【シンガポールM&Aの基礎④】シンガポールの「Managing Director」とは?
「シンガポールM&Aの基礎」第4回目では、シンガポールの「Managing Director」と日本の代表取締役の違いについてご紹介します。
代表取締役やManaging Directorなどの役職名に混乱したことはありませんか?
ビジネスにおいて、取締役(Director)の役割は効果的な意思決定とガバナンスのために不可欠ですが、その地位や責任は管轄地域によって異なる場合があります。
この記事では、日本の会社取締役とシンガポールの「Managing Director」の類似点・相違点と役割を探ります。
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日本の代表取締役
日本では、取締役会設置会社には代表取締役の選任が義務付けられています。
株主総会決議で出席した株主の議決権の過半数が賛成し、候補者の就任承諾を得て、法務局への登記を完成することで代表取締役・取締役が就任できます。
日本の株式会社では、会社のトップが代表取締役の役割を引き受けるのが一般的です。
取締役会のない会社では、定款で代表取締役の選任を定めることもできます。
更に、日本の代表取締役・取締役は国籍・居住地を問わず、海外在住の外国人でも選任できます。
このような柔軟性により、企業は固有のニーズに応じてガバナンス構造を調整することができます。
また、日本の代表取締役は、日本の会社法では会社を代表する権限を有し、意思決定と対外的な代表において極めて重要な役割を担っています。
シンガポール会社の取締役
シンガポールの会社法では、最低1名の取締役(そのうち最低1名がシンガポール居住者)を置くことが義務付けられています。
日本とは違って、取締役の具体的な任期や選任方法はシンガポールの会社法では規定されておらず、各会社の定款で定められています。
シンガポールの「Managing Director(MD)」はよく日本語で「代表取締役」と訳されていますが、実際にはその役割は異なります。
シンガポールでは、MDは会社法では規定されておらず、すべての取締役が取締役という一般的な役職名で登記されるため、MDがそのように登記されることはありません。
MDという役職は便宜上、会社の定款に記載されていますが、シンガポール当局に対する権限はありません。
つまり、シンガポールにおけるMDの設置・選任は任意です。
また、日本の代表取締役とは異なり、MDは会社を代表する権限や会社法によって与えられた広範な権限と責任を持たず、他の取締役と同様の権限、義務、責任を持ちます。
MDの権限と義務は、あくまでも定款、取締役会、または会社との個別の契約によって制限されます。
まとめ
結論として、シンガポールのMDと日本の代表取締役の役割と責任には大きな違いがあります。
シンガポールは取締役を最低1名選任することを義務付けており、シンガポール居住者を要件としています。
一方、シンガポールのMDは日本の代表取締役とは異なり、定款上の任意の役職であり、会社を代表する権限はありません。
シンガポールと日本でM&Aを行う企業やM&Aを検討している企業にとって、この2つの国における取締役職のニュアンスを理解することは極めて重要です。
法的枠組みや文化的背景を理解することで、企業はコーポレート・ガバナンスの要件をナビゲートし、取締役の役割に関して十分な情報に基づいた意思決定を行うことができ、 強力な取締役会は企業の戦略的方向性と成功を形成する上で重要な役割を果たします。
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