【シンガポールM&Aの基礎⑤】会社秘書役と会計監査人

「シンガポールM&Aの基礎」第5回目では、シンガポールの会社における会社秘書役と会計審査人についてご紹介します。

アジアの金融ハブとして繁栄するシンガポールで、企業のコンプライアンスと透明性を確保する重要な役割を果たすのが、「会社秘書役(Company Secretary)」と「会計監査人(Auditor)」です。
この記事では、シンガポールの法律上、企業にとって必要なこの2つの役職の役割や責任・資格、そして関連する法的枠組みを探ります。

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会社秘書役:コーポレート・ガバナンスの重要な柱

・役割
会社秘書役(Company Secretary)は、シンガポール企業において極めて重要な役職であり、様々な登記、届出、通知機能、株主総会の運営管理を担っています。その役割は、会社がシンガポールの法律や規制を遵守して運営され、すべての利害関係者の利益が守られることを保証することです。

・資格
シンガポールでは、会社秘書役を任命するために特定の要件があります。任命されるのはシンガポールの居住者でなければならず、取締役が1人しかいない会社の場合、その取締役は会社秘書役を兼務することはできません。

シンガポールにおける会社秘書役の資格基準

・シンガポール市民、永住権保持者、またはEmployment Pass/Dependent Pass保持者(自然人)。
・公開会社の場合、会社秘書役はシンガポール勅許会計士(Chartered Accountant)などの一定の資格を有していなければなりません。
・非公開会社の場合、会社秘書役に必要な資格要件は特にありません。

・義務と責任
会社秘書役の職務は、主に会計企業規制庁(ACRA)への登録と関連業務の処理です。

主な責務

・会社法に関連する文書の準備、ファイリング、保管。
・証明書の副署(countersign)の管理。
・取締役会議事録や株主総会議事録などの法定帳簿の取り扱い。
・株主総会招集通知の作成・発送。
・株券の署名・管理。

・会社秘書業務のアウトソーシング
どの企業にも会社秘書役は必要ですが、その業務は年次総会や税務申告の締め切り前後に集中することが多いです。多くの企業では、これらの業務を、会社秘書会社、法律事務所、会計事務所など、外部の専門業者に委託しています。

会計監査人:説明責任と透明性の確保

・役割
小規模企業に対して監査が義務付けられていない日本とは異なり、シンガポールでは厳格な監査制度が採用されています。シンガポール会社法では、会社は会計監査を行う独立した監査人を選任することが義務付けられています。

ただし、非公開会社(Private Company)や小会社(Small Company)には適用除外があります。
会計監査人は財務諸表の正確性と信頼性を確保し、透明性と説明責任を促進する上で重要な役割を持っています。

・資格
シンガポールの会計監査人は下記の資格を有していなければなりません。

シンガポールにおける会計監査人の資格基準

・シンガポールの勅許会計士(Chartered Accountant)の資格。
・一定の監査経験や継続的な専門教育を受けている。
・シンガポールの会計士協会(ISCA)の会員。

・非公開会社と小会社の免除
監査実施の義務が免除される非公開会社と小会社は、以下の条件を満たさなければなりません:

非公開会社:
 ・法人株主がいない
 ・売上高が500万SGD以下
 ・株主数が20人以下

小会社:
下記の条件のいずれか2つを満たすこと
 ・売上高1,000万SGD以下
 ・総資産1,000万SGD以下
 ・従業員50人以下

・ シンガポールにおける監査の重要性
監査はコーポレート・ガバナンスの重要な要素であり、投資家の信頼を高め、財務規制の遵守を確保することができます。
国によっては監査が義務付けられていない場合もありますが、シンガポールでは財務記録の独立した監査を通じて、説明責任と透明性を優先しています。

まとめ

結論として、透明性の高いコーポレート・ガバナンスの実践を重視するシンガポールでは、会社秘書役と会計審査人の役割は企業のビジネスにとって不可欠です。会社秘書役は、法令遵守、会社資産の保護、適切なコーポレート・ガバナンスの維持において極めて重要な役割を果たします。

一方、会計審査人は財務記録を独自に検証することで、透明性と説明責任を維持します。
シンガポールで事業を展開する企業にとって、シンガポールの規制要件を遵守することが企業の成長と安定を促進し、この2つの役職の役割とその重要性を理解することは極めて重要です。
会社秘書役と会計審査人はそれぞれ異なる責務を担っていますが、どちらもシンガポールの企業セクターの信頼性と信用性の向上させ、企業の将来の成功に向けた強固な基盤を築くことに大きく貢献しています。

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