【香港の電子決済サービスまとめ2023③】香港発の「Tap & Go」と「八達通」
「香港の電子決済サービスまとめ2023」の3回目は、香港発の電子マネーサービス「Tap & Go」と「八達通(オクトパス)」をご紹介します。両者とも香港の大手企業が運営するサービスで、アプリと同時に物理的なカードとしても使えるのが特徴です。
家庭の支出管理に特化した「Tap & Go」
Tap & Goの基本情報
運営:HKT Payment Ltd
初リリース:2015年7月26日
対応OS:iOS、Android
対応言語:英語、中国語(繁体字)
対象:11歳以上で香港・マカオ・中国の携帯番号、及び香港・マカオの身分証明書/マカオ・中国のパスポート/往来港澳通行証(EEP、TWP)の所有者
送金形式:P2P、P2M
ユーザー数:360万人以上(2023 年3月まで)
対応企業数: クレジットカードとして使用できるため、世界中該当カード対応の実店舗・オンラインショップで使用可能
公式サイト: https://www.tapngo.com.hk/eng/index.html
電子マネーといえば、全部アプリで完結、店舗がその個別なサービスに対応しないと使えないイメージですが、Tap & Goの特徴はクレジットカードとして使うことがメインとなっているところです。
Tap & Goは1つのアカウントで、物理的なクレジットカード、QRコードとバーチャルクレジットカード、幅広い支払い方法を提供しています。アプリ自体がMastercardと銀聯のバーチャルクレジットカードカードとなっており、店舗がMastercardと銀聯のNFC支払いに対応していれば、物理的なカードを持っていなくてもデビットカード感覚で使用可能です。また、UnionPayアプリ(銀聯カードでのみ)、ApplePayやGooglePay Walletと連携でき、利用方法をさらに広げることができます。そのため、世界中の対応企業・店舗・オンラインショップのカバー率がとても高いです。
支出管理に力を入れているサービス
Tap & Goは11歳より利用可能で、親が子供や家族の支出を管理できます。
各支出を飲食・ショッピング・健康などのカテゴリに自動的に分類する機能で、早い段階で子供に金銭管理を学ばせることができます。1つのメインアカウントで最大5つのサブアカウントを管理でき、サブアカウントへの送金・残高と利用履歴の確認、サブアカウントが取引した際の通知受信、サブアカウントのオンライン支払い機能の許可など様々な機能を利用できます。
その他、「Share Bill」はレシートの金額を簡単に分割して相手にリマインダーをを送信でき、皆の支払状況を確認できる、割り勘にはとても便利な機能です。集金にとって肝心なP2P送金ですが、Tap & GoではFPS(Fast Payment System)システムを使っており、相手がTap & Goアカウントを持っていなくても、普及率の高いFPSシステムで送金できます。
他の電子マネーではそのサービス自身のシステムでクロスボーダー送金を実現していますが、Tap & Goのクロスボーダー送金はWestern Unionとの連携で行っています。Western Unionが対応している世界各国の銀行や電子マネーサービスが200以上あり、受取人が所在地に銀行口座を持っていなくても世界中525,000以上の代理店で現金を受け取れます。
ビジネス版に多様な決済方法
ビジネス版は運営のHKTが提供しているHKT Merchant Serviceとなります。
HKT Merchant ServiceはFPS向けの決済サービス、16種類の決済方法に対応するPOSシステム、それぞれの業界に適するカスタマイズO2Oソリューションやオンラインショップ向けのオンライン決済サービスを提供しています。必要書類は申請者の身分証明書、法人口座の月間明細書と商業登記証(Business Registration)のみが必要で、最短10分で登録完了できます。
世界電子マネーの先駆「八達通(オクトパス)」
八達通(オクトパス)の基本情報
運営:Octopus Cards Limited
初リリース:2012年 7月 25日(アプリ版、カード版は1997年9月導入)
対応OS:iOS、Android
対応言語:英語、中国語(繁体字)、インドネシア語、フィリピン語
対象:制限なし、レンタルカードや観光客向けカードも提供している
送金形式:P2P、P2M
カード発行数:2,000万枚以上
対応企業数:18万以上(バーチャルクレジットカードでのみ対応の企業を除く)
公式サイト:https://www.octopus.com.hk/en/consumer/index.html
香港人の誰でも必ず1枚は持っているとも言え、98%の普及率を誇る、それが八達通(オクトパス)です。
オクトパスは香港返還直後の1997年9月に正式に導入され、非接触型決済システムの先駆けであるソニーが開発した非接触型ICカード規格「FeliCa」を世界で初めて採用し、その成功は世界各国や地域における電子マネーシステム開発のモデルとして参考となっています。 運営のOctopus Cards Limitedはその経験を活かし、オランダ、中国の長沙、ニュージーランドのオークランド、アラブ首長国連邦のドバイなどで電子マネーシステムの開発契約を獲得しました。
最初の頃はバス、地下鉄やフェリーなどの公共交通機関のみで利用されていましたが、2000年に入ってからは有料トンネル、駐車料金などの公共サービス、そして小売・飲食業などへ次々と拡大されました。Octopus Cards Limitedのデータによると、1日の取引件数は1,500万件を超え、取引額は3億香港ドルを超えている規模で、香港の経済や日常生活にとって必要不可欠です。
普及に更に貢献した形態や利用方法
オクトパスはカードレス化の前でも、カードのみでなく、腕時計・キーホルダー・ぬいぐるみ・アクセサリー、伸縮ロッドなど他の形態のオクトパスも販売されています。デザインもとても多様で、ディズニーやサンリオの他、ドラゴンボール、クレヨンしんちゃんや魔法の天使クリィミーマミなどのアニメとのコラボ商品も販売されており、ユーザーは自身の好みで使いやすい形態を選ぶことができます。
レンタルカードや観光客向けのカードは身分証明書類などを提出しなくても使えますが、個人版のカードでは持ち主の氏名、写真(提供されている場合)、年齢や住所などの個人情報が記録されています。そのため、決済の他、オフィスビルやマンションなどのセキュリティーシステムの鍵としても、各教育機関の生徒の出席カードや会社の出社記録カードとしても利用でき、その他の分野への応用にも大きく広げてきました。
アプリ版では、支出カテゴリ自動分類の管理機能、物理的カードのチャージ機能の他、アプリでの残高はMastercardと銀聯のバーチャルクレジットカードとしての利用やP2P送金もでき、交通機関の定期券購入も可能です。
決済をより便利にしたビジネス版アプリ
オクトパスのビジネス版アプリOctopus for Businessは、物理的カードでもオクトパスQRコードでも取引可能です。スマホにNFC機能があれば別途に読み取り機を設置しなくても取引に支障なく、スマホ自身が従来の読み取り機として使えます。読み取り機を使用する場合、最新版のオクトパスモバイルPOSは従来の読み取り機より小さくて軽いもので、Octopus for Businessをインストール済みのAndroidまたはiOSデバイスとBluetoothでペアリングすれば取引できます。
申請するには最近3ヶ月間の法人口座月間明細書と商業登記証(Business Registration)が必要で(法人形態によってElectronic Extractも提出必要な場合があります)、手続きが完了する際にオクトパスモバイルPOSが1台無料で提供されます。
アプリには「オーナーモード」と「店員モード」に分かれており、店員モードでは取引履歴の照会など日常運営に関わる基本機能があり、オーナーモードでは追加にアカウント管理や売上を銀行口座へ振り込むことなど管理的な機能が付いています。銀行口座への振り込みはFPSシステムを使用されており、毎月や毎週自動に行うことも設定でき、手作業による管理や振込の手間を省けます。また、取引履歴や売上高のレポートをメールで送信することもできます。
まとめ
これらの香港大手企業が運営している電子マネーサービスを利用するメリットは、データプライバシーが安心的で、対応企業もユーザーも普及率が高くて現地の日常生活へのサポートが心強いことです。また、サービスの歴史が比較的に長くて、香港人にとって信頼性が高いです。
今回ご紹介した2つのサービスを比べると、Tap & Goの方は支出管理に役立つ機能があり、サブアカウントの権限管理もできるので、家族には特に適しています。クロスボーダー送金サービスは、Western Unionとの提携により、世界中の525,000店以上の代理店で現金の受け取りが可能で、国境を越えた送金が便利で利用しやすくなります。ビジネス向けのHKT Merchant Serviceは、FPS、POSシステム、オンライン決済サービスなど多様な決済方法を提供し、様々なビジネスニーズに対応しているのが魅力的です。
一方、オクトパスの現地での高い普及率は個人にとって日常生活で使いやすく、飲食業や小売業などの企業にとっては香港現地でのビジネスを強化することに役立ちます。用途も決済の他、セキュリティーキー、教育機関の出席カード、会社の出勤簿など、用途性が広いです。
企業側にとって、コンパクトで軽量なデザインのモバイルPOSとスマートフォンの組み合わせにより、決済プロセスが効率的で、FPSシステムによる自動銀行振込などの機能も備えており、企業の手作業による管理を最小限に抑えます。
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