「大量退職時代」の到来!人材リテンションで注意すべき点

2021年、世界各国で、特に欧米など比較的経済回復が早かった国では、「大量退職時代(The Great Resignation)」を迎えました。サービス業やブルーカラー職のみでなく、ホワイトカラー職も大量に退職しています。HBS(Harvard Business School)の調査によると、一番退職が増えているのが、通常の若い世代でなく30~45歳のミッドキャリアで、2020年に比べ2021年は平均20%以上増えているとのことです。その原因はコロナ禍を経て、労働者を取り巻く環境や労働者自身の志向、価値観に大きな変化が起こっているからだといわれています。

給料を上げることや福利厚生の改善は従来の人材リテンションの方法ですが、「大量退職時代」がトレンドになっている今、従業員たちはそれらよりも価値のある項目を優先的に考えるようになっています。例えば仕事内容やワークライフバランスなど。

この記事では、「大量退職時代」に向け、企業側が人材リテンションで注意すべき点をご紹介します。

従業員エンゲージメント(Employee Engagement)

Adobe社とEconsultancy社が今年2月に発表した「2022デジタルトレンド:APACに注目(2022 Digital Trends – APAC in Focus)」のレポートでは、作業環境及びマーケティング環境のデジタルトランスフォーメーションで従業員のストレスを減らす以外に、人材流出を避けるためには、より多くの休日、より柔軟な勤務時間やメンタルケアなどの福利厚生はもちろん、もう一つ大切なのはプロフェッショナルなトレーニングや従業員への激励により、「従業員エンゲージメント」を上げることだと述べました。

「従業員エンゲージメント」とは、企業に対する従業員の思いや態度、仕事へのモチベーションを表す言葉です。従業員のモチベーションが高く、日常の仕事に意義と目的が得られる場合、仕事のできが良くなり、その上、上司、同僚や取引先からもその努力が称賛されます。これらがまた「従業員エンゲージメント」が高まる要素になり、従業員にとっても企業にとっても好循環になります。

「大量退職時代」と人材争奪戦が現状である今、「従業員エンゲージメント」を育てることがとても重要です。

エグゼクティブサーチ会社WeCruitrのCEO、Jack Kelly氏によると、管理職は、従業員がオフィスにいても在宅勤務でも満足する「従業員エンゲージメント」を維持する責任があるとのことです。「管理職は従業員で共有できる、信頼・尊重・称賛とキャリアパス重視の企業文化と価値観を創り出すべきだ」とコメントしました。

一方、従業員が企業の価値観に賛同することも大事です。チームスピリットのある従業員を持っている企業はより強くなり、取引先の満足度や業界でのリーダーシップを高めることができ、求人や人材リテンションにとって理想的です。

「従業員エンゲージメント」を高めるために、Kelly氏は従業員に仕事の「所有権」を与えることが必要だという意見です。従業員を起用することにより、管理職は従業員を信頼し、充分な自由を与えるべきで、その従業員にとって有効的な方法で仕事を完成させるのです。例えば指定した時間帯にオフィス勤務を強いることよりも、従業員自身に一番合った方法で仕事を完成させた方が「従業員エンゲージメント」や仕事の成果は理想的なものになるでしょう。

それと同時に、主管者は生産力に集中すべきです。ここでの生産力は所要時間ではなく、各従業員が各自にとってベストの作業方法で自分の作業時間と場所を管理することを指しています。

実績をねぎらうこともとても大事です。「どんなに小さい成果でも、企業は従業員の努力を称賛すべきだ」とKelly氏がコメントしました。

授業員の努力が公に承認或いは奨励された場合、他の従業員にも励みになり、企業全体の「従業員エンゲージメント」を高めることができます。

柔軟さ(Flexibility)&ウェルビーイング(Well-being)

LinkedIn社が発表した「2022世界人材トレンド(2022 Global Talent Trends)」はプラットフォームでの数十億件の投稿、数百万人の従業員ユーザーと成功企業について調査・分析し、コロナ禍で従業員は雇用主との関係を再検討するようになっているとの結論を導き出しました。分析では、優秀な人材を引きつけ・確保・発展させるために、企業は現存の企業文化を微調整、或いは徹底的に改造しなければなりません。もし従業員が企業文化に満足しない場合、最悪退職してしまう可能性があります。

従業員は仕事する場所、時間及び方法への柔軟さを期待しています。彼らはもうオフィスにいる時間を業績の基準として判断しなくなり、代わりに結果重視の企業を求めています。従業員が企業の柔軟さに満足している場合、喜びが2.6倍も増え、他の求職者にその企業を薦める可能性も2.1倍増加します。

多くの従業員はウェルビーイング重視の企業を優先的に選びます。調査によると、従業員は人が自分の仕事に関心を持つと感じる場合、仕事中に喜びを感じる可能性が3.2倍増え、他の求職者にその企業を薦める可能性は3.7倍も増加します。「従業員の身体的、精神的福利厚生を優先的に考える企業文化を育てる為、やはり経営者層から始めなければいけない。エンパシーの持っている企業のトップからその企業文化を受け入れ、柔軟さのある仕事計画や健康的な作業の習慣を自分自身で実行し、実際に示すことが有効である」とのコメントがあります。

これらの要素により、企業はその企業文化と価値観を改めて見直さなければならないし、現職では満足できない場合、従業員が現在の勤務先から離れる可能性も高くなり、求職行動が増加します。調査によると、2019年と比べて、2021年の求職者が応募する前に、閲覧する求人広告件数が2倍増えて、求職者が以前よりも熟考するようになっていると見られます。

企業文化の発展が加速している中、時代遅れにならないように企業や組織は現状を見直し革新しなければなりませんと、LinkedIn社の最高人事責任者のTeuila Hanson氏がコメントしました:「この『大量退職時代』を機に新たな企業文化と環境を創り出し、従業員一人ひとりに最善な仕事をこなさせ、最高の生活をもたらす。」

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