日本の中小企業における外国人人材の誘致戦略
少子高齢化から人口減少へと人口動態が変化する中、日本の中小企業は様々な課題と機会に直面しています。海外進出を検討する中小企業はグローバルな人材を見極め、採用戦略を調整することがとても重要になっています。今回の記事では、日本の中小企業が外国人人材を惹きつけ、活用するという喫緊の課題とその革新的な戦略について掘り下げ、急速にグローバル化する労働力事情の中で国際的に成功するための情報をご紹介します。
日本の人口問題が企業の課題に
日本は2020年を境に、少子高齢化から人口減少へと移行し、人口動態の歴史における重要な岐路に立たされています。この変化は特に15~64歳の生産年齢人口において顕著であり、2030年まで年間約43万人減が見込まれ、その後は年間86万人減へとさらに倍増すると予想されています。
人口減少の影響を緩和するために、日本政府は、生産年齢人口の強化を目的とした措置や政策を導入しました。例えば、女性の活躍推進、高齢者の雇用促進やITの戦略的活用が代表的です。2022年6月、日本政府は外国人政策を単なる「受け入れ」から「戦略的誘致」への転換を意味する「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を閣議決定しました。さらに、日本各地の地方自治体は、多文化共生を推進し、特定の技能を有する外国人や高度外国外国人人材の受け入れを促進するための措置を講じています。
このような人口動態の変化、特に日本国内の労働力不足の急速的な深刻化は、企業にも大きな影響を及ぼしています。デジタル化によって一次産業や二次産業の不足に対処することは可能ですが、研究・開発・イノベーション人材の十分な供給を確保するには、日本国内のIT教育強化だけでなく、日本の労働力に貢献する優秀な外国人人材を誘致する環境作りが必要です。一方、消費市場の主要な原動力である生産年齢人口の減少も重大な課題になっており、企業がグローバルに視野を広げる必要性を強調する意見があります。
企業の規模や業種にかかわらず、人材と市場のグローバル化は、日本の将来の経済成長にとって不可欠です。
中小企業におけるグローバル化の必要性
人口動態の変化により国内市場が縮小する中、中小企業にとって海外進出は喫緊の課題となっています。特に中小企業の海外進出は過去10年間で著しく増加しており、従業員数10人以下の企業が海外進出する日本企業のかなりの割合を占めており、生き残りのためにはグローバル展開が不可欠となっています。
今後の日本は、生産年齢人口の減少と少子化している人口を補充するために、外国人の流入が常態化する労働市場を想定されています。外国人人材がホワイトカラーとして働くことが当たり前になり、日本の経済活性化に貢献することが期待できます。
中小企業にとって、グローバル化は一連のユニークな課題と機会をもたらします。例えば:
・海外へ事業展開する中小企業は、言語や文化の違いに対応できる外国人人材の確保などの難題を解決しなければなりません。また、現地で信頼できるパートナーシップを確立し、海外市場で末永い関係を築く必要があります。
・海外業務を支える人材の入手方法として、既存の日本人従業員をグローバル市場に向けて育成する方法がありますが、文化の違いが原因で効率的にならない場合が多いです。その一方、優秀な外国人人材を採用・育成することで、日本企業と海外市場の重要な仲介役という課題に効率的に対処することができます。
日本の中小企業における人材ニーズ
日本の労働市場の課題
日本の労働市場は、特に中小企業にとって独特の課題を抱えています。総務省統計局が発表した「2021年経済センサス‐活動調査」と「2021年人口推計」によると、日本には約368万社の企業に対して7450万人の労働人口があり、1社あたり平均約20人の潜在的候補者がいます。しかし、近年の失業率が3%超えないと低くなっており、候補者の供給力は大幅に低下しています。このような人材不足に加え、各業界で需要が高まっているため、採用時の企業間競争が激化しています。日本人従業員一人の採用に対して数十社、数百社が競合することも珍しくないです。
一方、日本が外国人人材の獲得に苦戦していることは、Internations社が発表した「働きたい国ランキング2023版」で53ヶ国中44位だったことからも明らかです。マレーシア(4位)、台湾(5位)、タイ(6位)といった他の東アジア・東南アジア諸国とは異なり、日本は海外で即戦力となり得る外国人人材にとってかなり下位になっています。この「即戦力」外国人人材の確保不足は、グローバルな舞台で活躍しようとする日本企業に直接的な影響を与えます。
即戦力人材ににおける、企業の求めている要件と労働市場実態のすれ違い
多くの日本企業が入社後すぐに結果を出せる「即戦力」人材に求めている要件は一般的にこのようになっています:
・ビジネスレベルの日本語と英語に堪能
・日本での勤務経験がある
・業界特有の知識と経験を持っている
・年齢が20代後半から30代半ば
・年収が400万円から500万円
ただし、労働市場での実情は大きく異なっています。例えば、日本語と英語に堪能で、日本での経験もある候補者の年収は一般的に最低500万円となっており、それに加えて同業界内での転職経験者であれば、現在の年収より100万円程度高い年収を求めているケースが多いです。
このような「即戦力」人材が希少で人件費が高い方になっているので、「発展性」を基づく採用戦略が注目されています。これの採用戦略は、「必要なスキル 」と「プラスになるスキル」を区別するアプローチです。現在所有の業務スキルだけを評価するのではなく、候補者の人柄や企業文化との相性も評価することで、適応力や不慣れな職務に挑戦する意欲を見極め、組織内での将来の成長を洞察します。
日本の中小企業への外国人材の供給
近年、日本ではコロナ禍に伴う入国制限措置などの要因により、外国人留学生の数がこの数年で減少しています。それでも、多くの留学生は、日本独特の文化と労働環境や安全な生活環境に惹かれています。彼らは、日本企業で働き、自身の知識とスキルを活用してキャリアを向上させたり、日本と母国の架け橋となってグローバルな取り組みに貢献したりすることを望んでいます。独立行政法人日本学生支援機構が発表した「令和3年度私費外国人留学生生活実態調査概要」によると、留学生の希望職種は、翻訳・通訳、海外事業、営業・マーケティングなどが上位を占め、留学生がその強みを活用したいことを反映している。その一方、主に日本企業における職場の人間関係や効果的なコミュニケーションに関する懸念も根強いとのことで。
日本企業にとって、外国人人材の採用にはいくつかの課題があります。日本の出入国管理政策が永住権や移民法から遠ざかる傾向にあることはともかく、伝統的な採用方法への依存は、企業と外国人従業員との間に誤解が生じることもあります。こうした問題に対処するには、特にグローバル市場で頭角を現そうとしている中小企業にとって、より包括的で革新的な採用戦略が必要です。
外国人人材を惹きつける、日本の中小企業が取るべき採用戦略
外国人人材の価値を認識する
日本の中小企業が外国人人材の潜在能力を引き出すには、まずは「外国人が単なる労働者ではなく、貴重な情報資産やノウハウの持ち主」と認識する必要があります。海外進出を検討する際、外国人人材は現地の事情に基づく貴重な見識を提供し、規制調査、市場分析、潜在顧客リストの作成、現地での営業活動の促進などを支援することができます。例えば、現地市場で商品がどのように販売されているかという視点を提供し、ビジネスモデルの開発や市場参入計画の立案に役立てることができます。また、語学力が高さで、コミュニケーションの障壁を取り除き、現地ソースからの効率的なデータ収集が可能です。
採用方法の最適化
従来の採用方法をより外国人人材にとって魅力的に調整するために、いくつかの方向性があります:
- 選考プロセスの短縮
Glassdoor Economic Researchが2017年に調査した「How Long Does it Take to Hire? Interview Duration in 25 countries」による面接期間の長さでは、日本は10位(30.9日間)で、アジア各国の平均と比べて長くなっており、採用活動の迅速化に改善の余地があることを示唆しています。多くの地域で英語が主要な公用語であることを考慮すると、英語のみでの面接も可能になると、外国人候補者の企業へのイメージがさらにプラスになるでしょう。グローバルな候補者のために選考期間を調整することで、より多くの人を惹きつけることができます。 - 求人内容の調整
求人内容は候補者が応募するかどうかの決め手になるため、外国人人材に響くように調整する必要があります。コミュニケーションの習慣など、言語の相違は職務内容の曖昧さにつながり、日本人には明確なイメージが伝わっても、伝統的な求人内容は外国人にとってはあまり参考にならないかもしれません。細かくて詳しい求人情報は、この理解のギャップを埋めることができます。
例えば、「営業活動の管理、戦略立案、営業手法の開拓など」が職務内容の場合、外国人候補者にとっては、「目標やノルマを達成するための詳細なビジネスプランの作成、需要を把握するための定期的な顧客とのやり取りの維持、販売後には丁寧なサポートの提供」と明確化した方が、外国人応募者はその役割を把握することができ、応募への関心を高めることができます。 - 発展性のある採用方法の受け入れ
発展性を重視した採用には多くのメリットがあります。留日志向が強い外国人人材は、就労ビザの関係で帰国せざるを得ないことを避けるために、仕事に対する熱意が高い傾向があります。また、香港のように広東語、英語、中国語などの多言語が教育現場で頻繁に使われ、日常生活や仕事にシームレスに溶け込んでいる地域の出身者は、卓越した言語習得能力を持っている傾向があり、さらなるグローバル化していく労働市場において貴重な資産となります。日本企業や地域社会に貢献したいという純粋な気持ちを持つ候補者を見極めることは、彼らのコミットメントと長期的な活躍を保証する上で不可欠です。
外国人人材の価値を認識し、採用方法をグローバル化することで、日本の中小企業は、人材不足に対応することだけでなく、国際市場での成功を推進できる国際競争力のある人材を育成することができます。
まとめ
少子高齢化を含む日本の人口動態上の課題は労働力不足につながり、日本国内市場の縮小に直面する企業、特に中小企業にとって大きな影響を与えています。
中小企業は、グローバル展開の取り組みにおいて、言語や文化の違いを始めとした様々な課題を克服しなければなりません。日本への強いコミットメントと優れた語学力を持つ外国人候補者を見極める採用戦略を取り入れることで、中小企業は国際競争力のある人材を育成することができます。外国人人材の価値を認識するために採用方法を調整することは、グローバル化していく日本の労働環境を乗り切る上で極めて重要です。
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