グローバルドローントレンドの最前線を探る①日本、香港、台湾

近年、ドローン技術は著しい進化を遂げ、従来の軍事用途や趣味の領域を超え、農業、物流、インフラ点検、防災といった幅広い商業分野において急速に実用化が進んでおります。市場規模においても、2024年時点で600億ドルを超える商業用ドローン市場が、2034年には1兆4,000億ドルを超えるまでに成長すると予測されています。今回の記事では、日本、香港と台湾におけるドローン市場の動向を整理し、企業が今後のビジネスや投資戦略を検討する上で参考となる視点を提供いたします。

ドローントレンド:世界での現状

現在、世界のドローン市場は急成長しており、商業分野での応用も急速に広がっています。商業用ドローン市場は2024年に約600億ドルに達し、2034年には約1兆4,458億ドルまで成長すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は約37%と非常に高い水準です。ドローンサービス市場も同様に、2024年には約246億ドル、2034年には約5,556億ドルに拡大する見通しで、CAGRは36.6%に達します。

応用分野では、農業における作物モニタリングや農薬散布、物流・配送での活用が進んでいます。特に配送ドローン市場は、2023年の18億ドルから2028年には123億ドルまで成長が見込まれており、CAGRは46.5%に達するとされています。その他にも、インフラ点検、測量、映像・写真撮影、防災など幅広い用途が拡大しています。

政府の政策と規制の方向性

日本:官民連携による制度整備と技術開発
日本は「ドローン国家戦略」のもと、2022年にレベル4飛行(有人地帯での補助なし飛行)を解禁し、物流やインフラ点検、災害対応への活用を促進しています。

・産業別の活用事例:
 物流:楽天やANAが山間部での医薬品配送実験を実施中。
 インフラ点検:NTTやトヨタが橋梁やダムの監視システムを開発。
 農業:クボタがドローンによる精密農業サービスを提供。
・国産ドローンの育成:
 政府は中国製ドローン依存を減らし、国内メーカーの成長を支援する政策を展開。
・無人航空機の法整備:
 2024年の航空法改正により、より多くのドローン飛行エリアの拡大が予定されている。

出典:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/pdf/drone_report2.pdf

香港:低空経済の推進と規制の緩和
香港政府は「低空経済」の発展を重要視し、ドローンの商業利用を促進するための規制緩和を積極的に進めています。2024年3月、運輸及物流局は38件のドローン試行プロジェクトを承認し、物流、巡視・監視、測量などの分野での実証実験を開始しました。また、2025年までに低空域の管理制度を構築し、2027年には全面運用を目指しています。

・物流ドローンの試験運用:
 順豐(SF Express)やJD.comなどが離島向けの配送実験を進めており、特に南丫島や長洲島向けの輸送実験が成果を上げています。
・インフラ点検の拡大:
 高層ビルの構造安全チェックや橋梁の点検にドローンが導入され、作業効率とコスト削減の両面で期待されています。
・スマートシティ構想:
香港科技園(Science Park)と政府機関が共同で、ドローンを活用したリアルタイム都市監視システムの開発を進めています。

台湾:先進的な規制環境と新たなビジネスモデルの形成
台湾政府はスマート交通システムの一環としてドローン導入を推進し、2025年までに低空域管理システムの構築を進めています。

・農業での活用:
 屏東県ではドローンを活用した農薬散布が一般化
・ドローンデリバリーの市場拡大:
 台中市では食品配送実験を進め、2026年までにドローンデリバリーの市場規模を大幅拡大。
・災害対応:
 台風や地震発生時の救援物資輸送や被害状況調査にドローンを活用。

出典:https://www.caa.gov.tw/article.aspx?a=188&lang=1

物流業界の需要とビジネス機会

物流業界におけるドローンの活用は、各国の地理的条件や物流網の発展状況に応じて異なる成長の道筋を描いています。

香港
離島や山間部への迅速な配送を実現するため、ドローン配送が積極的に実験されています。特に、都市部の渋滞回避や人手不足解消の手段として注目されており、今後はeコマースの発展とともに商業化が進む見込みです。

日本
高齢化に伴う労働力不足が深刻化しており、特に過疎地域では従来の物流手段が限られています。これにより、ドローンによる生活必需品や医薬品の配送が重要な役割を果たすと期待されています。

台湾
食品や医薬品配送のニーズが急速に高まりつつあり、政府の支援を受けた物流企業がドローンサービスの拡大を図っています。

地理的条件と適合性

香港

香港の地形図
出典:https://hkss.cedd.gov.hk/hkss/en/publications-and-resources/educational-materials/hong-kong-geology/chapter-9/index.html

香港は高層ビルが密集する都市環境のため、都市部でのドローン飛行には厳格な規制があるものの、離島や山間部では物流用途を中心に活用が進んでいます。特に、フェリーでの輸送が困難なエリアでは、ドローンが新たな輸送手段として期待されています。

日本

日本の地形別面積比率
出典:https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary07

日本は広大な国土を持ち、都市部と地方部でドローンの活用状況が大きく異なります。特に過疎地域や災害多発地域では、従来の輸送手段に代わる手段としてのドローンの利用が加速しており、政府もインフラ整備を進めています。

台湾

台湾の地形図
出典:https://okke.app/words/p/y2oxiQ2TAspTf

台湾は山岳地帯が多く、災害時の救援活動や農業利用に適した環境が整っています。比較的緩やかな規制のもと、ドローンを活用したビジネスモデルが早期に確立される可能性が高いです。

市場の成長予測と課題

日本
政府と企業の積極的な投資により、2025年までに5000億円規模の市場成長が見込まれており、特に地方部での活用が拡大すると予想されています。日本は地震や台風といった自然災害が多く、公共安全分野(消防・警察・捜索救助)の災害対応でのドローン利用が加速するとの見込みです。また、農業分野では、高齢化・人手不足を背景に、スマート農業用ドローン(種まき、農薬散布、作物モニタリングなど)の導入が進めており、特に中山間地域や大規模農場においての完全自律型ドローンの導入が進展しています。2022年にレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が解禁され、法規制の整備により今後は都市部での商業利用(配達など)も加速する可能性があります。

香港
政府主導の低空経済政策のもと、ドローン産業が今後数年で急成長すると予想され、2028年までに市場規模が10億香港ドル(約170億円)に達すると見られています。高密度都市・インフラ密集地である香港では、交通流監視、群衆管理、建物点検など、都市用途でのドローン活用が拡大する可能性があります。制限の多い都市空域においても、配送や倉庫管理などロジスティクスにおける小型ドローンの実証実験・導入が進めてはいますが、商業利用には香港民航処(CAD)の承認が必要で、今後の市場成長は規制緩和や制度整備の進捗が課題です。

台湾
現在は農業や災害対応への応用が進み、2026年までに市場規模が数百億台湾ドル規模に達すると予測されています。台湾のハイテク産業(半導体・製造業)では、設備監視や測量のためのドローン導入が進展しており、特に精密な空撮やセンシングが求められる場面で需要が高まっています。一方、政府補助金や政策支援により後押しで、平地や山間地の農地では、農薬散布や灌漑、作物監視に特化したドローンの導入が進む見込みです。また、台風や地震などの自然災害と地政学的なリスクへの備えとして、国土保全・河川監視・山間部インフラの定期点検におけるドローン活用が広がっています。

まとめ

ドローン産業は、技術革新と政策支援により、今後の成長が確実視されています。香港では低空経済や都市型物流が進展し、日本では社会課題解決型のドローン活用が進んでいます。台湾も防災や農業分野で導入が加速しています。この成長市場において、事業参入のみならず、投資家にとってもM&Aや出資による戦略的関与が有望です。特に新興企業や特定分野に特化したスタートアップへの投資は、高いリターンが期待できるでしょう。ドローン産業を「空のインフラ」として捉え、事業・投資の両面で関与することが、今後の競争力強化に繋がります。

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MAYプランニングでは、日本、香港、台湾など各地域における市場特性や成長機会、ドローン関連の法規制や政策の動向に関するアドバイスを行っています。また、ドローン業界の企業買収や投資機会の探索、政府支援プログラムや助成金の活用と進出支援などについてのサポートも提供しております。

参考:
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3)Commercial Drone Market Size, Share, and Trends 2024 to 2034. (2024, August 29). Precedence Research. https://www.precedenceresearch.com/commercial-drone-market
4)KDDI、自動配送を30年実用化 ドローン・車を一体制御. (2024, December 6). 日本経済新聞. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC04AM30U4A201C2000000/
5)ドローン物流の全貌を徹底解説!仕組み・活用方法・最新事例と未来展望. (2025, February 13). Aidiot. https://aidiot.jp/media/logistics/post-7867/
6)2025年のドローン物流革命:市場規模、技術革新、そして課題. (2024, September 20). Reinforz Insight. https://reinforz.co.jp/bizmedia/57943/
7)Regulatory Sandbox Pilot Projects Officially Launched to Foster Low-Altitude Economy and Innovative Industry Development (with Photos/Video). (2025, March 20). The Government of the Hong Kong Special Administrative Region Press Releases. https://www.info.gov.hk/gia/general/202503/20/P2025032000179.htm?fontSize=1
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10)黃郁婷. (2022, September 19). 台灣無人機物流計畫啟動,未來如何發揮關鍵作用?【獨立特派員】. 公視新聞網. https://news.pts.org.tw/article/600515