す必要があります。特に、韓国の化粧品ブランドはタイ市場で急成長しており、価格とトレンドを意識したマーケティング戦略を展開する必要があります。
まとめ
タイ市場は、日本ブランドにとって成長の余地が大きい魅力的な市場です。日本製品の品質の高さや信頼性を活かしつつ、現地消費者のニーズに適応したマーケティング戦略を展開することで、さらなる市場拡大が期待されます。特にデジタルマーケティングの強化、ローカライズ戦略の推進、現地パートナーとの協業が成功の鍵となるでしょう。
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MAYプランニングでは、タイ市場参入戦略築や競合分析と価格戦略立案に関するアドバイスを行っています。また、現地パートナー企業のマッチング、ECプラットフォーム(Shopee・Lazada等)での販売戦略構築や輸入手続き・認証取得などについてのサポートも提供しております。
参考:
1)JNTO 訪日旅行誘致ハンドブック 2021(東南・南アジア7市場編)第1章 タイ 外国旅行の動向. JNTO. https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/thailand/thailand02.pdf