【2020年版】香港所得税制度と申告手順を解説

今年も香港での給与所得税(Salaries Tax)の申告の時期となりました。毎年4月に入ると、香港税務局(IRD)から給与所得税に係る申告書が雇用主宛に発行され、5月に入ると個人宛にも別途申告書が発行されますが、2019/20年度に限り、香港における民主化デモ並びに新型コロナウイルスによる政府機関の業務への影響もあり、発行日が6月1日となりました。各申告書とも申告期限があり、提出を怠ると罰則(通常は罰金のみ、悪質な場合は禁固刑の規定もあります)の対象になる可能性があります。

毎年恒例ではありますが、改めて香港の給与所得税制度について、申告から納付までの流れを解説していきます。

給与所得税制度

香港では日本と異なり、個人の給与の申告対象期間は、税務局の課税年度に従って、毎年4月から翌年3月末日までの1年間です。給与所得税は、香港で勤務または就業したことから発生する収入に対して課税され、コミッション、賞与、チップ、手当、その他臨時収入、香港で提供されたサービスに対する収入および年金も課税対象に含まれます。日本の源泉徴収制度と違って、香港では会社から受領した給与支給状況表の写しを基に、税務局に確定申告を行う必要があります。

税率と所得控除

給与所得税の税率は標準税率15%と、段階的な2~17%の累進税率との選択制となり、結果として給与の規模に応じて納税額に差が出ます。最終税額は次のように計算した金額のいずれか低い方となります。

標準税率の場合
税額は所得控除後、人的所得控除前の課税対象所得に標準税率15%を乗じた金額となります。

累進税率の場合
税額は所得控除及び人的所得控除後の課税対象所得に以下の累進税率を乗じた金額となります。

課税所得累進税率
HK$50,000まで2%
HK$50,001からHK$100,000まで6%
HK$100,001からHK$150,000まで10%
HK$150,001からHK$200,000まで14%
HK$200,001以上17%

所得控除項目一覧

人的所得控除項目2020/21年度
香港ドル
2019/20年度
香港ドル
基礎控除  
 未婚者132,000132,000
 既婚者*264,000264,000
扶養子女控除 – 第1子から第9子まで(1人につき)  
 誕生年度240,000240,000
 翌年度以降120,000120,000
扶養父母・祖父母控除(1人につき)  
 納税者と同居/別居(60歳以上)100,000/50,000100,000/50,000
 納税者と同居/別居(55歳~59歳)50,000/25,00050,000/25,000
扶養兄弟姉妹控除(1人につき)37,50037,500
寡婦(夫)控除132,000132,000
障害者手当75,00075,000
扶養障害者控除(1人につき)75,00075,000
*既婚者でその配偶者に課税所得が発生していないか、 配偶者とともに合算申告を選択した場合に認められます。
その他の控除(限度額)2020/21年度
香港ドル
2019/20年度
香港ドル
業務上必要な自己学習費用控除100,000100,000
介護老人福祉施設控除100,000100,000
住宅借入金控除*100,000100,000
退職金給付に対する強制積立金18,00018,000
年金保険料及びMPF任意上乗せ積立金60,00060,000
任意医療保険制度での保険料(受益者1人につき)#8,0008,000
慈善寄付金課税所得の35%まで課税所得の35%まで
*控除期間:20年
#納税者と指定した家族

2019/20年度の特別控除
2018/19年度でもあったいわゆる「1回限りの特別控除」が2019/20年度でも実施されます。2019/20年度の最終所得税額に対し、上限を2万香港ドルとして100%の控除を享受できることとなります。したがって、例えばある独身の方の2019/20年度の最終給与所得税額が2万5千香港ドルだとすると、上限である2万香港ドルが控除され、5千香港ドルが2019/20年度最終支払所得税額となります。

税金申告までの流れ

雇用主支払い報酬申告書(Employer’s Returns of Remuneration and Pensions, BIR56A & IR56B)
毎年4月初旬に税務局より企業宛に「雇用主支払い報酬申告書」が発行されます。
雇用主はその書類に税年度期間(前年度4月~今年度3月)内に支給した給与手当を、各従業員個人別に記載し、発行から1ヶ月以内に税務局に提出する必要があります。

個人所得税申告書(Tax Return – Individuals, BIR60)
毎年5月に入ると、個人宛に税務局から「個人所得税申告書」が届きます。
会社から受領した給与支給状況表の写し(IR56B)を基に、給与賃金、休暇手当、コミッション、賞与、教育費、本国支給給与手当および会社負担の家賃・税金等を記入して、発行から1ヶ月以内に税務局に提出する必要があります。なお、ここでは雇用主に限らず、その他の事業収入(例えば家賃収入等)も含みますのでご注意ください。

*2019/20年度に限り、香港における民主化デモ並びに新型コロナウイルスによる政府機関の業務への影響もあり、個人所得税申告書の発行は6月1日となりましたので、税務局への提出期限は7月2日までとなります。

インターネット経由での所得税申告
eTaxシステムを利用することで、インターネット上での所得税申告が可能となり、提出期限は自動的に1ヶ月延長されます。具体的には、個人所得税申告書に記入して税務局に提出する代わりに、同じ内容をインターネット上で完結させる事ができます。

香港居住者であれば以下のサイトから利用登録が可能です。http://www.gov.hk/en/residents/taxes/etax/etax_account.htm

確定税額通知書(Assessment Demanding Final Tax and Notice of Provisional Tax, IRC6401)
個人所得税申告書を提出してから数ヶ月後(大体8月~11月頃)、税務局は、上述した雇用主支払い報酬申告書と個人所得税申告書を基に給与所得税を算出し、計算結果と共に「確定税額通知書」を各個人宛に送付します。

この通知書では、翌年度分の税金も前年実績を基準に算定されています(予定納税制度)。特に香港勤務初年度においては、最初の2年分をまとめて納税する必要がある可能性(雇用開始通知書(IR56E)を提出し、かつ予定個人所得税申告書(BIR60C)が発行される場合は、先に初年度分の予定納税が必要となります)にご注意ください。

納税期日
香港では2回に分けて納税ができます。実際の納税期限は、確定税額通知書上に明記されていますが、申告書を提出した該当年度分全額と翌年度予定納税分の75%が翌年1月、残りの25%が翌年4月に支払われるのが通例です。

*2018/19年度に限り、香港における民主化デモ並びに新型コロナウイルスによる政府機関の業務への影響もあり、2020年5~6月頃まで納付期限が延長、2020年4月8日付でさらに3ヶ月間延長され、同年8~9月頃となっています。

2020/21年度の給与所得税は下記の簡易計算機で収入金額およびその他の控除を入力するだけで自動で計算されます。ぜひお試しください。
https://www.ird.gov.hk/eng/ese/st_comp_2020_21_budget/stcfrm.htm

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