国安法に懸念、オフショア口座開設問合せ増

複数の関係筋によると、HSBC、スタンダードチャータード銀行、シティグループといった銀行で、香港の市民からオフショア口座の開設に関する問い合わせが増えており、その中でHSBCとスタンダードチャータード銀行でそれぞれ25-30%増加している。中国が香港国家安全法を制定する方針を決定したことを受けて、懸念が広がっているという。

関係筋によると、口座の開設先としてはシンガポール、英国、シドニー、台湾の人気が高い。

トランプ米大統領は、中国が香港国家安全法の制定を進めれば、米国が香港に認めている優遇措置を廃止する意向を示している。香港を巡って米中関係が悪化する中、香港からの資本流出や資産の換金性に対する懸念が浮上している。

最近HSBCにオフショア口座の開設について問い合わせたというメイ・チャンさん(39)は「米国が香港への制裁を決めれば、香港ドルを自由に両替できなくなるのではないか。それが一番心配だ」と語り、すでに貯金の7割を米ドルや英ポンドなどに両替し「送金ができないという最悪の事態」に備えているという。ただ、問い合わせの件数が多いため、HSBCからオフショア口座の開設に関する情報を入手するだけで1ヶ月待たされると言われた。

香港金融管理局(HKMA)は、香港ドルの米ドルペッグ制を維持するために必要なあらゆる手段があるとして、懸念払拭に努めている。

関係筋によると、香港で営業している国際的な大手リテール銀行では過去2週間、大規模な預金流出は起きていない。オフショア口座を開設するには少なくとも1ヶ月かかる可能性があるという。ただ、問い合わせの増加で銀行の対応には遅れが出ている。

関係筋は「今はオフショア口座開設の第2波だ。第1波が起きたのは(「逃亡犯条例」改正案に対する)抗議活動が広がった昨年6月以降だった」と述べた。

HSBCの広報担当は、オフショア口座に関する問い合わせについてコメントを控えたが、「大規模な資金流出の形跡はない」と述べた。

スタンダードチャータード銀行の広報担当は、オフショア口座の開設に関する問い合わせは来ているが「目立った資本流出は全く見られない」とコメントした。

シティグループの広報担当は、新型コロナウイルス関連の規制が解除され、香港での口座開設が増えていると指摘。資本流出やオフショア口座の開設増加は見られないと述べた。

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