最新!香港フードサービス市場の5つのトレンド
コロナ禍が始まって2年以上経ち、香港のフードサービス市場には大きな変化がありました。全体的な景気はまだまだ回復中ですが、香港消費者の食習慣に合わせることができる場合、これは敢えて香港の飲食業に参入する機会になるかもしれません。
この記事では、香港投資推進署(InvestHK)が発表した香港フードサービス市場の最新トレンドについてご紹介します。
トレンド1:グリーンイーティング
以前の記事でもご紹介したように、植物由来の原料で作られた人工肉は今世界的に人気になっています。その中でもアジアでは特に人気で、代替肉の肉まんや餃子などアジア人の味覚に合わせて作られたものも続々と登場しています。
香港では、東洋と西洋の様々なレストランが軒を連ね、活気に溢れています。人気チェーン店や高級レストランではアジア人の嗜好に合うようにメニューがアレンジされ、グリーンメニューや総菜を提供するファストフード店も増加しています。
イギリスの市場調査会社Euromonitorの予測によると、2025年、全世界の代替肉市場と代用乳市場の規模がそれぞれ約275億米ドルと225億米ドルに成長し、特にアジア太平洋(APAC)の代替肉市場は全世界の74.5%を占めており、代用乳市場も全世界の48%を占めています。中でも、香港と台湾を含む大中華圏の規模がAPACの大半を占めています。
InvestHKの調査によると、香港では約40%の市民が準菜食主義者で、「植物性代替食品を積極的に摂取すべき」に「同意」と「強く同意」と思う回答者が52%もいます。香港の植物性代替肉販売サイト「Green Common」での食料品売上高の伸び率が77%で、フードデリバリーサービスDeliverooでコロナ禍の植物性代替食品の注文増加率が160%になり、香港でのグリーンイーティングに関する市場規模の大きさがわかります。
トレンド2:Grab And Go(手に取ってすぐ食べられる)
ご存知の通り、香港の生活ペースは早いです。それ故、「Grab And Go」というスタイルがせっかちな香港人に非常に適しています。
日本食といえば、「華御結」というおにぎりのチェーン店は2011年に香港の一号店をオープンし、現時点で102店舗にまで拡大しています。董事長の西田宗生氏が「国際都市香港の人々の間では日本食が大人気です。気軽に食べられ、そして何よりも品質を重んじます。」と華御結の成功について語りました。
特にコロナ禍で店内飲食が規制されている今、テイクアウト専門の軽食店や飲料店が以前より数多く見られます。このトレンドに乗るために、従来の飲食店は一部のメニューを「持ち帰り」用にアレンジし、料理の質を落とさず、より簡単なメニューに変更しています。
トレンド3:賃料が手頃になり、小型店やポップアップショップが急増
2019年を始め、昔から小売店が立ち並ぶ地域(尖沙咀(Tsim Sha Tsui)、旺角(Mongkok)、銅鑼湾(Causeway Bay)等)の賃料が急激に下落しました。その後は市場回復を見越し下落傾向が鈍化していますが、2019年同期と比べて、2021年ショッピングセンターでの賃料が37.1%下落し、路面店の賃料は50.2%も下落しました。
テイクアウト注文が増加している今、約18-27平方メートルの小規模店舗でも、地元の人々にサービス提供が可能になっています。そのため、フランチャイズモデルでの展開がしやすく、起業家やシェフが新しいコンセプトを試すのに最適です。
トレンド4:大湾区(GBA)における食品貿易・製造の商機
食品・飲料メーカーは、サプライチェーンの課題解決に向けアジアに生産ラインを設置し、より市場の近くで製品提供を行うことを検討しています。各メーカーは、香港の先端製造能力により香港をパイロットセンターとして活用し、GBAでの商業展開へと繋げることができます。
昨年、日清食品有限公司(香港日清)は、香港で即席麺を製造するための新しいスマート生産ラインを導入するため、再工業化助成スキームに申請し、1500万香港ドルの補助金を獲得しました。
世界の食品・飲料貿易企業は、消費者の自由裁量所得の増加や健康志向の高まりを受け、巨大な中国市場から利益を得ることができる一方、香港を国内・国際の双循環戦略に則ったビジネスにおいて重要な促進役として活用できます。
フードサービス企業は香港を活用することで、金融、物流、運営の戦略的な現地パートナーを獲得し、レシピ・コンセプトのテストを実施、流行を香港から発信した上で、次のステップとして8,600万人のGBA市場へ参入できます。
香港では、食事宅配、オンライン食料品店、クラウドキッチン、バリューチェーン全体のイノベーションなど、飲食関連ビジネスのデジタルエコシステムが成熟しています。製品、サービス、習慣を最初に香港の消費者で試すことで、次にターゲットとするGBAや中国本土市場に参入し、デジタルに精通した消費者にアクセスする道を切り拓くことができます。
トレンド5:フードデリバリーと食料品のオンラインショッピング
コロナ禍で店内飲食規制の影響を受け、フードデリバリーとのコラボレーションに注力する飲食企業が増加しています。フードデリバリーはレストランにとって重要な収入源になり、香港のフードサービス市場におけるフードデリバリーの売上シェアは2016年の4.4%から2020年に急増し、2021年には22.3%に達しました。
フードサービス業界でのデジタル化は食事の注文と配送以外にも、オンラインのワンストップ・ショップを生かした消費者エコシステムも拡大しています。香港ではスーパーやウェットマーケットがすぐ住宅の近くにあり、香港の消費者は従来では直接買いに行くのが当然のことですが、コロナ禍で外出を控えるため、香港の消費者の多くは食料品をオンラインで購入するようになっています。
現在の香港でのフードデリバリー業界の実態と運用についての詳しい情報は、次の記事でご紹介したいと思います。
人材不足のギャップを埋める柔軟な雇用形態、フリーランスの活用
コロナ禍で起きた「大量退職時代(The Great Resignation)」、各業界で従業員の離職率が上がる一方で技術人材も不足しています。そのため、多くの企業はフリーランスを雇って現在の需要を解決しようとしています。
今回の記事では、前回ご紹介した人材リテンション以外に、「大量退職時代」へのもう一つの対応方法――フリーランスの起用についてご紹介します。
需要が高まっているフリーランス
インドのフリーランスプラットフォームFlexing It社のデータによると、本財政年度の「プロジェクトベース・フリーランス」の求人広告数は2021年の財政年度より50%も増加し、企業のフリーランスへの需要が高まっていることがわかります。
Flexing It社の創設者及び代表取締役のChandrika Pasricha氏は、今の労働市場のフリーランスへの需要が非常に強いとコメントしています:「IT技術の発展はリモートワークに快適さをもたらしました。その上、社会では柔軟な仕事形態を受け入れるようになっているので、多くの企業がフリーランスの起用を企業の長期的な計画に入れていることが見受けられます。」
インドのHindustan Unilever社は「Open2U」というギグワーカーの採用形式を発表し、フリーランスを他の企業との期間限定コラボレーションプロジェクトのコンサルタントとして雇っています。この採用形式は企業にとって新しい人材ベースを得られ、需要に応じた人材採用で企業の能力を強化することができます。
高度人材は時間の掌握を重視
企業側の需要増加以外に、Flexing It社のデータからは柔軟な仕事形態を求めているプロフェッショナルが急増していることもわかります。Flexing It社のプラットフォームでの本財政年度の新規登録ユーザー数は去年同期と比べて毎月約35%成長しています。
「自分の時間を確保したい高度人材が多い」と、インドのAxis Bank社の代表取締役及び人事主管のRajkamal Vempati氏はコメントしています、「企業はフリーランス人材ベースから多様化した人材を探し出し、特定のスキルを得て、持続可能な形式で現在のダイナミックな市場ニーズに応えなければならない。」Axis Bank社は自社の「Gig-a-opportunities」計画を通して、ギグワーカーの形で15%の人材を採用しました。
Deloitte India社のパートナー及び首席人事主観のSV Nathan氏が、フリーランスの雇用はスピーディー且つ柔軟さのある方法で、人材流出で生じたギャップを埋めることができると指摘しています、「企業が高度人材の人材ベースを持っている場合、必要な時に活用することができ、運営効率を高めることができる。」
MAYプランニングでは、各産業各分野に適したフリーランス人材探しのサポート、採用形式のアドバイス、香港法人を運営していく上で必要な労務管理に関わるコンサルティングなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。