国安法施行受け各国が香港人受け入れを表明

香港国家安全維持法(国安法)が7月1日に施行されたことを受けて、複数の国が香港人の受け入れを表明しています。

イギリス

イギリスのボリス・ジョンソン首相は7月1日、イギリス海外市民(BNO)パスポート保有資格のある約300万人の香港人に対し、イギリスの市民権や永住権の申請を可能にする方針を示しました。BNOパスポートは1997年の香港返還以前に生まれた香港市民が取得でき、その扶養家族も移住受け入れの対象になるとのこと。現在、滞在許可証を持っている香港市民はおよそ35万人で、取得する資格のある人を合わせると、対象はおよそ290万人になるということです。

BNOパスポートでイギリスに滞在可能期間は6ヶ月でしたが、今回の方針により5年となり、就業や就学も可能となります。また、5年間イギリスに滞在すれば永住権の申請ができるようになり、さらにもう1年滞在することで、市民権を得る資格が与えられるということです。

首相の報道官によると、現在香港にいるBNOパスポート保持者はすぐにイギリスに渡航でき、通常の入国審査を受けるだけでよい。また、ビザ取得に当たっての年収制限もなくすということです。

台湾

台湾政府は1日、政治的理由で台湾移住を希望する香港人を支援するための専門窓口を台北で開設し、運用を始めました。180件以上の問い合わせを受けたと発表しました。中国が香港に国安法を導入し、政治的な統制を強める見通しとなったことで、台湾への移住を希望する実質的な政治難民が増えると予想されています。専門窓口は、移民、労働および学生ビザの取得を支援するなど、香港人の受け入れ体制を拡充するほか、台湾が民主主義と自由、人権を支持する姿勢を示す役割も果たすということです。

また台湾政府は台湾人に対して、不必要に香港・マカオ・中国を訪れたり飛行機の乗り継ぎをしないように注意喚起を行いました。

オーストラリア

オーストラリアのスコット・モリソン首相は9日、中国が香港への統制を強める香港国安法が施行されたことを受け、状況が根本的に変化したと判断し、香港との犯罪人引き渡し条約を停止すると発表しました。また香港市民に対するビザ延長などの措置も明らかにしました。

香港からの留学生は卒業後5年間、オーストラリアでの滞在が認められ、その後永住権を申請することができます。一時就労ビザで滞在している香港市民も、5年のビザ延長とその後の永住権申請が可能になります。豪政府によると、国内には現在、学生ビザと一時就労ビザで1万人の香港市民が滞在、そのほか1250件の申請がされています。香港市民の申請は「Global Talent Scheme」などの制度の下で優先処理されます。また、香港市民は難民向けビザの申請もできるということです。

アジアの拠点を香港に置いている金融サービスや、コンサルティング、メディアなどの企業の移転も誘致します。インセンティブや従業員の異動に必要なビザを提供するとしています。

一方、豪国民に対しては、香港で拘束されるリスクが高まったとして、渡航を控えるよう呼び掛けるとともに、現地に居住している約10万人の国民には滞在の必要性を再考するよう促しました。

カナダ

カナダは3日、香港との犯罪人引き渡し条約を停止し、一部の軍事物資の輸出を禁じると発表し、移民に関連して追加措置を検討する方針を示しました。移民弁護士によると、香港国安法施行を受けてカナダへの移住を求める人たちからの問い合わせが急増しているということです。

また、香港に対する渡航禁止措置を更新しました。声明では「香港国安法が2020年7月1日に施行された。これにより、恣意的に拘束され、本土に引き渡される可能性が高くなる」と述べられています。

日本

日本でも、脱出を希望する香港市民への就労ビザの発給など、必要な支援を検討することが求められていると報じられています。

安倍晋三首相は9日、オーストラリアのスコット・モリソン首相とテレビ会議形式で会談し、河野太郎防衛相は8日、エスパー米国防長官やオーストラリアのレイノルズ国防相とテレビ会議方式で協議しました。「香港の自治を損なうものだ」と、中国による香港国安法の制定に対する重大な懸念を共有しました。

日本の国会では1日に香港国安法について正式に討議が開始され、香港を離れたい金融人材を取り込む方法が検討されています。自民党は新たな対策案を検討するチームを設置し、年内に外国人の専門人材を取り込む友好的な環境づくりを行う提案を検討しています。シンガポールなどの他の金融センターとの競争に直面している中、日本は東京の国際金融センターとしての地位強化を考えており、永久居住権を取得しやすくすることや税制優遇など多くの措置を検討しています。

アメリカ

アメリカ上院議員は1日までに、平和的なデモへの参加を理由に迫害される可能性がある香港市民を難民として認定する法案を提出しました。難民申請者の配偶者や子どもも認定の対象として、受け入れの上限は設けません。香港国安法の施行を踏まえ、香港の民主化を目指すデモ参加者を保護する狙いがあります。下院でも同様の法案が提出されています。

ニュージーランド

ニュージーランドのウィンストン・ピーターズ副首相兼外相は9日、香港国安法の成立により香港で国際的活動をする環境は根本的に変化したと説明し、香港との間での容疑者の引き渡しや戦略的物資の輸出管理、旅行者や滞在者ら向けの渡航勧告など、あらゆる点において香港との関係を見直すと発表しました。

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