コロナ禍でも開設可能な香港の法人口座とは?
ビジネス用の銀行口座(法人口座)を作るのは起業家の常識ですが、個人口座ではなくわざわざ法人口座を作る理由に疑問を持ったことがありませんか?また、コロナ禍で法人口座を作るのを諦めてはいませんか?
まだ起業したばかりの小さい企業に専用の口座は現時点で必要ではないかもしれませんが、法人口座を持つことには多くのメリットがあります。この記事では法人口座開設のメリットや銀行の選び方、コロナ禍でも開設可能な銀行についてご紹介します。
法人口座とは?
法人口座とは法人や個人事業主が収益を管理するために使う口座の一種です。法人口座を利用することでキャッシュフローの管理、給与の支払い等がよりしやすくなります。
法人口座を使う5つのメリット
・税金に関するトラブルを回避
ビジネスでの取引が一目瞭然で、会計監査に関するトラブルを回避します。また、課税控除も最大限に活用できます。
・企業イメージの確立
口座の取引で企業名を使うことで仕入先・取引先、または従業員側にもより信頼できるイメージが確立できます。
・資金の管理が楽
取引で企業専用の口座を使うことで支出の確認が簡単になります。
・ビジネスの発展が確認できる
キャッシュフローが容易に管理可能になることで、ビジネスを改善するための戦略を練る事が出来ます。
・企業の信用の確立
法人口座を利用することで、銀行での信用を築くことができ、ビジネスローンや企業用クレジットカードなどの特典が使えるようになります。
香港での銀行を選ぶ時に考慮すべき点
それでは、香港ではどの銀行を選んで法人口座を開設すればよいのでしょうか?企業の需要に基づいて色々な特典が提供されるので、どの金融機関が「一番」かを決め付けることはできません。しかし、以下のポイントで絞り込むことができます:
・創設年月日
銀行の歴史は銀行が企業の需要をどれほど熟知しているかを表します。また、金融業界での信頼性でもあります。
・利用のしやすさ
地方企業にとってもグローバル企業にとっても、銀行支店やオンラインバンキングを問わず、口座へのアクセスのしやすさと取引のスピードはとても重要です。
・最低入金額
口座を設立する際に重要な考慮点の一つです。最低入金額は法人口座の種類によって違うので、口座を設立する前に必ず確認しておきましょう。
・手数料
銀行取引には様々な手数料が発生しますので、事前にその種類と金額を確認しておきましょう。
・その他のサービス
24時間年中無休のカスタマーサービス、顧客関係担当者、オンラインバンキングなど
香港シティバンク(花旗銀行、Citibank (Hong Kong) Limited)でのリモート口座開設
香港の銀行はコロナ状況がもたらしたニューノーマルに適応し、顧客の需要に応じてオンラインバンキングサービスを提供し始めています。ここでは例として、香港シティバンク(花旗銀行、Citibank (Hong Kong) Limited)での口座開設についてご紹介します。
シティバンクでリモート口座開設する方法
未だに続いているコロナ禍で、国際便の便数が減少し、世界中の起業家は海外への進出、特に銀行口座の開設に苦戦していますが、香港の銀行は顧客の需要に適応する方法を提供しています。
シティバンクでのリモート口座開設は現時点では香港とシンガポールを拠点とした、かつ特定の事業を展開する企業のみが利用できるサービスです。しかし、株主と取締役への国籍の制限はありません。
リモートの口座開設になるので、申請書類、ビジネス証明、企業の書類と取引先の情報など必要な書類を出来るだけ完璧に揃えて提出しましょう。銀行側の担当者とはZoom会議で面談します。
基本資料を提示する
香港上海滙豐銀行(HSBC)、中国工商銀行、中国銀行(香港)、シティバンクなどの香港の銀行では口座開設の際に下記の書類を提出しなければなりません:
・オンラインの申請書類とサインしたスキャンコピー
・香港での登録住所
・企業の法人登記書類
・商業登記証(Business Registration Certificate)の認証コピー
審査通過の可能性を上げるために、下記の資料もできるだけ備えておきましょう:
・取締役、実質的な所有者や10%以上の株を所有している株主、主要取引先の代表などの身分証明書類
・口座開設の目的や業務内容
・企業が運営していることを証明できる書類
「KYC(Know-Your-Client)」本人確認手続き
不正利用やマネーロンダリング防止のため、地方銀行でも国際銀行でも「KYC(Know-Your-Client)」という本人確認手続きが口座開設の際に求められます。この手続きは一般的に時間を要する為、申請書類提出後の銀行側との面談は2ヶ月ほどかかると考えておいた方が良いでしょう。
MAYプランニングでは、貴社の需要に応じて適切な香港銀行の提案、口座開設のサポートなど様々なサービスを提供しております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
注目!オンラインプラットフォームだからこそ活用したい戦略3選
前回の記事では、香港で半分のマーケットシェアを占めているDeliveroo社を例として、香港でのフードデリバリー業界の実態をご紹介しました。コロナ禍で実店舗の役割が弱っている今、フードサービス企業の持続的な成長を実現するために、Deliveroo社のようなオンラインプラットフォームを活用できる3つの戦略を、今回の記事でご紹介します。
バーチャルブランド
バーチャルブランドとは実店舗を持たないブランドです。既に実店舗を持っているフードサービス企業にとって、バーチャルのサブブランドの展開は企業のキッチンの能力をフルに活用できる手段です。すでに確立したメインブランドを危険に晒すことなく企業の潜在顧客に購入してもらえるようになり、メインブランドの制限から解放することができます。
価格や食事形態の問題で、メインブランドがリーチできなかった顧客層の開拓は従来サブブランド戦略で解決できています。例えば佐賀県で創業した「うふふカフェ」は2016年から香港で進出していますが、今では「L.D.K. by Ufufu Cafe」をメインブランドとして、オムライス屋「Omelette Rice by Ufufu Café」や和風バーガー屋「Japanese Burger & Steak by Ufufu Cafe」のサブブランドを展開しています。
しかし、実店舗を持つサブブランドはどうしても店舗の賃料や食材などの準備費用がかかってしまい、オンラインプラットフォームを利用したバーチャルブランドの方がよりローリスク・ローコストで多くのお客様に異なる選択肢を提供し、新コンセプトを試したり、新たな収入源を確保したりすることができます。顧客側としても、いつもと違う選択肢や新しいメニューに挑戦することを自然に楽しむようになります。
Deliveroo社のデータによると、メインブランドからの注文に加えてバーチャルブランドからの追加注文が発生する割合は平均75%です。これまでに世界で誕生したバーチャルブランドが750もあり、バーチャルブランドで注文する顧客のうち、今までにメインブランドで注文したことがない人が84%います。その上、42%のバーチャルブランドはメインブランドよりも高い顧客評価を受けており、バーチャルブランドが企業の顧客層と可能性を開拓できることがわかります。
シェアキッチン
シェアキッチンはクラウドキッチンとも呼ばれ、主にデリバリー用の料理を作るために設計された施設を指します。1つのレンタルスペースの厨房を複数の店舗オーナー・料理人が共同利用し、デリバリー販売のみを行い、顧客の一回の注文で複数の企業・ブランドの料理を提供できます。
顧客側としてより多様な料理の種類と品目が選択でき、注文を一つにまとめることでより良いデリバリーサービスを実現できます。レストラン側としても、ビジネスの開始や拡大をローコストで、より広い市場へアクセスできるよう、節約した資金を新たなシェアキッチンへ投資することができ、顧客とフードサービス企業の双方に新しい価値をもたらします。設備の手配と施工、食物環境衛生署(FEHD)などの必要なライセンスの取得、光熱費やWi-Fiなどの費用の支払い管理など、キッチンの立ち上げと管理はシェアキッチンの利用でより簡単にマネジメントできます。
例えばDeliveroo社にはDeliveroo Editionsというシェアキッチンが香港と九龍を中心に8ヶ所あり、テナントであるレストランパートナーにキッチン管理とサポートを提供しています。その他、マーケティングとプロモーションの共同実施、メニューのカスタマイズと最適化、データに基づくパフォーマンス分析とアドバイスなどのサービスも提供しているので、香港に進出する予定のブランドにも心強いサポートになるでしょう。
プラットフォームのデータ分析
フードサービス企業は通常、自社の売上データしか持っていないため、市場全体のトレンド分析など他社の営業状況を含めたマーケティング戦略を立てることが困難です。プラットフォームそれぞれ提供するサービスが異なるかもしれませんが、ここではDeliveroo社のデータ分析サービスを例としてご紹介します。
Deliveroo社は、自社のグローバルデータベースを分析することで、レストランパートナー自体の売上データのみでなく、近隣地域に関するデータ分析を提供します。例えば、最も人気のある料理の品目、急成長や供給不足の料理の種類、平均消費額、注文の傾向や頻度など。
その中にもMarketerというデータ分析サービスがあり、顧客を正確にターゲットしたり、顧客への特別なオファーは適切なタイミングに必要な分だけすることができたり、自社ブランドの位置づけや適切な顧客の獲得を可能にするメッセージを送ったりすることができます。これらの要素は詳細な情報レポートに裏打ちされ、毎回オファーを改善することができます。
例えば、新規顧客をターゲットにする場合、リピーターが増えるのが予想できます。従来では、プロモーションの実施をレストランの既存のSNSで宣伝したとしても、顧客のうち何人が以前注文したことがあるか、どの人が新規顧客なのか、知る術はありません。Marketerを使用することで、マーケティング予算をレストランのページに初めて訪れる潜在顧客へのリーチにのみ集中させることができ、マーケティング費用を効率的且つインパクトのあるものにすることができます。Deliveroo社のデータ分析によると、新規顧客がMarketerのオファーによって企業のレストランを発見した場合と、他の方法により自力でレストランを探し出した場合と比較すると、ほぼ同じ割合でリピーターになり、再度注文しに来ています。
「フードデリバリー」は「料理」だけではない
スーパーやウェットマーケットの多くが住宅の徒歩圏内にあるため、香港では食料品、特に生鮮食品のオンラインショッピングが普及していませんでしたが、コロナ禍で外出を控える人の増加に伴い、現在香港では料理のデリバリーのみでなく、オンラインのワンストップ・ショップを生かした消費者エコシステムも拡大しています。
例えば、PARKnSHOP、7-ElevenやDON DON DONKIなど香港で最も信頼されているブランドを取り扱っているDeliveroo社の前年同期比(2020 Q4 vs. 2021 Q4)の達成度から見ると、登録店舗数が210%成長し、同一店舗での売上高が46%増加しました。その他、リピーター顧客が1.4倍増加し、新規顧客の月間増加数が118%に達しています。
フードサービス企業のみでなく、調味料・ミールキット・紙パック・ペットボトル飲料などを取り扱っている食料品企業にもオンラインプラットフォームの利用で客層を拡大することができます。
MAYプランニングでは、香港への進出に関わるサポート・香港市場でのプロモーションに関わるサポートを提供しております。デリバリーサービスプラットフォーム導入のサポートも可能です。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
急成長!コロナ禍で拡大中のフードデリバリー業界
以前の記事でもご紹介した通り、フードデリバリーはレストランにとって重要な収入源になりつつあります。香港のフードサービス業界では現在食事デリバリーとのコラボレーションに注力する企業が増加しています。実は香港のみでなく、コロナ禍においては世界中でフードデリバリーの急成長が見られます。ドイツの消費者データ専門のstatista社の予測によると、世界中のオンラインでのフードデリバリー部門の売上は、2022年に約3,392億米ドルに達する見込みです。その上、年成長率が8.29%と予測し、2026年までに売上が約4,664億米ドルに達すると見込んでいます。
今回の記事では2015年に香港に設立、現在香港では半分のマーケットシェアを占めているDeliveroo社を例として、香港でのフードデリバリー業界の実態と香港消費者の利用傾向についてご紹介します。
フードデリバリー市場の動向と消費者インサイト
2021年1月に行った香港市民1,000人を対象とした「Censuswide survey」と2021年12月に香港のDeliveroo顧客800人を対象とした「the Share of Stomach report」の調査結果から、香港の消費者に以下の傾向が見られることがわかります:
・食事が香港人にとって、ウェルビーイングに欠かせない一部
71% の回答者が、「自分の食べるものが精神衛生に重要な役割を果たしている」と回答し、64%がコロナ禍の中、お気に入りのレストランに注文することが幸福感やウェルビーイングに寄与していると回答しています。
・香港人は食事を注文する際、健康や味覚を優先
65% が「栄養レベルを管理したい」と回答し、コロナ禍での店内飲食制限などが自宅で食事をするきっかけとなり、以前より栄養を重視するようになっていることが推測できます。
香港消費者の38% が、デリバリーを選ぶ際に最も重要な要素として「風味と味」と回答し、30%の消費者が、自分の食事制限に関して条件を満たしているかを考慮し、26%の消費者が「専門的な知識を有する料理人が調理してほしい」と答えています。
・半数以上の香港人がデリバリーサービスに頼るようになっている
78%の香港消費者がコロナ禍以来、少なくとも週に一度はフードデリバリーサービスを利用しています。香港人は2020年、フードデリバリーサービスに月平均1,324香港ドルを支出、2019年と比較して21%増加しました。55%の香港消費者は過去1年間にフードデリバリーやテイクアウトを注文する回数が増え、その上、75%の香港人がフードデリバリーサービスを今よりもっと定期的に利用するようになると回答しました。
・香港人はアジア料理を好み、オンライン注文できる便利さを享受
香港人が中華以外の外国料理で一番好んでいるのは日本料理(45%)で、韓国料理(36%)とタイ料理(22%)も多くの香港人に好まれ、舌の肥えた香港人はアジアの国々や地域を旅行するかのように様々な味覚を楽しんでいます。
家では作れない外国料理も多いので、それが理由でオンライン注文を利用している消費者が29%います。その他、コロナ規制で大ダメージを受けているお気に入りのレストランを支援するためにオンラインで注文している消費者が27%、自宅で調理するのが面倒と感じる消費者が24%います。
・平日と週末のオンライン注文傾向が異なる
週末の注文の多くはディナータイムに集中しています。夕食では大人数での利用が一般的なので、消費額が昼食の消費額より20%高く、週末の場合、消費額が平日より更に10%高いです。
逆に平日は仕事の合間での昼食利用が多く、個食ミールボックスが非常に人気で、日本料理ではお弁当の注文数が特に多いです。
では、飲食業界はどうやってDeliveroo社などのオンラインプラットフォームを利用して事業の成長と拡大を実現できるか、次回の記事でご紹介したいと思います。