【シンガポールM&Aの基礎⑥】株式取引に関する印紙税
「シンガポールM&Aの基礎」第6回目では、シンガポールにおける株式取引に関する印紙税についてご紹介します。
印紙税は、特にM&Aにおけるクロージングプロセスに不可欠なものであり、シンガポール内国歳入庁(IRAS)に納付します。
この記事では、シンガポールにおける株式取引に関する印紙税について、課税文書の種類、適用される税率、免除、遵守事項などを取り上げます。
シンガポールM&Aの基礎シリーズの過去記事はこちら
- 第1回目(登記簿謄本「BizFile(ビズファイル)」)
- 第2回目(財務諸表の作成・提出期限)
- 第3回目(M&Aの方法:「株式取得」と「新株発行」)
- 第4回目(シンガポールにおける「Managing Director」)
- 第5回目(会社秘書役と会計監査人)
株式取得に対する印紙税
株式取得のための文書に署名した場合、印紙税は購入価格または株式の価値のいずれか高い方に0.2%が課税されます。
株式の価値は会社の種類によって異なります:
・公開会社の株式:
譲渡契約日のシンガポール証券取引所における平均価格に基づきます。
・非公開会社の株式:
譲渡価額は、純資産価額(NAV)または割当価額を基準として、設定からの経過年数に応じて変動します。
株式担保融資に対する印紙税
企業が株式を担保に銀行や金融機関から借入を行う場合、印紙税は関連書類(株式担保契約書)に課税されます。
株式担保融資の印紙税率は0.2%~0.4%で、上限は500 SGDです。
印紙税の免除要件
株式に対する既存の開放担保(Open Mortgage)の場合、納付すべき印紙税は、「500 SGD」と「以前に納付した印紙税」との差額となります。
既存の開放担保の印紙税がすでに500 SGDの上限額に達している場合、それ以上の印紙税は課されません。
また、関連会社間の株式譲渡は、一定の要件を満たせば、申請により印紙税が免除されます。
関連会社とは、以下のいずれかに該当する会社となります:
・一方の法人が他方の法人の議決権株式の75%以上及び議決権の50%以上を保有している場合
・両者の親会社が共通であり、それぞれの法人が議決権株式を75%以上保有され、かつ、議決権を50%超保有されている場合
一定の要件については細かく規定されており、慎重に検討する必要があります。
詳細はIRASのウェブサイトをご参照ください。
法令遵守と罰則
罰則を避けるためには、署名する前に文書の印紙税を支払って法的効力を持たせる(Stamping)必要があります。
Stampingの期限は、シンガポール国内で署名された文書の場合は締結後14日以内、海外で署名された文書の場合はシンガポールでの受領後30日以内です。
手続きはシンガポールのe-Stampingポータル、指定した4つの郵便局とIRASのTaxpayer & Business Service Centreで行うことができます。
※住所はこちらにご参照ください
印紙税の納税期限を守らなかった場合、最大で税額の4倍の罰金が科されることがあります。
また、Stampingされていない文書を使用することは犯罪であり、手続きが遅れたり不十分であったりした場合にも罰則が課されることがあります。
まとめ
印紙税は、シンガポールにおける株式取引の重要な側面です。
M&A、株式取得、抵当権設定に関わる企業は、適用される税率、免除要件、手続きの方法について理解する必要があります。
印紙税の規定を遵守することで、企業は円滑な取引を実現し、罰則を回避することができ、企業部門の透明性と説明責任を促進することができます。
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