【シンガポールM&Aの基礎②】財務諸表の作成・提出期限はいつ?

「シンガポールM&Aの基礎」第2回目では、財務諸表について取り上げます。

シンガポールでM&A(企業の合併・買収)を行う場合、日本企業からは財務諸表の公表が遅れることに対する不満の声がよく聞かれます。この問題を理解するためには、シンガポール会社法が定める規制と期限について知る必要があります。
今回の記事では、財務諸表を含む年次報告や税務申告などに関連する期限をご紹介します。M&Aを行う企業にとって重要な事項となるためしっかりと理解しておきましょう。

シンガポールM&Aの基礎シリーズの過去記事はこちら

シンガポールにおける、財務諸表の提出スケジュール

シンガポールでは、非公開会社の監査済み財務諸表の作成プロセスにはいくつかの段階があり、特定のスケジュールに従わなければなりません。

それに関わる主なマイルストーンと期限について見ていきましょう:

株主総会:
シンガポールの会社法では、株主総会は決算日から6ヶ月以内に開催しなければなりません。
同法では、株主総会の少なくとも14日前までに財務諸表を株主に送付しなければならないと規定されていますが、株主総会は実際の会議ではなく、書面決議によって行われることが多いです。

ACRAへの財務諸表提出:
財務諸表は、株主総会から1ヶ月以内に会計企業規制庁(ACRA)に提出しなければなりません。
この期限は事実上、監査済み財務諸表の作成期限となります。

実際の作成期限】
株主総会は書面決議で行われることが多いため、監査済み財務諸表の実質的な作成期限は、
「会計年度終了後6ヶ月(株主総会の開催期限)+1ヶ月(ACRAへの提出期限)=会計年度終了後7ヶ月」となります。

年次報告の提出期限

シンガポールにおける企業に関する規定を確実に遵守するために、企業は特定の期限を守らなければなりません。

監査済み財務諸表と年次報告に関する主な期限を見ていきましょう:

年次総会の開催期限:
最初の会計年度については、シンガポール法人は設立から18ヶ月以内に年次総会を開催しなければなりません。
その後、年次総会は暦年に1回、前回の総会から15ヶ月以内に開催されなければなりません。
また、年次総会は、決算日から6ヶ月以内(上場会社は4ヶ月以内)に開催しなければなりません。

ACRAへの年次報告提出期限:

シンガポール企業の場合年次総会から30日以内。
年次総会の開催期限が6ヶ月であることを考慮すると、年次報告書の標準的な提出期限は決算日から約7ヶ月となります。
外国企業のシンガポール支店の場合親会社の年次株主総会から60日以内。
ほとんどの場合、決算期から約5ヶ月後が期限となります。

審査の免除要件ーー小会社

シンガポールでは、年次総会で監査済みの財務諸表を提示することが義務付けられています。
シンガポール法人を含む外国法人の子会社は、株主が法人であるため、収益に関係なく監査を受ける必要があります。

ただし、休眠会社であるか、いくつかの要件を満たした場合は監査が免除されます。

シンガポールの監査免除規定では、2014 年改正法で新たに小会社(Small Company)という概念が導入され、2015年7月1日以降に開始する事業年度については小会社に該当する場合、監査が免除されます:

事業年度を通じて、非公開会社であるのに加えて、以下の3項目のうち2項目以上を満たすこと:
(*関連会社を有する法人は、単体と連結両方で要件を満たさなければなりません。)
・年間売上が1000万SGD以下
・総資産が1000万SGD以下
・決算日時点で従業員数が50名以下(フルタイム従業員のみ対象)

2014年の法改正によって株主数は50名まで、売上も1000万SGDまで監査免除範囲が拡大、法人株主を有するシンガポール法人も要件を満たせば監査免除対象とされています。
一方で、売上が小さくても総資産や従業員規模が大きい会社や、大きなグループの子会社などは監査必須となっています。

税務申告の期限

株主総会による決算確定が決算期末から原則6ヶ月後であることを踏まえて、確定申告の税額計算を行うことを考慮し、税務申告期限は決算期末の翌年11月末と比較的長めに設定されています。

シンガポール法人税の賦課課税方式では、納税は申告時ではなく、税務当局(IRAS)が発行する税額通知(NOA)の受領後となります。

まとめ

シンガポールにおける監査済み財務諸表の期限と要件を理解することは、M&Aを行う企業にとって極めて重要です。
株主総会の開催、年次報告の提出に関するスケジュールを理解することで、不必要な懸念を回避し、規制上の義務を確実に遵守することができます。
これらのスケジュールを遵守することで、企業は自信を持ってM&Aを推進し、正確な財務情報に基づいた意思決定を行うことができます。

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