【香港の電子決済サービスまとめ2025①】大手銀行運営の「PayMe」と「BoC Pay」はどう進化したか
「香港の電子決済サービスまとめ2025」では3回に渡り、現時点香港における主要な電子決済サービスを6つご紹介します。1回目は、香港の大手銀行が運営する電子決済サービス「PayMe」と「BoC Pay」です。
香港での生活に欠かせない、またビジネスにおける決済シーンでも頻繁に登場する決済の最新情報をぜひ抑えておきましょう。
香港の決済事情
世界の潮流にもれず、香港の決済事情も急速に進化しています。店舗内とオンラインではクレジットカードが主流でしたが、電子マネーの利用は急速に増加しており、2026年にはクレジットカードを上回ると予測されています。また、2027年には利用者が2百万人超との予測もあります。
一方、A2A(Acount to Acount、銀行口座直接引き落とし型の決済サービス)決済が急増しており、2026年までにeコマース市場シェアの18%を占めると予測されています。電子マネーの普及により現金は消えつつあり、香港もハイテク主導の金融時代に突入しています。
HSBCが運営する「PayMe」
PayMeの基本情報
運営:HSBC
初リリース:2017年2月7日
対応OS:iOS、Android
対応言語:英語、中国語(繁体字・簡体字)
対象:香港の電話番号と銀行を所有している香港ユーザー
送金形式:P2P、P2M
ユーザー数:320万人以上(2024年まで)
対応企業数:10万以上(2024年11月まで)
公式サイト:https://payme.hsbc.com.hk/en/personal
PayMeは、銀行間取引を促進する香港の先駆的なP2Pモバイル送金アプリとして、2017年2月7日にデビューしました。
地元のEコマース大手であるHong Kong TV Shopping Network(HKTVmall)と協力し、PayMeは2018年6月に企業側と提携し始め、同年にPerson-to-Merchant(P2M)ソリューションの計画を発表しました。
2019年初頭、P2Mの商取引を導入した「PayMe for Business」を発表しました。
この躍進により、マクドナルド、セブンイレブン、Wellcomeなどの有名企業を含み1万以上の企業や店舗が対応し、2022年5月に香港政府が消費券配布の提携運営者の1つとしてPayMeを加えることによりユーザー数と対応企業・店舗数がさらに増加し、同年11月までには3万以上が対応しているようになりました。
また、2022年11月までにユーザー数が約290万人を達し、香港の消費者決済領域で50%という驚異的な市場シェアを誇っています。
2024年8月より、UnionPayと連携し、香港外34ヶ国・地域の3,400万加盟店・オンライン決済にも対応可能になりました。
送金の仕組み
PayMeでは、ユーザーはクレジットカードやリンクされた銀行口座を経由して、電子マネーをチャージしたり、知り合いや店舗に送金したり、残高を返したりすることができます。
HSBCの口座のみでなく、香港の銀行であればどの銀行の口座もクレジットカードも決済できます。
個人間(P2P)送金には、WhatsApp、FBメッセンジャー、SMSのメッセージだけでも可能で、その場合はQRコードも必要なし、相手の銀行口座番号は必要ありません。
一方、集金するための「支払いリクエスト」機能は、いつでもどこでも利用でき、即時取引が可能な便利なツールです。
・個人版では、手数料無料で、 携帯電話番号、専用URL、QRコードによるP2PおよびP2M取引が可能です。
・ビジネス版の「PayMe for Business」では、消費者はQRコードをスキャンすることで幅広い小売店やオンラインショップに支払いできます。
標準手数料は、PayMe for Businessアプリを使用した取引には1.2%、PayMe API(統合ウェブサイトやモバイルアプリなど)やPOS端末を使用した取引には1.5%かかります。
ビジネス版の登録には携帯電話番号、メールアドレス、HSBCのビジネスeバンキング口座が必要ですが、政府の消費券での支払いに対応できる他、下記のメリットがあります:
・PayMeのパートナープロバイダーが提供するPOSデバイスを介して支払いを受け取るか、または既存のPOSシステムに直接統合でき、柔軟で拡張性が高いです。
・PayMe for Businessアプリ、API、POS端末のいずれを使用して支払いを収集する場合でも、PayMe for Business専用の管理プラットフォームを無料利用でき、お客様の取引や販売実績がまとめられ、リアルタイムの取引履歴も一目で確認できるため、販売戦略の策定やビジネスの成長に役立ちます。
中国銀行(香港)が運営する「BoC Pay」
BoC Payの基本情報
運営:中国銀行(香港)
初リリース:2018年7月15日
対応OS:iOS、Android
対応言語:英語、中国語(繁体字・簡体字)
対象:メールアドレスと香港の住所、香港・中国・マカオの携帯電話番号を所有、18歳以上で国籍が中国・香港・マカオの香港居住者
送金形式:P2P、P2M
ユーザー数:118万人以上(2024年年末まで)
対応企業数:70,000以上
公式サイト:https://www.bochk.com/en/more/ebanking/bocpay.html
中国銀行が運営するBoC Payは、香港居住者のためのクロスボーダー決済に新しい解決策となっています。
主な特徴はこちらです:
・ 銀聯QRコードまたはFPS(Faster Payment Service)のQRコードに対応している店舗で支払いできます。 中国では、銀聯QRコード対応の店舗での支払いも可能です。
・P2P個人間送金はFPS経由のため、電話番号・メールアドレス・銀行口座番号・FPS IDまたはFPSのQRコードのどれも可能です。
・外貨口座を所有しなくても、ユーザー自身の中国口座のみでなく、他の中国居住者へのクロスボーダー送金も可能です。
・クーポンをポイントと交換したり、BoC Payでクーポンの照会や利用ができます。
・「e‑CNY Zone」で、デジタル人民元の領域対応が導入されており、CBDCパイロットへの参加など、アジアにおける金融インフラ連携が進んでいます。
中国へのクロスボーダー送金
BoC Payの利用で、クロスボーダー送金は従来より便利にできますが、いくつかの注意点があります:
・ユーザーは中国銀行(香港)口座の所有が必須です。
・送金先は中国の身分証明書が必須です。
・送金先の口座は中国銀行、中国農業銀行、中国工商銀行など中国で主要な7銀行のみ対応しています。
・送金額は一回ごと最低2,000香港ドルで、每日の送金上限は10,000香港ドルです。
・両替は自動的に行われ、 為替レートは、毎日午前11時頃に更新される当日銀聯の為替レートに基づきます。
・手数料は、香港ドル送金額の1%(20~60香港ドル)で、送金人が負担します。
・送金確認後は取り消し不可となっています。
ビジネス版の「BoC Bill Merchant」
商取引のできるビジネス版では、電子マネーサービス共通のQRコード支払い機能の他、下記の特徴があります:
・企業や店舗のスタッフに「レジ係」としての権限を与え、代金の受け渡しと返金をサポートすることができます。
・売上をリアルタイムチェックできる機能で、データの分析と統計が行いやすくなります。
・顧客のBoC Pay、銀聯QRコード、Alipay、WeChat PayとFPSのQRコードで集金できます。
注意すべきのは、BoC Bill Merchantを申請するのに中国銀行の香港法人口座を所有する必要はありませんが、香港のBusiness Registration Certificate番号と電話番号を提供する必要があります。
また、このビジネス版のアプリでの取引限度額は、一回毎600香港ドル(顧客がQRコードをスキャンして金額入力する場合)または2,500香港ドル(企業・店舗側が金額を設定し、顧客にQRコードをスキャンして支払ってもらう場合)で、1日累計4,000香港ドル、1ヶ月累計80,000香港ドルとなっています。
利用手数料について、年会費は現在キャンペーン中につき無料で、取引には0.5%の手数料がかかります。
まとめ
PayMeとBoC Payは、近年着実に成長を続けており、香港の電子決済市場における主要プレイヤーとしての地位を強化しています。
PayMeは、ユーザー数が300万人を超え、加盟店数も10万店以上に拡大。さらに、2024年からはUnionPayとの連携によって海外34の国・地域でも利用可能となり、香港内外の利用シーンが大きく広がっています。これにより、地元ユーザー向けの日常的なP2P送金にとどまらず、国際展開を視野に入れた決済インフラへと進化しています。
BoC Payも、利用者数が順調に増加し、BoC Billとの連携による請求支払い機能や、デジタル人民元対応(e-CNY Zone)の導入など、銀行系ならではの機能性と信頼性を強みに、着実にユーザーを広げています。とりわけ、公共料金や医療機関との連携など実用的な利用シーンの多さが特色です。
香港における電子決済市場は、PayMe・BoC Payの2強に加え、AlipayHKやWeChat Pay HK、Octopus(八達通)などのローカル強豪もシェアを広げており、多様な選択肢が共存する成熟市場となっています。特に近年は国際利用・法人向け機能の強化が差別化のカギとなっており、各社のアップデート状況を把握することがビジネス活用においても重要です。今後も、企業・店舗側としては決済手段の多様化に対応する柔軟性が求められ、同時にキャッシュレス対応が顧客満足度や回転率向上にも直結する時代になってきています。電子決済導入を検討する際には、手数料やユーザー層だけでなく、長期的な機能拡張性や国際対応力にも目を向けることが重要です。
お気軽にお問い合わせください
MAYプランニングでは、香港の電子マネーや電子決済に関するサポートを行っています。また、個人や企業の需要に応じた最適な電子マネーサービスの選定などについてのアドバイスも提供しております。